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一杯の至福から始まるアジアの旅

 

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PROFILE
 

 平野久美子 -作家-

東京生まれ。1973年学習院大学仏文学科卒。出版社勤務を経てフリーランスのエディター、ライターとして多くの雑誌の企画編集に関わる。アジアを多角的にとらえ、香港・中国・台湾などの華人社会の文化面についての取材・執筆を続けている。著書は『テレサテンが見た夢・華人歌星伝説』『食べ物が語る香港史』『アジアン・ティーの世界』『カンボジアは誘う』など多数。


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お茶はコミュニケーション・ツールなんですよ。(平野)
世界中にあるのが面白いですね。(葉加瀬)

最近アジアンティーは日本で人気ありますね。ここ何年かは全体を取り入れたものが浸透してる感じですね。

そうですね。本物が日本の人にも知れ渡って茶葉から煎れる烏龍茶を味わう。他にも中国茶は、緑茶・紅茶・黒茶(くろちゃ)・白茶(しろちゃ)・黄茶(きぃちゃ)、烏龍茶は青茶にあたるんですけど、発酵の度合によって色んな種類が生まれるんですよ。今、みんな知識欲が旺盛だから“楽しく学びながら美味しく味わおう”ということでブームになったんです。

プーアル茶は中国茶の一つですか?

雲南省のプーアル県で採れるからプーアル茶。これは黒茶ですね。後から発酵させて作るんですよ。これはダイエットに良いと言われてますね。

鉄観音というのは?

あれは烏龍茶の品種の名前です。

全然分からないのに色んな名前だけが知識として入ってくるんですよ。これを体系化すると色んなことになるんでしょうね。

おっしゃる通り! 奥が深いんですよ。

洋の東西を問わず、お茶というのは世界中にあるのが面白いですね。

これは中国から始まった文化ですね。私がお茶にハマったのも“華人文化”に興味を持ったからなんです。台湾や中国や東南アジアを旅して各チャイナタウンに行くとお茶が出てくるんですよ。そこでお爺さんの話を聞くために一緒にお茶を飲んだりしていたら自然と詳しくなっちゃったんです。だから私はお茶の研究家じゃないんです(笑)。

いいですね。一番楽しい知識の入り方ですね。

お茶はコミュニケーション・ツールなんですよ。ただ喉が乾いてれば水を飲めば良いわけですから。お茶はもっと精神的なところを捉えて、私は『アジアンティーの世界』でも“1杯のお茶から共有しているアジアの心を分かち合おう”と盛んに言ってるんですけどね。


英国の旗が降りた時、食堂のおじさん全員が「アイヤー」と言ったんです。(平野)

“旨い御飯食べるなら香港でしょ”という感じだけれど、食べ物は凄いですか?

香港は食都(しょくと)としてはアジアでも有数の地位だと思いますよ。最近は台北も頑張ってますけどね。何故かと言うと大陸の色んな地方からシェフが集まって来るわけですよ。美味しいマグロのトロが焼津にはなくて東京へ行ってしまうのと同じで、四川でも北京でも天津でも美味しいものはみんな香港に集まって来てたんですよ。ただし最近は少し違うかもしれない。上海が凄いですから。

お金の流れが行く所に旨いものが集まるのは当たり前の話なんですよね。そう考えると今は上海が元気だということですね。

香港も引き続き元気ですよ。でも香港は美味しい人とモノが集まって来る。経済力があるところは美味しいものがあるんです。

97年の香港返還の時もいたそうですね?

「絶対にこの日は香港にいよう!」と堅く誓っていたんです。でも前は香港の友達と騒ごうと思っていたんですけど、実際にその日が近付いて来たら何かしんみりしてしまって、とてもそんな気にはなれませでしたね。私は1人香港島のノースポイントにある食堂で普通の人たちとTVの中継を見ました。土砂降りの雨の中、花火が上がってね。ずぶ濡れのイギリスの国旗がずるずる降りるのを、苦渋の顔で見ていたチャールズ皇太子をみんなで眺めて。

僕は日本から見てましたけど、とてもドラマチックでしたね。

ある種の感傷が誰の胸にもあったようですね。英国の国旗が降りた時に、その食堂のオジさん達全員が「アイヤー」と言ったんですよ。「なんてまぁ」とかいう意味なんですけど…新しい未来に対する一抹の不安もある一方で、やっとお母さんの胸に戻るんだという安堵の気持ちも中国人にはあったと思いますね。

非常に複雑な心境が入り混じってる感じがしましたね。僕はここ何年か香港へ行ってないんですが、返還後に色々と変化している中で、最近の“ココがオススメ”というのはありますか?

様々ですけど大陸との交流が非常に盛んになったので、西洋のものや大陸の新しいもの、新しい芸術家とか現代的な絵画が広くギャラリーで観られるようにになりましたね。あとは京劇とか広東劇とか四川劇とか“チャイニーズオペラ”といわれるものをあちこちでやるようになりました。

“中国”という自分たちのクラシックにスポットが当たってるということですね。それで僕ら外国人が見られる機会が増えたのは面白いですね。

前は香港にいれば各地方の食べ物が食べられました。それが今、香港は大陸各地方の“文化”が楽しめますね。

玄関口なってるということか。それは見逃せませんね。



カンボジアは極楽としか言いようがないです。(平野)

1つ思い出したんですけど、お茶は何処へ行っても「cha」か「te」という発音で通じるそうですね。これがイギリスだと「ティー」という発音でアジアだと「チャ」になる。トルコだとまだ「テ」だったりするんだって。

それは実に着眼点がいいですね(笑)。何故かというと「チャ」と「テ」というのはどっちも中国語で、福建と広東の言葉なんですよ。

とにかく何処へ行っても「チャ」か「テ」のどちらかを言えばとりあえずお茶が出てくるという話を聞いて、僕はお茶1杯で世界に夢が繋がってる感じがしてて。

去年から暗いニュースが続いてるアフガニスタンでもお茶を飲むんですね。そう考えると私たちが全く知らない国を捉える時に、何をキーワードにして身近に引き寄せるかという時に“お茶”というのはありだと思うんです。

僕カンボジアに行ったことはないんですが、一言で言うとどんな国ですか?

あそこは極楽としか言いようがないですね。ただ20世紀の謎と言われるような虐殺も起きまたし、内戦が今のアフガニスタンのようにずっと続いてたでしょ。でもそれだけでネガティブに見てはいけない。インドシナ半島の文化の中心になった、アンコールワットという素晴らしいクメール文化の発祥の地なんです。だから今復興に向かって頑張ってるところを応援しようと、明るい未来への方向でカンボジアを捉えて欲しいですね。

極楽と言いましたけど具体的にはどんな感じが?

人の笑顔に邪気がないんです。親切を通り越してこの世とは思えない笑顔が満ち満ちているんです。それは極楽ですよ。あとは風景の美しさ。長い戦争の果てに辿り着いた静けさ・穏やかさが漂ってる感じがします。花が咲いていて手を伸ばせば果物があちこちで撓わに実ってるんですね。食べ物にも困らない、人々が笑顔で取り巻いてくれる、このままずっと暮らしていけそう…これは極楽です。違います(笑)?

それだけ言われたら極楽としか言い様ないですね(笑)。


アジアは“意味ありげの世界”。(平野)
ヨーロッパへ行くとすっきりし過ぎててね(笑)。(葉加瀬)

私も若い頃は御多分に漏れず随分欧米へ行きました、好きだったし。欧米では日本と違うことを見つける楽しさがあるでしょ。でもアジアは“似てること”を見つける楽しさがあるんです。

そうですね。凄く実感してます。僕はインドに足を運んだんですが、もともとは10年くらい前にバリ島に旅行したんですよ。山あいで見た風景が、自分が子供の時のおばあちゃんの家に夏休み遊びに行った感覚と同じだったんですよ。田んぼがあってね。

棚田があったりね。ジーンときたでしょ。

牛の匂いとか米を炊くとか竈の匂いとか。「これはなんだ」と思ったことからアジアに足繁く通うようになったんです。自分の原体験探し・ルーツ探しをしてるんですね。

「アジアの魅力は?」と良く聞かれるんですけど言葉では難しいんですよ。あえて言えば私は“意味ありげの世界”と思うんです。“意味”と“無意味”の間には”意味ありげ”の世界があると思うんですよ。

意味ありげの世界…。

これは私が偉そうに言っているんじゃなくて、谷川俊太郎さんと寺山修司さんがビデオレターを交換していて、その中で「谷川さん、意味と無意味の間には何がありますか?」と聞かれた谷川さんが「何があるかしらね?」と言うと、寺山さんが「“意味ありげ”があるんではないですか?」と言うんです。私はその時にショックを受けました。

とても味わいのある言葉ですね。

“意味ありげ”を探していくと何か魂の居場所がありそうで。私はアジアの風景を見たり人に出会ったりアジアで体験を積むと“意味ありげの世界”は気持ち良いと思うんですよ。

分かります。それはとても日本人的な感じ気持ち。東洋的な気持ち良さですよね。ヨーロッパへ行くとすっきりし過ぎててね(笑)。

原理−プリンシパル−があるでしょ。

合理的なところで、便利なのかそうじゃないのか、綺麗なのか綺麗じゃないのか、条理なのか不条理なのか、というのがあるんですけど、そうじゃない曖昧な感じがね。

“意味があるのか無いのか”でしょ。でも意味があると無いの間にもう1つ世界がある。アジアを旅していると凄く気分としてそれを感じますね。「宇宙に繋がってるんだろうな」という大きな気持ちになるでしょ。


一流ホテルも屋台も両方が楽しめてこそ旅人として上級者。(平野)
自分の興味をオープンにしておくということですね。(葉加瀬)

香港にしてもカンボジアにしても、平野さんの旅は食べ物とかお茶とか自分からの距離が短い所から入っていって、奥深くの国の文化まで自分の手で探っていってますよね。

ただ“何も知らない・分からない所に行って何が頼りになるか”というと自分の五感と好奇心だけですよ。自分の五感で“意味深げ”な世界に迫ろうとすると、どんなに本をよんでいてもそれだけでは足りません。自分の中の五感を磨いて、食べてみたり、触ってみたり、匂いを嗅いでみたり、聞いてみたり、それが大切なんですよ。

好奇心ですね。何処かアジアのストリートの屋台で「これ何の料理だろう、美味しそうだな。食べてみようかな、でもちょっと怖いな」と一歩引く時はないんですか?

なくはなかったんですけど今はないです(笑)。免疫が出来ちゃったんでしょうね。だからお腹を壊すのは自分の体力が落ちた時。1回や2回お腹が痛いのは通過儀礼だと思うこと。

やっぱり(笑)。僕はインドへ行った時、1日目にお腹痛くなっちゃったんだけど「これは儀式だと思いなさい」と言われました(笑)。

そうすると4回目5回目にはそれだけ抵抗力が付いてます。それでだいだい無茶の限界が分かってくるんですよ。だからひかないことですね。

どこの国でも一流のレストランとか観光客が行くような所へ行って、そのまま帰って来ただけじゃ何も分かってないのと同然ですからね。

そうですね。でも私は何も地を這うような旅を薦めているわけではないんですよ。両生類。両方とも楽しめないと。5ツ星のラグジュアリ−のホテルもそれなりにマナーを守って楽しめる。泥水を蹴散らして行くような屋台にも行く。両方が楽しめてこそ旅人として上級者だと思います。

両方にできるだけ自分のキャパシティを広げておく。自分の興味をオープンにしておくということですね。これからも素敵なレポート・本を待ってます。

(当選者発表)
平野久美子さんの著書「アジアンティーの世界」「カンボジアは誘う」プレゼント当選者の発表です!

◆「アジアンティーの世界」
石川 満里子さん(北区)、干場 香名女さん(新宿区)、西本 純子さん(杉並区)区)
◆「カンボジアは誘う」
鈴木 有希子さん(横浜市)、谷 秀明さん(品川区)、松尾 寛子さん(目黒区)

以上6名のみなさん、おめでとうございます。



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OVER THEIR WALLS / ANGGUN
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