今年1月から3月11日まで、東京都内で、原則禁止とされていた、タクシー相乗りの実証実験が行われました。配車アプリ上で乗る場所と降りる場所を設定し、同じ方面に向かう利用者同士をマッチング。複数で利用するため、より安くタクシーを利用することができます。今後、課題をクリアしていけば、移動の選択肢の1つとして浸透していくんでしょうね。さて、日本以外の国ではタクシーの相乗りは一般的なんでしょうか?きょうも2つの国に電話をつなぎ、お話を聞きましょう。

「タクシー相乗りはあるのでしょうか」

アメリカ ニューヨーク 中村英雄 さん「ある 」

イタリア ローマ 村本幸枝さん「違法ではないが、まったくみかけない 」

アメリカ ニューヨーク 中村英雄さん

Q タクシー相乗り、最近はみられるんですね?

もともと市内では一般的ではなかったのですが、最近、スマホのアプリで相乗りができるようになってきました。

空港でもタクシーの相乗りはあまり見かけませんね。

1970年代~90年代は、空港の客待ちタクシーは悪質なドライバーが多く、過剰に料金を請求したり、遠回りしたりというトラブルが絶えませんでした

最近は、あまりそれも聞かなくなりました。イエローキャブは安全、という印象が強いです。

テクノロジーの進化の影響が大きいでしょうね。クレカ支払いも簡単かつ公正にできるし、車内に現金を持たなくてよくなってからドライバーたちの緊張度もかなり和らぎました。タクシーの質は向上しましたが、それでも警戒心の強いニューヨーカーのこと、なかなか相乗りの習慣は根付きません。

でも地方都市や郊外に行くとアメリカでもやってますよね、相乗り。

そうなんです。近距離通勤鉄道の駅前などには地元のタクシーが、電車の到着を見計らって待機していますが台数が少ないので、大抵、相乗り可能です。

自家用車の相乗りもやってませんでしたっけ?

はい。カープールといって、行先の同じ他人を開いたシートに乗せてあげる習慣は昔からあって、環境にも良いし、交通渋滞の緩和にも役立つ点から奨励されています。高速道でも、複数名が乗る車は専用レーンを走れる特権があるのでカープールで通勤しているアメリカ人はかなりいます(通勤人口の約9%)。

Q ところがNYだけは事情が別と?

A 他人を信用しない土地柄と過去におけるタクシートラブルの頻発が相乗りを阻んでいたのかもしれませんね。ところが、ここへきて相乗りが見直されてきたのです。これも社会のハイテク化と関係あるのですが、ウーバーとかリフトとか聞いたことありますよね?一般人が自家用車を使って個人的に運輸サービスを提供するライドシェア(この言葉が誤解を招くのですが、カープールとライドシェアは基本的に別物です)のアプリ。このおかげでNYのタクシー業界は大打撃を受け、一日平均利用客数が昨年の39万人から33万人にまで落ち込んでいるのです。今後の見通しではさらに下がる傾向にあります。実際、うちの娘の世代(21歳)などは、イエローキャブよりも乗り心地もサービスも良くてしかもやすいウーバーしか使いません。

そんな、キャブの危機に手を差しのばしたのが、カープールのアプリ会社。これは相乗り用の相方を見つけてくれるアプリで最近は市内でも盛んになってきました。その一部を使って、イエローキャブの相乗りができるようになったのです。エリアはマンハッタンの一部に限定。相乗りなので料金は60%。人数は3人限定。2グループまで。行先は同一。

●イタリア ローマ 村本幸枝さん

タクシー相乗りは合法だけれど、ほとんど相乗りはしないんですね?

イタリアで見知らぬ人とタクシーをシェアするケースは稀です。私も一度だけビジネスマン風の男性2名とタクシーのシェアをしたことがあります。そのときはローマから地方の空港に降りたのですが、乗り場1台もタクシーがなく、待ってもなかなか来ないので、仕方なく電話でタクシーを呼んだところ、同じくタクシー待ちしていた男性二人から会議に遅れそうだからシェアさせてほしいと頼まれ、気の毒に思って快諾したのですが、タクシーをシェアしたのは長年のイタリア生活で後にも先にもこのときだけです。ローマなどの主要都市の中心街は外国人旅行客のタクシー利用も多く、シェアするにも言葉の問題や文化(習慣)の違いもあるので気軽にシェアとはならないのだと思います。それから、女性の場合はシェアする相手に行き先(自宅や務め先など)をむやみに他人に知られたくない、という理由も大きいかと。イタリアは日本に比べて治安が悪いので住まいや自分の行動範囲、行動時間はなるべく他人に知られないようにします。そもそも、イタリアではタクシーが流すという習慣はなく、タクシー乗り場から乗車するか、電話で呼ぶのが通常です。また、イタリアのタクシーが流さない理由として、全て個人タクシーのため、高いガソリン代をむやみに使いたくという理由もあるのだと思います。ちなみにイタリアのガソリン代は1リットル1.60€前後、仮に1€=135円で換算すると、1リットル216円になります。