今回は、肉がおいしく焼けることに、とことんこだわったフライパン。【おもいのフライパン】のHidden Story。

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この、肉がおいしく焼ける【おもいのフライパン】を開発したのは昭和13年に創業した、愛知県碧南市にある石川鋳造株式会社。これまで、水道の部品や自動車の部品などを手かげてきた会社です。現在の社長、4代目の石川鋼逸さんにフライパン開発のきっかけを教えていただきました。

「今からちょうど10年くらい前、弊社の自社製品のひとつに自動車関係の消耗品があるんですが、自動車がハイブリッドや電気自動車に移行してきた関係で、徐々に販売数が減ってきたんです。そこで、新たに自社製品をもう1本作ろうと思い、その中で鋳物の熱伝導のよさに目をつけたときに、調理器具を作ったらいいのではないかということで、フライパンを作ってみよう、ということになりました。フライパンは、一番料理を作る中で使用頻度が高く、また熱伝導のよさを最大限にいかせるのではないかなと思いました。」

熱伝導のよさを誇る『鉄』。そのよさを最大限にいかせる調理器具は、フライパンである。では、どんなフライパンを作るのか?

「同じようなフライパンが世の中にはたくさんあるんです。そこで弊社は、今までなかなかない、本当にこだわっている方とか、こんなフライパンがあったらいいなと思っている方の気持ちを考え、変わったフライパンを作ろうと思いました。みなさんが普段使われているフライパンはテフロン加工とかがされているフライパンが非常に多いものですから、まずは無塗装のフライパンを出そうと考えました。」

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テフロン加工などをしていない、無塗装のフライパンを作ろう。そして、もうひとつの重要なコンセプトが生まれます。

「ただ無塗装だけではあまりインパクトがありません。フライパンを作るにあたりいろんなお店にうかがっていろんな食材を食べている中で、お客さんが食事をしているときの笑顔とか家族団らんの風景を見たんですが、お肉料理を食べているときが一番笑顔があったり、家族で幸せそうにしているというのを感じました。あと、私が非常にお肉が大好きなので、お肉がおいしく焼けるフライパンというのは世の中にあるのかなと思って、一度パソコンで【肉がおいしく焼けるフライパン】と検索をしてみたら、引っかかってくる検索のキーワードがなかったんです。これだ!と思って、お肉がおいしく焼けるフライパンが作れたらいいなと思い、研究・開発が始まりました。」

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今から3年前、目標が決まりました。目指すのは『肉がおいしく焼けるフライパン』。開発がスタートしました。しかし、どうすれば肉がおいしく焼けるのか?開発チームはそのヒントを探しました。

お好み焼き屋さんとか鉄板焼き屋さんとかで、お好み焼きやお肉、ステーキを食べたりすると非常においしくいただけるんです。でも、同じようにA5等級の肉を買ってきて自宅のフライパンやホットプレートで焼いてみても、あんまりおいしくない。何が違うのかなと、いろんなお店に足を運んで、実際にどういう風に焼いているのか見せてもらったんですが、そこでフライパンでいえば焼き面の厚さ、お店で言えば鉄板の厚さ、これがお肉や食材のよさを最大限にいかすポイントだと気づいたんです。フライパンを作るにあたって焼き面の厚さを通常のフライパンより厚くすることで、さらにお肉が焼けないかなということで。」

 通常のフライパンより肉を焼く部分を分厚くすること。これが鍵でした。 問題は、どこまで厚くするのか、という点でした。

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「厚くすると確かにおいしくなるんです。ただ厚すぎると重くなってしまう。肉厚を1センチや2センチにしていくことによって重量が増えてしまうと、やっぱり料理をする人に不便がある。そのあたりの肉厚をいくつにするかは社内でも協議を重ねたのと試作を何回もさせていただいて、薄いのから厚いのまで1000は作りました。開発から約3年なので、極端なことをいうと、1日ないし2日に1枚作って試して、ここがだめなんで作り直して、また試して、という繰り返しでしたね。社員で食べながら『どうする?こうする?』って。開発グループがありましたので、基本的に開発グループで討議したうえで現場に持って行って、こう作ってくれ、と。それで作ったものをまた開発グループで食材を焼いて食べ、またどうするという会議を重ねておりました。」

たどりついた厚さは、5ミリ。

重さ1.2キロのフライパンが完成しました。

去年12月、【おもいのフライパン】発売開始。

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「鋳物っていうのは弱点として重いというところがあるので、逆に重いという言葉をつけることで『このフライパン、重いんですか?』と言われることも減るのではないかと。自分たちからこのフライパン重いよ、と伝えるのもネーミングでいいのではないかなと。それから使っていただくお客様が一生、子どもを育てるようにこのフライパンを想いを持って育てていただきたい、という想い。それと弊社の職人がみなさまのことを思い浮かべて1枚1枚大事に作っていくという想い。この3つのおもいが重なり合って、 【おもいのフライパン】という名前をつけさせていただきました。」

ほかのフライパンよりは、ちょっと重い。でも、その重さの理由はきっと、使う人の想いと、フライパンをつくる人の想いが鉄の上で重なるから。そして、その想いが届く先は、あたたかな食卓です。今日もどこかで、おいしい肉料理を囲む笑顔が。