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普通、車の模型はシルバーで作るんですが、フェラーリは模型から赤で作るんです。

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  奥山清行 - 工業デザイナー -
1959年山形生まれ。武蔵野美術大学と、アメリカ工業デザインの学校、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインを卒業。その後、ゼネラルモータース、ポルシェのチーフデザイナーを経て、自動車デザインスタジオの名門、ピニンファリーナのデザインディレクターに就任しフェラーリやマセラティなどのデザインを担当し、「イタリア人以外で初めて、フェラーリをデザインした男」として話題となる。2006年に自らが代表を務めるKEN OKUYAMA DESIGNを設立し、車に限らず様々なデザインを手掛けている。
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GMのコルベットとポルシェとフェラーリをデザインした人間は世界で僕だけなんですよ。(奥山)

奥山さんは、イタリアのフェラーリ、アメリカのゼネラルモータース(GM)、ドイツのポルシェと3つの大きな世界の車メーカーで実際にお仕事されて、それぞれに違いはありましたか?

全然違いました。これだけは自慢で、GMのコルベットとポルシェとフェラーリをデザインした人間は世界で僕だけなんですよ。すごく満足していますが、3つとも全然違いました。

どう違いますか?

国民性の違いと会社の歴史の違いが大きいですね。例えば、僕はドイツのポルシェに2年ちょっといたんですけど、運転が上手くないとポルシェはデザイン出来ないんですよ。つまりデザイナーは広場で四輪ドリフトの練習して、デザイナーが実際にポルシェを運転して身体で覚えると、画だけで車をデザインしないから、お客様の気持ちも分かった上でデザインすることが出来るんです。

ポルシェのあの形には自動車という人を運ぶものではない美学のような要素がありますよね。

ポルシェは遠くから離れて見てもポルシェだと分かりますよね。ヨーロッパのモノの考え方というのは割とそうなんですが、遠くからでも見える大きな部分はぶれてはいけないんです。ポルシェを作る人達にとって、昔からやっていることを大きく変えることは恥なんですよ。だから意地でも守るんですよね。

なるほど。

正直な話、あんな高出力のエンジンを後ろに積むというのは、スポーツ・カーとしてはあまり理屈に合っていないんです。でもそれを哲学として強引なまでに成立させてしまうんです。そのプライドがすごいですね。

僕は、フェラーリほど美しさを極めた車は他にないと思っているんですが、現場ではどのようにして作っているんですか?

ポルシェは具体的なデザインの要素が決まっているんですが、フェラーリにはそれがないんです。出来たものがフェラーリに見えればそれで良いんですよね。

あとは赤が似合えば…ですよね(笑)。

それがすごく難しいんです(笑)。普通、車の模型はシルバーで作るんですが、フェラーリは模型から赤で作るんです。シルバーで作った上に膨張色の赤を塗ると重たく見えるんですよね。だから僕はあるプレゼンであえてシルバーのモデルを見せたんですが、それを見たエンツォ・フェラーリの息子ピエロさんは涙を流しながら怒って「フェラーリっていうのは赤なんだよ!」と帰ってしまったんです。

でもそれは僕も大賛成ですね(笑)。やっぱりフェラーリは赤ですよ。

あとフェラーリで印象深いのが、普通は粘土で作るモデルを、堅い木のような素材を使ってノミとカンナとノコギリとサンドペーパーで削って作るんですよ。つまりそれは大理石を削る彫刻と同じなんです。堅い素材で作ると出来たものも堅く見えるし、失敗できないから緊張感が伝わる。時間はかかるけど、彼らはわざとそうして作っているんですね。粘土だとそれが緊張感はないんですね。

それは全てのモノづくりの真理ですね。ゾクっとしました。


田舎がキレイというのは本当にその国の文化度を表しますね。(奥山)

本当に文化度の高い国というのは2つの要素があって、1つは年配の方が憧れるような良い生活をしているということ、もう1つは田舎がキレイということですね。都会がキレイな国はどこにでもあるんですけど、田舎がキレイというのは本当にその国の文化度を表しますね。イギリスの田舎もキレイですよね。

そうですね。ロンドンで仕事をしている人達も土日には必ず田舎に行きますね。街並みを守るためにもエネルギーを惜しみませんね。古いものは壊して新しいものを作った方が絶対に楽なのに、根性で守り抜いていますよね。

ヨーロッパは、そういう意味で自分達の本当の良さを知っていますね。街並みをキレイに残すというのは1つの機能であり、無駄ではないんですよね。ヨーロッパはその辺りのお金の掛け方が上手いですね。それと、リーダーシップがはっきりしていて、リーダーがやると決めたらやるし、責任もしっかり取って、説明もちゃんとするんです。最終的には人が作るものですからね。


モノを作るということは大切な人の誕生日プレゼントを探すようなものですね。(奥山)

奥山さんはいつでもどこでもデザインをされてると聞いたんですが?

クリエイターとしての才能というのは実は普通の人もプロもそんなに違わないと僕は思うんです。ただ閃きの瞬間というのがあって、その瞬間は1秒たりとも逃したくので、周りにある紙切れにでも壁にでも床にでも(笑)、何にでもいいから書き留めるんです。

うん。

ただ、そうやって書いたものの90パーセント以上は、後で見直すと恥ずかしくなるような使えないものばかりなんですけど、それを100個集めてその中から1つを選び、さらにそのプロセスを100回続けて、10,000の中から1個選べば、それは良いに決まっているというのが僕の理論なんです。だからスケッチブックはいつも持っていて、トイレの中でもお風呂に入っている時でも何かを思い付くと、とにかく書きますね。

僕も同じです(笑)。そして奥山さんの最新の著書『人生を決めた15分 創造の1/10000』の中に、記憶に残る言葉がいくつも詰まっています。その中のいくつかを教えて頂きたいんですけど、「常識を捨てろ!良識を持て!」という言葉の意味は?

僕はこの本で3冊目なんですけど、今まではモノづくりの話とかイタリアの車の作り方とか、業界の人向けに書いてたんです。でも、今回はどちらかというと学生さんや仕事を探している人、人生の方向性を探している人達に向けて書いたんです。

はい。

僕が日本、イタリア、アメリカ、ドイツなどいろんな所に住んで思ったのが、常識というのは国によって変わるし、時代によっても変わるから、それに左右されるのは馬鹿らしいのではないかということなんです。「他人からすごいな」と思われる人というのは自分の中に1本の芯を持っていて、自分の中で絶対にこれだけは守るというものを持っている人で、その1本というのはその人の中での良識なんです。僕はそういう人間になりたいと思いますね。

僕もそう思います。「リサーチはするな!」という意味は?

モノを作れと言われると、大抵の人はすぐに情報を揃え始めるんですけど、それは絶対に間違っていると思います。モノを作る依頼が来た時、既に自分の中に1つの基準がなかったら作ってはいけないと思います。

うん。

新しいモノを作るにはエネルギーが必要で、物理的に環境を破壊しないと作れないので、それ以上の価値がなかったら新しいモノを作ってはいけないと思います。何かを作ろうとする時、自分にとってどういうものなのかがはっきりしていないといけないんですね。ところが、情報から探すと情報に左右されてしまいますから、まず考えて何をしたら良いかが分かってから、リサーチするべきですね。

そうですね。「モノづくりとは物語を売ること」という言葉は?

技術というのは今ほとんど同じ物しかなくて、それをどう料理するかが腕の見せ所ですよね。技術単体は市場で売っている食材のようなもので、お客様にとってそれ自体には全く価値がないんです。お客様にとっては、出来た料理を食べて美味しいと思う、その経験自体が価値なんです。僕らの役割はうまくデザインをしてお客様に新しい世界を見せてあげることです。そう考えると、モノを作るということは大切な人の誕生日プレゼントを探すようなものですね。

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