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Paris

彼の夢は、未だ序章であり、
彼の人生は、いつもクライマックスである。

 

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PROFILE
  辻仁成 さん

辻仁成さん - ミュージシャン・作家 -

1985年東京生まれ。85年、バンドECHOESでのデビュー後、89年「ピアニッシモ」で第13回すばる文学賞を受賞、97年には「海峡の光」で第116回芥川賞を受賞。
ミュージシャン、作家、映画監督として精力的な活動を展開している。昨年、初脚本に挑んだ連続テレビドラマ「愛をください」では、主題歌「ZOO」とともに注目を集め大ヒットを記録。
2001年はECHOESのギタリスト伊藤浩樹とECHOES OF YOUTHをスタートさせた他、5月25日には、江国香織との共著「冷静と情熱のあいだ」のイメージアルバムをリリース予定。本作では葉加瀬氏がオリジナルテーマ曲を書き下ろしている。


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パリが何故いいかというと“プチホテル”ですよ。(辻)

パリへはどんなきっかけで行くようになったんですか?

最初はやっぱり“恋人”と。仕事じゃなくてね。初めは1週間くらいだったかな。何もしないで、寝て、食べて、愛しあって。セーヌ川を歩いて犬のウンコ踏んづけまくって(笑)。でも今はパリも清掃に気を付けだしたんですよ。だからよく清掃車が走ってる。

タバコの吸い殻や犬のウンチがあるのがパリっていう感じがするよね。アメリカ等で“ノー・スモーキング”のカフェが増え始めて来た頃、パリでも“カフェではタバコを吸うのをやめましょう”というのをやったんだって。あのパリジャンたちが(笑)。

絶対無理な話だね、それは(笑)。

そう。だから結局2、3ヶ月で「何でこんなことやってるんだろう?」ってことで、終わったらしいよ(笑)。

でも2ヶ月もやったんだ(笑)。我々が抱いてるフランス人のイメージって、いつも彼らはフランス料理を食べてるような感じがするけど、実際は全然食べてないからね。フォアグラなんかあの人たち知らないんだもん。

夜は大体お肉をステーキにしたり、魚とかね。あとはお芋を食べたりしてるよね。

ドイツ人もイギリス人も、ヨーロッパ人はみんな同じですよね。ただ「芋はドイツが美味い」とか「ソーセージはドイツが美味い」とか、そういうのはある。パリは地中海側から上がって来る人達が多いから、アフリカの料理とか凄くあるしね。僕はパリのクスクスにはうるさいですよ! 本当にパリジャンが行く店というのがあって、そこのクスクスとワインでね〜。

僕もパリでクスクス食べたけど、美味いよね。あと辻さん、ワイン詳しいし。

詳しくないけど、安くて美味い物が好きですよ。

でも高いのも飲むでしょ?

高いの大好き! もう散財する。「開けちゃえー!」みたいな(笑)。

大体“趣味がホテル”だからね。

ホテル大好き! パリが何故いいかというと“プチホテル”ですよ。絶対にアメリカンホテルに泊ってはいけませんね。まぁ1回は経験してみてもいいようなホテルは幾らかありますよ。でもやっぱりプチホテル。アムールですよ(笑)。タクシーの運転手が教えてくれるんです。「ここがミッテラン大統領が愛人を連れて来るホテルです」って。パリの人達はみんな知ってるんです。ただそれと政治は関係ない。彼らがプライベートで何をしてても政治家として優秀なら、フランスは大歓迎という感覚なわけ。

フランスらしいね。そういうのが許されるんだ。


イマージュ。それが日本の男にはないんだ。(辻)

大体どのホテルに泊まるんですか?

昔はサンジェルマン・デ・プレ界隈でしたけど、最近はマレーとかね。

みんなマレーはお洒落で素晴らしいって言うけど、東京だと何処みたいな感じ? 青山とか?

そういう次元じゃなくてね、延暦寺みたいな感じ。京都の嵯峨野みたいな世界なんですよ。

でもマレー地区って、最近まではそんなふうに言われてなかったでしょ。

この4、5年じゃないかな。回廊があって、そこにユーゴーの美術館があったり、レストランがあったり、いいホテルがいっぱい出来たんだよね。そこからちょっと行くとユダヤ人街もあるし。その間にブルジョアっていう通りがあるんだけど、その前後にブティックがいっぱい出来てたんだ。シャンゼリゼみたいにハナにつく華やかさじゃないんだよね。観光客が少ないから静かでエレガントなんだよ。その回廊には日曜日になると、葉加瀬さんを目指すようなバイオリニストのタマゴが演奏してたり、オペラ歌手を目指す人が歌ってたりするんです。そこを一条の光が照らしてて、そんな光景をぼんやり見てると「人生とは」って、哲学的に考えるようになるんですよ。

そこで作家・辻仁成になるんですね(笑)。

そうそう。言葉が溢れてきて(笑)。「今日はワインを飲みに行くぞ」ってズボンのベルトを緩めてフラフラと歩き出す。いい酒場があるんですよ。フラッと入ってそこの人達とワインの話をして、ガンガン飲んでベロベロに酔っぱらって、ホテルまで這って帰る。

フランス人と飲んでていつも思うのは、色んな話を深く出来るんだよね。

いや、あいつら深そうに見えるけど、顔に騙されちゃいけないんだよ(笑)。ただ口説くのが上手いだけだから。酔わせるのが上手いから。

でも日本人が話してるのとはちょっと違う気がしませんか?

僕はそこまで深く話したことないけど、どうだろう。僕の友達でレミという男がいるんだけど、画家でSMの絵を描いてるんだ。彼女が日本人でね。彼の家はシャンゼリゼの近くの裏路地で、周辺はアフリカ人がいっぱい住んでる所。だけどアパートで彼の部屋だけは別世界なの。屋根裏にあがれるようになってて、柵もなにもないのにみんなそこに寝転がって飲んだりしてるわけ。レミが僕のフランスの先生なんだけど、彼はやっぱり何も言わないよね。エッチなことしか話さない。「女をどうやって縛るか」とか。でも「本当にそんなことしてるの?!」って彼女に聞くと、「レミは口だけだから」と言われる。

イマージュの世界だね。

イマージュ。それが日本の男にはないんだ。日本の男って、だんだん社会に追われていって、遊び心を捨てていくじゃない。あっちの中年は捨ててないね。いつも目がギラギラしてる。

辻さんの作品がフランスに受け入れられるのは、その辺かな。そういう遊び心というか。





フランスは輸出制限してて、恋愛小説は一切翻訳させてない。(辻)
フランス人はシリアスなモノを受け入れる土壌がある。(葉加瀬)

フランスと日本のカルチャー・ギャップは感じますか?

僕は全然感じない。小説も音楽も映画も、どの話をしても特に引け目を感じることはないし、フランス人は世界の中でも日本人に対して特別な意識を持ってる。「日本の文化が好きだ」とよく言われます。

自分の本が向こうで翻訳されてるという現状は、凄く嬉しいでしょ?

そうですね。今度2冊目が出るので、それがどう読まれるかは凄く興味がある。フランスでの出版の戦略は真剣に考えてます。日本では恋愛小説も純文学も音楽も、節操なく出してるけど、フランスは輸出制限してるの。今は恋愛小説は一切翻訳させてない。1回目が『白仏』で2回目が『海峡の光』で、その後に今『文学界』で連載してる『太陽待ち』という、20世紀を回顧する幻想小説を出すんです。

今はシリアスなのを出して、後々恋愛ものを出したりするの?

ものによっては出すでしょうね。でも韓国では全部恋愛小説なんですよ。韓国や台湾は日本の文化を凄く受け入れてる国だし、アジアの人は日本の文化に興味があるからね。逆に『白仏』とかは出版されてないの。

それは戦略なんだ。

フランスは文学に置いての世界の中心なので、そこに軽い作品を持って行くと、そこで評価が出てしまうでしょ。売れることより、まず評価してもらいたいからね。作家としての存在を認めてもらってから、軽い作品を出すならいいんだけど。

それ当たってるかもね。フランス人は文学でも音楽でも、シリアスなモノを受け入れる土壌があるからね。

「トライしてみよう」という感じ。それを自分の中で勉強して、乗り越えてみようという気持ちが凄くあるんです。それが今の日本人には薄れてきてる。団塊の世代の人達は、本を読むことしか楽しみがなかったから、たくさん哲学書とかを呼んでた。だからよく考えたり哲学的であろうとしたんだけど、今の子達は難しいと「だから何なの」で片づけちゃうわけ。でもそれで片づけてしまうのは、ものを創造する上でとても危険なんですよ。「そんな難しいことやめて、遊びに行こうぜ」というのは格好良いんだけど、哲学とかをちゃんと知ってて遊びに行くクールさがなければ、本当の意味での大人の遊びが出来なくなってしまう。だからいつまでたっても日本人は大人にならないでしょ。ヨーロッパの連中はそれがわかってるから、格好良く決められるわけ。「フランス人が会話が好きだ」というのは、知ってることをきちんと話せるからだし、知ろうとする気持ちがあるからだよ。

でもそういう話が出来ちゃうフランス人って、凄いよな。

レミも色んなこと知ってるけど、ひけらかさない。「辻、シャンパン好きだろ。でも白を飲んでるうちはダメだよ。シャンパンが本当に美味いのはロゼだ」と言われて、飲んだら本当に美味かったんだよ。「こんなに安いロゼがあるの?」って聞いたら「それはお前が探そうとしてないからだ。世界中にはお前の知らないことがたくさんあるんだ」って。格好いいんだよ。

今度パリに行った時紹介して。

いいよ。縛られるかもしれないけどね(笑)。


葉加瀬さんの音楽が戻ってきた時は驚いたね。素晴らしかった。(辻)
僕自身も自信作なんですよ。(葉加瀬)

『冷静と情熱のあいだ』は、まずタイトルにしてやられるよね。

僕にととってタイトルは凄く大事なんですよ。『冷静と情熱のあいだ』も「あいだ」は平仮名でね。そこはこだわりですね。

『冷静と情熱のあいだ』は江國香織さんと連載をしていたんですよね。

交互にね。別れたカップルが再会するまでの男女の心の揺れを、男性は男性の作家が、女性を女性の作家が書いた。11月に映画化されるけど映画のサントラじゃなくて、本のサントラを出すんです。

僕は小説を読みながらメロディが生まれてくることが本当に多いんですよ。だからこの企画を聞いた時、なんて素敵なアイデアだろうと思ったね。

僕もサントラの企画を考えて、まずレコード会社を口説いて、それから葉加瀬さんの所に持っていったの。そうしたら乗ってくれたでしょ。溝口肇さんとかつのだたかしさんとか、色んな人が参加してくれて。みんなを口説き回るのが楽しかった。どんなのが出来てくるか凄く心配だったけど、葉加瀬さんの音楽が戻ってきた時は驚いたね。素晴らしかった。江國さんの方でも僕の「BLUE」に対して「ROSSO」というのを出すんだけど、そっちでも葉加瀬さんの曲を使いたいと言って、ピアニストのARICOさんが弾くことになったんだよね。2枚に渡ってテーマ曲を書いてもらって、有り難うございました。

僕自身も自信作なんですよ、この曲が。

絶賛してるね、自分たちで(笑)。

「自画自賛」大事でしょ。

自分がいいと言えないものを人に聴かせたり、売ったりするなって。謙虚になるのは叩かれてからでいいんだ。

このサントラのリリースされる5月25日は「運命の日」なんだよね。

小説の中の二人が再会する日に重なってるんですね。最近寝る前に毎晩聴いてるよ。つのださんのリュートの世界も素晴らしい。気合い入ってて、教会でレコーディングしてるから。フィレンツェの景色に浸れるよ。

いいねぇ。


僕が遊ぶことは胸張っていいんですよ。これ仕事だから。(辻)
言い切った、辻仁成!(葉加瀬)

またECHOESが再始動するとか。

ECHOESは去年『ZOO』のヒットで多くの人に聴いていただいて、武道館のコンサートも成功してね。そのライブのリハーサルの時に「もう一回やろう」という話がギターの伊藤君との間に出たんです。でももう一度同じものを続けるのは嫌で、二人でユニットという形にして。でもECHOESの曲も歌いたいから「ECHOES」という名前は残したんです。「ECHOES OF YOUTH」というのは昔のファンクラブの名前なんですね。ECHOESの精神を受け継いだけど、基本的には新しいバンドです。

じゃあ勿論新曲をどんどん書き続けて。

4・7・10月にマキシシングルが出て、アルバムも年末頃出ます。『恋するために生まれた』はベルリン・ミックスなんですよ。デビッド・ボウィの『レッツ・ダンス』をやったハンザトン・スタジオで録って来ました。次に出る『リアル』はロンドンで。10月に出るのはパリで録ろうと思ってる。シャンソン・ロックみたいな感じで。そして最終的に東京のバージョンを録って、4大都市でまとめて一枚のレコードにするんです。

いいなー。仕事と自分の遊びが混ざってるよね。でもそれって大切なことですよね。

だって俺が楽しんでなくて、聴く人が楽しめるのかっていう。僕が遊ぶことは胸張っていいんですよ。これ仕事だから。

言い切った、辻仁成!

ストレスないもの。不景気な時代だからこそ、それをバネにイナセに生きるというか。歳をとっても格好良く生きたいよね。1冊の文庫本が人の人生を豊かに出来るし、たった1曲がその日1日をハッピーに出来るわけんだから。そういう仕事をしてる人間が胸張らないでどうするのよ(笑)。飲もうぜ。

それはそうだ! 飲もう! パリに着いたらデ・プレに行こう!


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CITY INFO

ON AIR LIST

 
TOUT LE MONDED / ZAZIE
REQUIEM POUR UN CON / SERGE GAINSBOURG
TO THE END / FRANCOISE HARDY & BLUR
BOUGE DE LA / MC SOLAAR
冷静と情熱のあいだ / 葉加瀬太郎
恋するために生まれた / ECHOES OF YOUTH

 

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