「蜷川実花うつくしい日々」展、開催中

写真家・蜷川実花さんの展覧会が、品川にある 原美術館で10日から始まっています。美術館の壁に掛かるのは、これまでの蜷川さんの写真から連想する鮮やかな色彩とはかなり印象の違う写真ばかり。

今回展示されているのは、昨年、お父様の蜷川幸雄さんがお亡くなりになりましたが、お父様が亡くなる前後ひとつきほどの期間に撮影した 写真です。青い空、都会のコンクリートを照らす木々からの木漏れ日。なんでもない街の風景でも、蜷川実花さんの目にはいつもとは違って見えたのでしょう。

実花さん、写真についてこんな言葉を寄せています。「日常的な風景の写真なのですが、父は この世界と別れを告げるのかと思ったら 、世界中が眩しく美しく見えて。

父が亡くなる8ヶ月年ほど前に、息子を産んでいたこともあり、生と死のちょうど真ん中にいた数ヶ月でした。誰もが死んでいくという当たり前のことが、赤子の圧倒的な生命力を前にして、とても鮮烈に響きました」。

きょう5月12日は蜷川幸雄さんの命日です。ご冥福をお祈りします。そして、蜷川実花さんの写真展「うつくしい日々」は原美術館で5月19日まで開催中です。こちらへもぜひ足をお運びください。そしてもうひとつ。

映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 あす公開

今年のアカデミー賞で主演男優賞と脚本賞を受賞。注目の映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』がいよいよ公開となります。プロデューサーはマット・デイモン。当初は、監督も主演もマット・デイモンが自分でやる予定でしたが、スケジュールが合わず断念。監督・脚本を 絶大な信頼を寄せるケネス・ロナーガンにゆだね、主役は、親友 ベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレックに任せます。それがうまくはまり、見事、主演男優賞と脚本賞を受賞。素晴らしい人選でした。

ストーリーをご紹介しましょう。舞台は「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、という町です。アメリカ、ボストンから車で40分くらいのところにある港町。

主人公は、ケイシー・アフレックが演じる男、リー・チャンドラー。ボストンの郊外で、雪かきをしたり水回りの修理をしたり、アパートの便利屋として働いています。ただ、リーは、笑いません。怒りもしない。心を閉ざして暮らしています。     

そんなリーに電話がかかってきます。兄のジョーが倒れた、という報せ。リーは、故郷、マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ります。結局、兄は亡くなり、兄の子ども、つまり、リーから見ると甥にあたるパトリックの面倒を見ることになります。パトリックのことを頼む、というのがお兄さんからの遺言、だったんです。

過去の出来事がきっかけで、戻りたくなかったマンチェスター・バイ・ザ・シー。深い傷を抱えているリーと、父を亡くした少年パトリック。リーはなぜ心を閉ざしたのか?そして、悲しみ、痛みから、ふたりは、一歩を踏み出すことができるのか?

そんな映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』、登場人物の心の変化を ひもとくポイントについて、宣伝ご担当、ビターズ・エンドの石原たみさんが教えてくれました。

始めってすごく寒い土地で彼(リー)が無心で雪かきをしてるんですけど、最後の方になると、徐々に甥のパトリックだとか故郷のいろんな人たちとの触れ合いによって、少しずつ心を溶かしていく、と言うのが、まさに雪解けの春に近づいていくというというところにもうまくかかってるので。やっぱりケネス・ロナーガンの眼差しがすごいなと思うのは、ケイシーであったり、いろんな人たちに対して、すごく眼差しが優しいんですよね。なので、上から目線でもなく描いていることによって、私達も彼らとこの映画の時間の中を一緒に歩んでいるというか、一緒に生きているというような、その地続きの感じをもたせてくれるというのは、やっぱり監督のその演出が素晴らしいんじゃないかと思いました。

さらにこの作品、『人生にはユーモアが必要だ』と、監督が残している言葉通り、リーとパトリックの言葉の端々にも、ちょっとクスッとくるようなやり取りが織り込まれています。重く、悲しく、つらいんだけど、でも、ユーモアと優しさもある。港町、マンチェスター・バイ・ザ・シーでの物語。ぜひスクリーンで かみしめてください。