ON AIR DATE
2023.03.12
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54


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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
3万円台の都内・風呂なし物件で快適生活!? 安くても心豊かに暮らす方法

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TUDOR logo

『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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#440 --- --- 長期旅が好きなら・・・ ---

前半はリスナーの皆さんからの“お便り”をご紹介!
リクエスト曲や選曲オーダーにもお応えします。

後半のテーマは「風呂無しアパート」。
訓市がバックパッカーとして過ごした
90年代初頭から世紀末の時期に
日本での居場所としていたのが
友達が借りていた「風呂無しアパート」

なぜ、風呂無しだったのか?
なぜ、自分で借りなかったのか?
その理由とは?

代官山の裏通りにあったザ・昭和のアパートで
巻き起こった奇想天外なエピソードについて語る。


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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2023.03.12

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Live Forever / The Lemonheads

2

Existentialism (Milano Dub Mix) / The Dining Room

3

4 Ever / Method Man feat. Megan Rochell

4

Something On Your Mind / Jackie-O Motherfucker

5

Your Eyes / 山下達郎

6

The Wind (Live 1976) / Cat Stevens

7

Yebba's Heartbreak / Drake & Yebba

8

Angel Eyes / Sting

9

Teenage Birdsong / Four Tet

2023.03.12

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



KUNICHI was talking

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先日、若い人たちに風呂無しアパートが人気という記事をネットで見つけて、読んでいたらコメントに「呑気なこと言うな」とか、「国が無策の結果で、そうせざるを得ない若者がいるんだ」とか、「不潔だ」とか、「銭湯行くのも高いんだ!」というような書き込みがたくさん書いてあって興味深く読みました。なにやら炎上しているみたいなことも他の記事で読んだんですが、興味深かったのは何故かと言うと僕も住んでいたことがあるからです。風呂無しアパートに。そしてその記事を読んでいるうちに昔のことを思い出したので、今日はちょっとその話にお付き合いください。僕がバックパッカーをしていたのは90年代の初頭過ぎの93年くらいから世紀末までなんですけど、タイへ行く格安航空券が大体4万円、日程が1年の間であれば日本に帰国できるヨーロッパ行きのオープンチケットが10万円で買える時代でした。飛行機会社が今よりたくさんあってコードシェアなんていうものが無かったですから、ガラガラの飛行機がバンバン飛んでいましたし、ガソリンも今より安ければ円も強かったからだと思います。ビジネスクラスがまだフルフラットではなかった時代ですが、それに乗る人たちって間抜けだなーと思っていました。何しろ上手く席を選べばエコノミーの席の肘掛けを上げて、空いてる席で横になって寝られましたからね。いちいちベルトをしてくださいっていうチェックもない、すごく呑気な時代でした。アジアに行けば安く暮らせるので、お金が溜まればすぐ海外に長期滞在して、本当に用がある時に日本に帰って来られればいいという感じだったのですが、そこで困るのが日本での滞在先。旅好きのバックパッカー学生にとって、実家に住んでいなければ日本にいない間にも空家賃が発生しますし、今の民泊みたいな便利な制度があったわけでもありません。そこで活躍するのが安いアパート、それも突き詰めていくと風呂無しになるわけです。僕の場合はさらにケチって、そんなアパートに居候していました。泊めてくれる優しい友達がたくさんいたわけです。原宿の裏原って言われるようなところにも風呂無しアパートってありましたし、結構探せば色んなところにありました。色んなところを泊まり歩きましたけども、一番思い出深いのは友達が代官山に借りたアパートです。大通りを入ったところに日本最初のアパートというか分譲マンションだったというアパートが1号館、2号館、3号館…と、複数ある一角があったのです。洋館風のものもあれば、ザ・日本の古いアパートというものもあり、そこは昔、香港にあった九龍城のような雰囲気を醸し出していました。僕の友達はそこの中の最も古い建物に部屋を借りました。共同の下駄箱がある玄関に、ミシミシと鳴る廊下。1階と2階に共同の洗い場とトイレがありました。部屋にはガスコンロを繋ぐ線だけはありましたが、水道管も通ってなくて、もちろんエアコンもありません。夏は扇風機と風鈴で暑さをしのぐ、そんな部屋でした。


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僕は帰国した時、足掛け何年もここによくお世話になっていました。だいたいそこからどこかへ遊びに行ったら風呂のある部屋の人を見つけて帰りにシャワーを浴びさせてもらったり、夏は公園で水浴びをしたり、あまり困らなかったですね。もちろん近所の銭湯にも行きましたが、夏になると帰りはビーサンにサーフパンツ、本当に暑い時は頭にタオル巻いて、みんな上半身裸で交番の前を歩いていましたが、止められることもありませんでした。きっと銭湯帰りに暑くて、そんな人が他にもたくさんいたんだと思います。そして夏に暑くて暑くて寝られないという時は、酒をしこたま飲んでほぼ素っ裸で寝ていましたね。古い備え付けの2段ベッドが付いていて僕は上で寝ていたのですが、よくベッド越しに下で寝る友達と、あぁでもないこうでもないという話をしたものでした。家賃が確か2、3万だったような気がします。なので友達がちょっと金が貯まったからどこかへ数ヶ月旅をしてくるといってもキープできていたんですよね。旅行を繰り返したいという人にとって家などの固定費が安いというのは本当にマストなことです。今ではコインシャワーがあったり、漫画喫茶もありますし、風呂問題っていうのは上手くやればちゃんと解決すると思うので、風呂無しアパートっていうのはありだと思うんですけども、そこに住んでいた友達も持ち物もすごくいつもミニマムにしていて、何か増えたら処分するので本当にシンプルライフでした。ただ、全部のアパートがそうかは分かりませんけれども、僕が居候していた所は他の住人のキャラがものすごく濃かったですね、漫画に出てくるような、もう何十年と住んでいる人たちがいて、友達がそこに引っ越した日、なんか怖いと言うので泊まりに行ったんです。確かにギシギシ音はするし、風が吹くと窓もガタガタ。怖がりな友達はお化けが出たら怖いと言うのです。これから住むのに何言ってんだろう?と思いながら、「じゃあ泊まりに行くよ」って言って行ったんですが、明け方に外から怒鳴り声がしまして、「警察呼ぶぞ!」だの「謝れ!」だの。しばらく聞いているとどうもそれはそこの住人たちで、「なんだかとんでもない所に引っ越したね」と話していたのですが、翌日そこの住人に何があったのかを聞くと、仲悪い住人同士の揉め事で、もう10何年仲が悪いと。ある住人が中庭にあった物干し竿に服を干していると、その下に必ず人間のなんて言ったらいいんでしょう、普通はトイレでするものが嫌がらせでよく捨ててあったらしいんですよ、もう何年も。僕の友達が引っ越した晩、何年もやられていた住人が夜中ずっと寝ずに窓から見張っていたら、その揉めてる相手の住人がいそいそと中庭に出てきて、そのビニール袋に入ったブツを捨てているところを見つけて取り押さえたっていう夜だったんですよ。驚愕しまして、本当にすごい所に引っ越したなと。すぐ出てった方が良いんじゃないの?っていう話になりましたが、友人はそこに結局7、8年は住んでいました。なのでとても居心地の良いアパートだったんだと思います。お金を貯めるにはお勧めですよ、風呂無しアパート。