ON AIR DATE
2020.03.22
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

「同志は同志を集める」故・エースホテル創設者の言葉

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TUDOR logo

Theme is... Ace Hotel


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」を
キーワードに旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽を
お届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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--- エースホテルの創業者アレックスとの思い出を語る ---

番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで
お寄せいただいた旅のエピソードと、
その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエア!
選曲のオーダーや悩み相談にもお答えします。

後半のテーマは「エースホテル」。
日本初出店となる「エースホテル京都」の開業を4月に控え、
創業者であり今は亡きアレックス・カルダーウッドとの
思い出について語る。
訓市が「エースホテル」に惹かれる理由、その魅力とは?


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエスト… お待ちしてます!!

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2020.03.22

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Can't Find My Way Home (Electric Version) / Blind Faith

2

Vietnam / Jimmy Cliff

3

Other Peoples Rooms / Marc-Almond

4

James / Pat Metheny

5

雪だより / 松任谷由実

6

Only Love Can Break Your Heart (Andrew Weatherall Mix) / Saint Etienne

7

You Belong To Me / Carly Simon

8

Sweet Thing / Van Morrison

9

Memory Gospel / Moby

2020.03.22

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


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ちょっとまだ数週間ありますが4月、京都のど真ん中に「エースホテル」がオープンします。内装が好きとかホテルが好きっていう人達にとって「エースホテル」っていうのはおしゃれホテルの代名詞だとか、オレゴン州のポートランドブームの発祥地なんていう風に知られていますが、まぁ間違ってるというか、もともとオレゴンといったら“オレゴンから愛”に決まっているんですけど、最近はそんなこと言っても誰もクスリともしなくなりました。個人的にこの「エースホテル」のオープンというのはとても感慨深いものがあります。なぜかと言えば創業者自身をよく知っていたからです。先ほど言いました通りエースといえばポートランド、そしてその後に開いたニューヨークやロサンゼルス、ロンドン店がよく知られていますが、もともとはシアトルにありました。それも今から20年ぐらい前だったと思います。安いけど最低限のものはあって、しかも部屋数もすごく少なくて、そこに当時世界的に注目を集め始めていた同世代のストリートアーティストたちの作品が飾られていて、見つけた時には「これこそ自分たちの世代のホテルだ!」「こんなホテルも実現可能なんだ!」と感動したものです。なぜならそれまでは安宿といったら言葉通りの安宿で、デザインホテルといったら花形デザイナーが設計した、ゴージャスでとてもじゃないですが自分たちが泊まれないような値段と客層。そして老舗のホテルといえばまだ、スニーカーで来るなとか、ジーパンを履いていたら入れてくれないとか、僕らとんとお呼びでないという感じでした。そんな中でちょっとこんな部屋に住んでみたいな〜とかいう空間を無理すれば1泊できるような値段で作り、飾ってある作品っていうのが同年代のアーティストの作品。素晴らしいな!それがエースとの出会いでした。それから少し時が経ち、突然知り合いに「今度、ポートランドに面白いホテルができるから創業者と会ってみないか」と紹介されたのがアレックスでした。彼はハイパーというかエネルギーの塊みたいな人で、やりたいこと・面白いことなら無限にあるとノンストップで走るとても面白い人で。途中までまさか彼がシアトルのホテルを作った人とは知らず、「あっエースホテルがポートランドにできるのか…」とびっくりとして久しぶりにポートランドを訪れることになりました。日本に全然知られていないからどうずればいいかということで、最初に日本の雑誌でそこで撮影して紹介することにしたのですが、元々の建物がガス・ヴァン・サントの名作映画『ドラッグストア・カウボーイ』に出てくる安宿で2度ビックリしました。


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ポートランドにできた「エースホテル」・・・お金を無理にかけずにどうそこを自分たちが泊まりたいと思うようなデザインに仕上げる為に元々のホテルに付いていた看板をロビーの大テーブルにしたり、ソファは中古の軍隊の生地で上から張ったり、部屋の番号はポートランドの地元に昔からある電信柱のナンバリングを作る金物看板屋にプレスさせて作ったり。こういうちょっとした工夫でまったく違うことが出来るんだなぁ〜という、いいなぁ〜古い建物と思わせる素晴らしい仕事でした。コーヒー屋さんを1階に入れ、ホテルの物販を色んなブランドとコラボして充実させるという新しいホテルの雛形を作ったエース。当然世界中から注目されて、どんどん物件が増えて規模も大きくなっていき、それと同時に世界中にエースもどきみたいなホテルがたくさん出来ることになりました。アレックスっていうのは改造する物件とその街の周りを上手く考えて地元のアーティストと組んで様々な仕掛けをするというのはどこへ行っても変わりませんでした。ニューヨークのエースがオープンした時も「是非来てくれ」と言われて行きましたけど、ちょうどサブプライムショックという金融危機みたいなのが直撃した後で、色んな工事も資金も遅れて100パーセント完成していない中でのオープンでしたが、ブルックリンのバンド達がライブをしたり、地元のアーティスト達が部屋ごとに違う内装を作ったりして、言い方は悪いかもしれませんが街をあげての文化祭というか、ちゃんとしたコミュニティがあってとても楽しかったのを覚えています。「いつか東京か京都にエースホテルを作るぞ」というのがアレックスの口癖で、毎年必ず東京に来ては物件を探していたアレックス。来るって言っても本当に中国に行ってヨーロッパに行く間の1日だけで見に来たりとか、かなり無茶なスケジュールで来ていました。新築を使わず既存の建物を使いたいと探し回っていましたが、東京には条件に合うような建物がまるで無いことにビックリしていました。「良いのを見つけたと思ったんだけど、あそこも壊されちゃうんだよ」「ここもダメだった」。そしていざ何か物件があると改築しようとすると新築よりもお金がかかる… そうこうしているうちに働き過ぎたのか走り過ぎたのかアレックスは亡くなってしまいました。残ったチームがその後は頑張ってですね。シカゴやニューオーリンズと新しいホテルをまたいくつも開業して、いよいよ念願だった日本初のエースがオープンするという時までこぎつけた訳です。その時にアレックスがいないというのが本当に残念なんですけど、彼が今の京都を見たらどう思うのかなと。もう彼が亡くなってから随分と経ち、日本も京都も様変わりしてきました。「京都には僕らが泊まれるようなホテルが無いから是非作りたい」と言っていたあの時代から観光客も増え過ぎるぐらい増え、ホテルも飽和してきて価格競争なんていう話もありますが、そんな中で「ただ泊まって観光に回るための宿舎ではなくて、なにか創作活動をする人たちの基地として違ったホテルの形を提示したい」といつも言っていたアレックス。京都にそんな場所ができたらまた違った京都の楽しみ方が出来るんじゃないのかと思います。もうWebサイトも立ち上がっているみたいなので、ひとつ見に行ってみようという人は是非、webを覗いてみてください。