ON AIR DATE
2017.06.18
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... SENIOR OF LIFE

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「人生の先輩」。

訓市が長年にわたって手掛けている
80歳オーバーの著名東京人の方たちへの
インタビューで感じることとは?

10年以上前、カリフォルニアに足を運んで話を伺い、
そのライフスタイルや仕事への向かい合い方に
感化された人物について語る。




★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.06.18

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Someday / Sugar Ray

2

On The Line / Michael Jackson

3

El Dia Que Se Hizo Targe / Rosana

4

Houston In Two Seconds / Ry Cooder

5

Luv(sic.) Pt.3 / Nujabes feat. Shing02

6

Dream Baby Dream / Suicide

7

Midnight Cowboy / John Barry feat. Toots Thielmans

8

I Think It's Going To Rain Today / Nina Simone

9

When I Die / Motherlode

2017.06.18

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★★


人生の先輩。手前味噌ですが、先日発売になったBRUTUSの特集が、『TOKYO80s』というタイトルのもので、実はこれ、僕が10年くらい地味に毎号連載しているものを1冊にしたものなんです。TOKYO80sというと、『なになに、イケイケのバブルの話ですか?』と食いついてくれるのですが、違います。これは東京在住の80歳オーバーの方たちを特集するという、読んだ通りのものです。日経とかでやってる“私の履歴書”のようなもので、4回に渡って80年の人生を、かいつまんでになってしまいますが、語ってもらいます。
自分は編集としていろんな若い人も取材します。若者が“これからこれがしたいあれをしたい、僕の夢はこれです”と、理想を振りかざすのもすごく面白いですし、大事です。でも、80年という確固たる時間を生きてきた人たちというのはそれこそが動かない旅といいますか、実際に会ってきますと、語っていただく人生のすべてというのが、まるで僕の頭の中で走馬灯のようにめぐるというか、いろんな風景が浮かんできます。いろんな本や記録フィルムで見てきた、かつての日本の風景と先輩たちの話がシンクロして、ちょっとしたタイムトラベルみたいな感じといえばいいでしょうか。
本当に、いろんな人を取材してきました。例えば、元首相の中曽根さんはすごい堅い方だと思ってたんですが、寮生活での女子学生との交流の話とかしてくれました。ルバング島で何十年も戦後1人で戦った小野田少尉は、軍国主義の方だと思ってたんですが、実は戦前の上海の疎開にいまして、アメ車を転がしてダンスホールで徹夜で踊った、なんて話もしてくれました。そんな話を聞くと、なぜか小野田少尉がウォン・カーウァイの映画セットの中にいるような風景が浮かんだり。戦後の渋谷を支配した安藤組という愚連隊、その組長だった安藤さんは、話すべてが任侠映画そのまま。初めてアメリカのギャングスタイルの格好をした人たちで、上下白のスーツにボルサリーノを被って、マシンガンを持ったなんて人たちですから、そのおしゃれの話を聞いていると、昔のチーマーとか渋谷に溜まる若者となんら変わりないこだわりが面白かったり。世界のナベサダ、ジャズの渡辺貞夫さんが話してくださった戦後の街とジャズの話というのも、もう完全に映画の世界。道玄坂にジャズバーがあって、アメリカ兵と一緒に初めてジャズを聞いて盛り上がった時なんていうのは、本当に映画や小説の世界を言葉を通じて見せてもらっているようなものでした。
そもそも僕はすごく年上の方の話を聞くのが大好きで、旅先でもよく偶然知り合った人たちによくそんな話を聞いていました。例えば、ホテルのロビーでたまたまお酒を飲んでいた老人に話しかけられて話していたら、昔のアンディー・ウォーホルの頃のニューヨークについて教えてくれたこともありますし、インドで60年代にジミヘンと一緒にコンサートをやったおじいさんとか、中にはチャーリー・パーカーのライブを見た人。今いたらいくつくらいなんでしょうね?クリント・イーストウッドが14歳の頃にサンフランシスコでチャーリー・パーカーのライブを見て、一生をジャズに捧げてしまうきっかけになったというのを読んだことがありますが、僕らが見られなかったもの、感じられなかったものを、先輩の話を通じることで見ることができます。



★★★★★★★★★

旅先でも年配の方と話すのが好きだったり、よく可愛がってもらったりしました。『お前はわしの若い頃にそっくりじゃ。』と言われて、“じじぃ殺し”というあだ名をもらったこともあります。
仕事で最初に面白かったのは、パタゴニアというアウトドア製品の会社の創業者の方に話を聞いた時。ロサンゼルスから車で2時間くらい北に行ったところにあるベンチュラという街に本社がありまして、すごくエコな活動をしていたり、環境に優しい素材でものを作る。それから、社員とても優しい。例えば、子供がいる社員のために、会社に保育園を作った最初の会社だったり、そういうことも聞いたことがあるかもしれません。創業者の方は名をイヴォン・シュイナードというんですが、彼は昔、ロッククライマーとしてヨセミテであらゆる岸壁を登り、ロングボードのサーファーとしても有名な方です。要は、アウトドア好きがこうじて自分が望むものを自分で製品として作って会社を起こし、一緒に作る仲間がまずハッピーでなければとその環境を整えた、理想論というか至極まっとうな形で会社を始めた人です。僕が最初に会ったのはもう17年前になりますが、ものすごく興味がありまして、どうやったらそんなに理想的というか、まっとうなことができるんだろう。そんな人、本当にいるの?と思いまして、本社を訪ねました。まぁ、話を聞いて楽しかったですね。ちょうどイヴォンが山を登り始めたのが文学でいうビートが盛んな頃で、ロッククライミングにはまったイヴォンたちは、まるでホームレスのようなボロボロの格好で山に行って、そこで悟りを開くというわけではないですけど、自然と自分で向き合うということから、“禅クライマー”なんて言われていました。そして、朝に波がたてば海に行ってサーフィンをする。素敵な昔だなぁと思いましたし、昔のアメリカの、自分が本で読んでた50年代60年代のアメリカが頭の中に思い浮かびましたし、やっぱり直に話すので本で読んだことのない話をたくさんしてくれて、『実は、無銭乗車で貨物列車に飛び乗って捕まったこともあるんだよ。』って、笑いながら言ってました。アメリカにはホーボーという人たちがいます。季節労働者で着の身着のまま貨物列車に飛び乗って、全米各地を回って野宿したりする。どこかトム・ソーヤというか、ハックルベリー・フィンみたいな人たちですが、イヴォンもそんなひとりだったんです。道具なんてない時代ですから登山の道具も全部作るし、洋服も一番丈夫なものをと、ラグビージャージにパンツを履いて、寒い時はボロボロのウールの、ぶかぶかのセーターを着て、それで平気な顔をして岸壁を登っていた。そんな風景が本当に目の前に浮かんできて、ものすごく実りのある素敵な時間でした。そのずいぶん後に当時の写真を集めた写真集が出たんですけど、その写真集を見て、『あ!』と。自分が想像したままの姿の写真がそこにはありました。イヴォンたちは特殊ですけど、あたりを見回してみると、80歳以上の方というのは皆さんの周りにも必ずいると思うんです。それが海外の旅先でも、もしくは自分の身の回りでも。例えば、自分の親だったり会社のOBの方、祖母・祖父だったり。口数少なくていつもニコニコしてるねぇ、なんて思わないでください。ちゃんと、昔はどうだったの?って聞いてみると、ひとりひとりにすごく長くて面白い、そしてためになる人生の話というのが必ずあります。今聞かなければ一生聞くことがなくなってしまうかもしれません。僕も祖父が亡くなってから自分の母親に『実はあの人は30年代に、世界一周をしてたのよ。』と聞いて、『え、あのおじいさんが実はそんなことをしてたの?!なんで話を聞かなかったんだろう。』きっと、今の僕と祖父が話をしたら話が合ったんじゃないかと思うんです。とにかくぜひ、周りにいる先輩たちに話を聞いてみてください。特に戦争を過ごしてきた人たちというのは、権力に媚びず、戦争は絶対に反対、という信念があります。今みたいな時代こそ、そういう人たちの話を聞いてみるのがいいんじゃないかと思います。