1本800円の食パンが、一日2万本以上売れています。

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乃が美の高級『生』食パン。

その人気の理由はどこにあるのか?そして、高級『生』食パンとは、どんなパンなのか?そのHidden Storyをお届けします。

お話をうかがったのは、大阪に本店がある【乃が美】の代表、阪上雄司さん。実は、この食パンの開発までパンを手がけたことはありませんでした。 

20180323hidden03.jpg   「私の祖父の代から実家がお米屋さんを22年間してきたんですが、数年前にそのお米屋さんがつぶれてしまったんです。私は別の仕事で大阪プロレスという団体を経営しているんですが、その仕事なかで老人ホームの慰問というのがあります。お年寄りは、我々が訪問して笑うこと、それと食べることを楽しみにされていたんですけど、おじいちゃんおばあちゃんの朝の食卓を見たら、食パンの耳がかたい、ということで残されている方がいたんです。食べることが好きなのに、耳がかたいから食べられない、というのを聞いたので、今まで手はだしてないけど興味のあったパン屋さんをしてみたらどうかなということにつながりました。」

耳がやわらかい食パンをつくろう。阪上雄司さんがそう心に決めたのは、今から6年ほど前のことでした。

「パンの修行は、知り合いをたずねて普通のパン屋さんで2年ほど勉強させてもらいました。今までは、焼き上がったら耳がかたくてしっかり立つ、というのがパンの概念でしたが、私がつくりたかったパンというのは、今までにない、焼きあがったた腰折れ寸前の、パンの業界では認められてなかった、やわらかいやわらかい耳。でも、耳がやわらかいと中が半焼けになってしまうので、そうではなくて、耳がやわらかいんだけど中まで火が通っているというパンをつくりたいという、これまででは考えられないレシピでやりたいと。これはもちろんパンをつくっていた職人さんでは引き受けてもらえなかったので、素人集団だからこそできたパンだと思います。」

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目指したのは、焼き上がったあと縦に立てたときに腰折れ寸前の状態になるような『耳がやわらかなパン』。

「商品ができるまでの2年間で一番苦労したのは、高級な食材を使いつつの食材同士の組み合わせでした。例えば、この食材とこの食材だと出来上がったときにこういう甘みややわらかさになる。これだけ生地を練れば、こういう食材を使えば、今までほど焼かなくてもしっかり火が通って美味しいパンができる。そういう微調整が2年ほど続きました。一番最初の出会いは小麦で、カナダ産の最高級の小麦を使うことにさせてもらいました。カナダの小麦の目の細かさは一見僕らの目ではわからないんですけど、圧倒的にザッと下まで落ちるような細かい細かい粒子の小麦だったんです。そして、もうひとつは、今までのパンの学校では習わなかったパンの焼き時間、焼き温度、そして粉の練り具合。この絶妙のタイミングがあって、日本で初めての『生』食パン発祥の【乃が美】ができたんだと思います。」

ポイントは、食パンの前に『生』がつくこと。『生』食パンとは、どんなパンなのでしょうか?

「生食パンっていうのは、生の食パンなんですか?とお客様から聞かれるんですけど、実はうちのほうでは生で食べても美味しいですけど、生食パンのいわれはそうではないんです。私がこのパンに出会った瞬間、耳までこんなにやわらかな食パンができた、となったんです。まるであのチョコレートと生チョコレート、キャラメルと生キャラメルのように、もう耳の口溶けが全然違っていたんです。耳がほんとにとけるように美味しく食べられたので、あ、これなら!と思って、"生食パン"とネットで調べたところ、一件も出てこなかったので、うちのほうが生食パンと商標登録をして、耳まで口溶けのいい食パンということで世の中に出させてもらったんです。」

2年かけて試作を繰り返した、パンづくり。まさに開店直前まで、レシピの調整がおこなわれました。

「とにかく少しの温度の設定、生地の練り時間なんていうのは、本来のパンづくりとまったく違うんです。それを1度違う、10分練り時間が違うというのを繰り返しやってきたんですけど、レシピが出来上がった本当の話をすると、明日お店がオープンする前日に、私の方から最後の最後に、食材とその辺の微調整をさせてもらって、前日の晩に生食パンが完成したという、そのくらいきわきわまで試行錯誤を繰り返した商品でした。」

2014年10月、大阪に、最初の【乃が美】がオープン。開店からしばらくして、阪上雄司さんにうれしい知らせが届きました。

「とにかくおじいちゃんおばあちゃんのウケがよかったんですね。来店された方の中には、『うちのおじいちゃん、ここのパンしか朝から食べてくれへんねん』と乳母車を押してきてくれたお客さんがいたりとか。あるいは、ちょうどオープンして3ヶ月くらいだったと思うんですけど、ある方が老人ホームのおじいちゃんおばあちゃんにプレゼントに持って行ったら、87歳くらいのおばあちゃんが『生きてるうちにこんな美味しい食パン食べられると思わなかった』と涙流して喜んでお手紙くれたよ、と見せてくれたんです。メモのようなやつだったんですけど覚えてますね。」 

今や全国に80店以上を展開するほどの大人気。でも、その始まりにあったのは、『おじいちゃんおばあちゃんにパンを楽しんでほしい』そんなささやかな願いでした。

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おじいちゃんおばあちゃんがおいしくパンが食べられるようにと開発された

 絶品生食パン【乃が美】。ぜひ一度ご賞味ください!

 公式ウェブサイトhttp://nogaminopan.com