ON AIR DATE
2018.02.11
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54


☆☆☆☆☆☆☆☆

訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・

バンコク旅(2)?素敵バーホッピング


TUDOR logo

Theme is... BANGKOK


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから寄せられた旅のエピソードと、
その旅に紐づいた曲をオンエア!

後半のテーマは「バンコク」。
先日、久しぶりに仕事で訪れたタイのバンコク...
グローバル化が進んだ街で様々な場所を巡って、
お店を覗いて訓市が感じたこととは?
かつて、バックパッカー時代に訪れた「あの頃のバンコク」・・・
それを感じる店で過ごした至福の時間について語ります。



★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.02.11

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Sing Wood To Silence / Soley

2

With Or Without You / U2

3

Call It Dreaming / Iron & Wine

4

Sigh / Predawn

5

東京 / Silent Poets feat. 5lack

6

Darling / Real Estate

7

I Didn't Know It Was Looking For Love / Everything But The Girl

8

Wise Up / Aimee Mann

9

Hang Me, Oh Hang Me / Dave Van Ronk

2018.02.11

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

昨年の暮れ近くになるんですが、久しぶりにタイのバンコクに行きました。ここ最近はタイに行くといっても、バンコクは飛行機を乗り換えるだけの素通り。そのまま他の島に行ってしまったりしていたので、ちゃんとバンコクに入ったのはもう10年ぶりくらいでした。僕が20代のころ頻繁に行っていたバンコクという街、そしてタイという国は、とにかく物価が安くて、どこへ行くにも航空チケットが安く手に入りました。空港に着くと同時に漂ってくる、なんとも言えないエスニックな匂い。排気ガスをもうもうとまき散らして走るトゥクトゥクやトラックに無数のスクーター。海賊版のカセットやCDを売る店、お金を変える換金所、そして安く国際電話をかけられる電話や、道にはたくさんの屋台。そんな街中を、たいして目的があるわけでもないのにビーサンをつっかけてほっつき歩いた日々。僕のバンコクのイメージというと、どうしてもそんな感じだったんですが、空港に着いたときからどこか様子が違うことに気づきました。昔ほどエスニックな匂いを空港内に感じない。外に出て車に乗り込んでも、早朝だったとはいえ、トゥクトゥクの姿をほとんど、もしくは全く見なかったような気がします。そして、車が走る間に窓から見える景色が大きく変わったということに、ホテルに着いて気付きました。バンコクにこんな大きい近代的なビルってあったっけ。アジアの国が日々、成長して変化しているということに、空港に着いて1時間ほどであっという間に実感しました。今回、バンコクに行った理由は、仕事でタイの友達に呼ばれて行ったんですが、知り合いのお店の内装デザインをしてくれという話があって、その現場を確認したり、昼間いろいろな場所に行って、今どんな店があるのかというリサーチをするためでした。そして、それは驚くことの連続でした。倉庫を改造したギャラリーやタイ出身のデザイナーのブランドのお店、ブルックリンにありそうなコーヒー屋さん。しかも、どれも内装がちゃんと手間暇かけて作られているんです。昔のタイの店は角があってないとか、すぐ何かが反っちゃうとか、そういうことが普通でしたが、すごくちゃんとされていたんです。何かの雑なコピーで、その元ネタが何だかわからないところが独自のキャラを発揮していましたが、そういうのがなくなってしまって、ここがバンコクかどうかも言われないと気づかないぐらいちゃんとしてるんです。世界のものが何でもある東京のような街になってきたんだと、こんな街にもグローバル化の波が押し寄せてるんだなと。すごいなと思いながら、勝手にどこかすごく寂しいなと、そんな気持ちにもなりました。



★★★★★★★★

そうは言っても、僕は過去に生きる懐古主義者なわけでは決してないと思っています。今という瞬間が大切なことも、何もいじることができない過去より、可能性のある未来の方が大事なのも分かっているつもりです。ただ、どこに行っても同じような街並みになってしまって、同じようなものを売るようになったらつまらないなと、それだけを嘆いているんです。ビジネスの規模とか効率だけを追い求めていくと、結局はそうなってしまうのかなとは思います。飛行機のチケットも、ネットで一番安いのを調べてその場で買えるのがもちろんラクですし、僕も利用していますが、昔のバンコクではエージェントを回って安い券の値段見比べては、とうとう狙いのチケットを見つけたときの高揚感とか、そういうのはまた味わってみたいなとも思うわけです。今回はいろんなおしゃれそうなバーをのぞいたりレストランを見て、あっという間に時間が過ぎましたが、最後にそのバンコクの友達が、『お前の趣味はわかったから、好きそうなところに連れてくよ。』と連れてってくれました。それは住宅街の中を抜けて、錆だらけの車のホイールが積み上げられたジャンクヤード。ジャンクヤードって言うとかっこよく聞こえますが、もう本当にゴミ捨て場みたいなところで、そこを抜けると、昭和のアパートのような路地に立つ建物。そこには、川沿いにテラスを自作して作ったであろうバーがありました。とはいっても、暗い川には対岸の照明も何もなく、辺りに漂うのは懐かしいエスニック臭の混じった溝の匂い。店内を見回してみると、何かを見よう見まねで作った木製の家具や、いまいち意味の分からないアートやポスター。それこそがかつてバンコクでたくさん見た、僕の考えるタイの店でした。おしゃれなビールなんかもなくて、ビールを頼むと当然のごとくシンハーが出てくる。そして僕は川に面した席に座ってタバコを吸いながら、店内に流れるジャズのようなゆるい音楽に耳を傾けました。誰だろうと思うと、聞いたこともない地元バンドの音楽だと、物静かでニコニコした店の男の子が教えてくれました。その訛りの強い片言の英語を聞きながら、僕はやっと自分の知ったバンコクに戻って来られたような気がして、初めてゆっくりとした気分で川面を眺めて過ごすことができました。