ON AIR DATE
2017.02.19
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... TROUBLE



『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「旅のトラブル」。
細心の注意を払っていても、時に避けられないのが旅先でのトラブル・・・
訓市がロサンゼルスの駐車場で偽者に騙されたエピソード。
そして、パリのシャルルドゴール空港で困り果てた末に閃いた
起死回生の秘策とは?


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.02.19

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Trouble / Coldplay

2

You Learn / Alanis Morisette

3

Miss Sarajevo / Passengers

4

The Nearness Of You / Norah Jones

5

大人になれば / 小沢健二

6

Satin Soul / The Love Unlimited Orchestra

7

Tripping Out / Curtis Mayfield

8

Electric Relaxation / A Tribe Called Quest

9

Please Don't Go / Stevie Wonder

2017.02.19

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

トラブル、そりゃあもうたくさんありました。バイクで事故って血まみれになったとか、怪我系もたくさんありますし、とにかくトラブルというのは後々になってみるとその旅のハイライトといいますか、それしか覚えてないっていうくらい思い出になりがちです。もちろん、五体満足であれば、ということなんですが。
思い出深いトラブルにニセ駐車係というのがあります。これはもう10年以上前になるのかな。VANSという僕も大好きなスニーカーの会社と仕事をしていまして、その靴の発表会兼、アートショーというのがロサンゼルスでありました。日本から6人で行ったんですけども、空港で大きいレンタカー、バンを借りて、そのアートショーがあった日はお昼に取材をした後、そのまま会場に行きました。スケートの靴で有名なブランドです。そこには80年代90年代のレジェンドと言われる人がたくさんいまして、僕ら全員完全に舞い上がりました。刺青だらけのこわいお兄さんの腕をつんつんしながら『一緒に写真を撮ってくれ』っていうことをしてしまったり。運転係の彼だけは酒も飲めずに、かなり疲れてげんなりしていましたが、その展示会でしこたま酒を飲んで陽気になったところで、今度は打ち上げのパーティーがあると、クラブに行きました。そのクラブというのはロサンゼルスの中でも割と治安のよろしくないところにあって、そのクラブの裏手に大きな駐車場があったらしいんです。“らしい”というのも、僕はすっかりほろ酔いと時差ぼけで、バンの一番後ろの席を一人占めして横になって、鼻歌まじりにウトウトしていたわけです。『駐車場についたから行くよ。』と起こされまして、車を降りた時にはアメ車がずらっと並んだ駐車場で、ちょうど運転係の彼がオレンジ色のベストを着た駐車場係に鍵を渡しているところでした。アメリカというのはバレットパーキングというのがすごく多いです。レストランとかホテルとかにいてフロントに横付けすると駐車場係の人がいて鍵を渡すと持っていくんです。出かける時はまた係に声をかけて車を持ってきてもらって、チップを払って今度は自分で運転をします。僕らはクラブに行ってまた酒をしこたま飲んで、大いにたのしみました。黒人のDJがいて、往年のソウルからヒップホップまでかかりまして。そして、夜の1時に『もう皆さん帰ってください』と言われ、それじゃあ帰ってホテルで寝ようかと、駐車場に向かうと、他のお客さんもわらわらと出ているんですが、一直線に自分の車に乗り込んでは去っていくんです。あれ?みたいな。よく見ると駐車場係がいないんです。探して、でもいないので『ここの駐車場係はどこにいる?』と他のお客さんに聞いたら、『何を言ってる、ここにそんなものはいないぞ。』。要は、オレンジ色のベストを着た偽物にまんまと鍵を渡して盗まれてしまったという。撮った写真のカメラからフィルムから全部乗ってたんですけど、運がいいことにその犯人が翌日捕まりました。中身は全部質屋に売ってしまっていましたが、半年後にとり戻すことができました。みなさん、それっぽい格好をしているからといって、本物であるかどうかというのは決してわかりません。偽おまわりさんとか制服を着ていない人、ただのベストで“パーキング”なんて書いてある人はくれぐれも気をつけてください。



★★★★★★★★

旅のトラブルの筆頭は“パスポートをなくす”ということだと思いますが、それは幸い一度もありません。もう一つの旅のトラブル2大巨頭に“乗り遅れ”というのがあると思います。僕はこれがないのが自慢だったんですけど、12・13年前ですかね、一回やりました。ヨーロッパをいろいろ回ったあと、最後にパリに行ってから日本に帰るという仕事の旅がありました。僕より若い男の子と女の子の3人だったんですが、パリで仕事をしていて、最後の日の朝、飛行機の時間を確認しました。“シャルルドゴールを5時発”と書いてあったので、それは午前中うまく使えるんじゃないか、ということになりました。サンジェルマンかなんかの小洒落たカフェに行ってカフェオレでも飲みまして、それからふらふらと高そうなお店を、ああでもないこうでもないと文句を言いながら、それでもパリジャン、パリジェンヌ気分で歩きました。2時間前に空港に着けばいいだろうと、まだ大丈夫だと二人を引っ張りまして、空港に2時間前ぴったりに着きました。『訓市さんすごいですね。見かけはルーズなのに。』『当たり前だ。飛行機の時間だけはルーズじゃないんだ、俺は。』なんて言いながら、某フランスの飛行機会社のカウンターに行きました。すると成田行きのカウンターがないんですよ。『すみません、チェックインです。成田までの。』と声をかけると、そこにいた人に『明日来い。』と言われました。『Non non, today. 5 O
’clock.』すると今度は怒った感じで『そんなのはない、成田の最終便は今出たばかりだ。』と言うじゃありませんか。あわてて予定表を見ると“15時発”と書いてあります。“1”を見落としちゃったんですね。3時だったんです。さぁどうしよう。『なんとかしてくれ。』『うちにはもう便がないから、よその航空会社のに乗るか、翌日のに乗るしかない。もしくはヨーロッパの別のところを経由するか。』『とにかく、どうにかしてくれ。』と言うと、そこからたらい回しにあいました。『ここじゃ話せないから、あっちの偉い人と話してくれ。』そこに行くと、『いや、ここじゃ決められないから他に行ってくれ。』最後に一番偉い人に会ったんですが、『これは正当な理由も何もないから、どうすることもできない。空港で新しいチケットを買ってください。』と。それが確か、3人分で100万を超えていたんですよ、正規料金なので。これはまずいですよね。僕以外の2人は会社員なので、こんなのとんでもない。『なんとか他の航空会社の飛行機に振り替えてくれ。』『ダメに決まってんだろ。』と、だんだん相手も怒ってきちゃって、結局カウンターの方に戻ってきて、どうしよう、ということになりました。女の子はもう泣きそうな顔をしていましたし、男の子の方は完全に絶望というか。その泣き出しそうな女の子顔を見て、突然いいアイディアを閃きました。フランス人の男=女好き。女好き=女に優しいに違いない。それでその航空会社のカウンターにいる女好きそうなおじさんを探しました。すると一人だけいたんです。女好きそうな、いかにも鼻の下が伸びそうなおじさんが。そこで女の子に『これから無理やり泣け。そして“困っているから助けてくれ。今日中に帰らないと大変なことになる”と泣きつけ!』と。そう言ったらその女の子も突然、瞬きをやめました。目がウルウルしてきたところで、言われた通りに試してくると。僕ともう一人の男の子は、柱の陰から星飛雄馬のお姉さんのように見守っていたんですが、おじさんは案の定、鼻の下を伸ばし出して身振り手振りで余裕のよっちゃんみたいな顔をしているんです。それから何かサラサラと書き出しました。女の子からOKサインが出たので僕らもそこに急いで走って行って『実は僕らも連れです。』と。おじさんはすごく嫌そうな顔をしながら別会社のチケットに書き換えてくれました。
みなさん、自分でどうにもならない時は身近に同じ日本人を探しましょう。そして女の子がいたら、助けてくれと頼んでみてください。世界中、男は女の涙に弱いものです。