美味しさいろいろ!岩手のサバ缶『Ca va?』の誕生物語。

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フランス語で、『元気?』を意味する、『Ça va?』。今回はその『Ça va?』がそのまま商品名になっている岩手のサバの缶詰誕生までのHidden Storyをお届けします。

お話をうかがったのは、岩手県産株式会社の長澤由美子さん。震災後に生まれたサバの缶詰、『Ça va?』。まずは、開発がスタートしたきっかけを教えていただきました。

こちらのサバ缶は、震災後2年目の春先に、【東の食の会】さんという、東京で、岩手もしくは東北を元気にしようという会ありまして、その東の食の会さんが、釜石の副市長さんとうちの会社に来てお話をしていただいたのが一番最初の出会いでした。震災復興だから買うわけじゃなくて、岩手県を代表するもので、長い年月をかけてでもちゃんと岩手県に産業をおこしていける、復興色をあまり出さない商品を出したいなと東の食の会さんで考えていただいて、そのイメージした缶詰を作れる缶詰屋さんが岩手缶詰さん、その販売する機能として、うちの会社のような産地問に声をかけていただきました。産地問屋って各県であまりないので珍しいんですが、岩手県にはそういう仕組みがあるんです。」

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岩手の名産品を扱う、いわゆる産地問屋としての機能を持つ岩手県産株式会社。新しいサバの缶詰を作りませんか?という打診に対してすぐにはイエスと答えられませんでした。

実は、うちの会社はお菓子を中心として、ゆべしとかかもめ玉子とかの販売を主としていたので、缶詰の販売はあまり得意分野ではなかった、というのがそのときの実情でした。缶詰というのは一回に作る量が何万個なので、リスクとしてドーンとのっかってしまうんです。一日に作るのが何百個ならなんとか回せばいいわけですが、一回にドーンとくると何千万のリスクになるので、『缶詰をプライベートブランドとして、販売責任を負ってやりませんか?』と言われたときに、得意分野じゃない缶詰を売りさばくことができるんだろうか?というのが最初に頭をよぎりました。」

リスクは大きいかもしれない。得意分野ではないかもしれない。しかし、、、、

「私はそのとき開発を担当していたんですけど、この商品を食べたときすごく美味しくて、『うわ、売りたい!』と思ったんです。サバとオリーブオイルの組み合わせってそのあたりには全然なくて、なんでサバがこんなに美味しく食べられるの?という、びっくりと感動が一番最初にあって。実際、それを販売しようと決断したのはその時の上層部でしたが、できるかできないかというよりも、震災後、岩手県のいろんなメーカーさんが頑張っているのも見てますし、岩手県の商品を震災に負けずどんどん外に発信しなければならないという責任はうちの会社もあるでしょうし、もし自分たちの力不足で売れなくても、それは背負ってやりましょうよと、そういう話があって。じゃあやりましょう、となりました。」

できるかできないかではなく、震災の被害を受けた岩手県の商品を世に出すのは、自分たちの責任である。2013年9月、黄色のパッケージに大きな文字で『Ça va?』。最初のサバ缶の発売がスタートしました。   

現在は、サバをオリーブオイルに漬けた黄色の『Ça va?』のほか、緑と赤の3色が販売されています。難しかったのは、緑の缶詰。

緑にあう食材で、サバと何を組み合わせて、緑のさわやかさを出していくか。缶詰って実は、できているものをきれいに組み合わせてフタをして商品にするものではなくて、缶の中で味付けされて煮て温度かけて完成するものなんです。だから、こういう色で来るだろうと思ってフタをあけると、とんでもない色が出てきたり、とんでもない味になっていたり。緑というのがすごく難しくて、何を組み合わせればきれいな緑になるのかなと。あんまり合成された色を入れるのもしたくないということで、いろんな食材を試したのが、この緑なんです。なんかもう、あけてみるとため息ばかりの日々が続きまして、緑はダメかなと思ったときもありました。あきらめかけたところで、最後の最後に、レモンを入れることによって、サバのくさみとか色のきれいさとかがすっと落ち着いたんです。それでレモンバジル味、というところにたどりつきました。」

去年の3月8日、第3弾となる パプリカチリソース味の赤い『Ça va?』が登場。これにあわせて、3月8日が【サヴァ缶の日】と認定されました。

20180309hidden02.jpg取材にお答えいただいた、岩手県産株式会社の長澤由美子さん。最後に、こんなことを話してくれました。

商品が売れました、売り上げが伸びました。この缶詰はそれだけで終わらせちゃいけないと思っているんです。3月8日がサヴァ缶の日で、そして、そのあと3.11があります。もちろん美味しく召し上がっていただきたいですし、いろんな料理に使っていただければそれで本当に満足なんですけど、その後ろには、3.11で、岩手県が頑張っていかなきゃいけない、いただいた恩をかえせるように、元気を出していなかきゃいけないという想いがあって。そういう気持ちを他の商品も含めながら一緒に発信していきたい商品なので、ただ単に売り上げが伸びた、だけですましてはいけない。今度はここから自分たちがこのサヴァ缶と他の商品をどういう風に岩手県と結びつけて、元気のないところを元気にしていったり、元気のあるところをさらに元気していけるかが腕の見せ所かなと思って、智恵をしぼっているところです。」

元気のないところを元気に。元気のあるところは さらに元気に。この商品をきっかけに、岩手県の素晴らしさをもっと発信していきたい。缶詰が得意ではなかった会社が、思い切って開発したサバの缶詰、『Ça va?』。小さな缶詰のなかには、大きな勇気が詰まっています。