今回は、日本で唯一の広告ミュージアム、汐留にある【アドミュージアム東京】のHidden Story。2002年にオープンしたミュージアムが、昨年、大規模なリニューアルをおこないました。

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「やはり15年も経ちますと、同じものを見せるにも伝え方が時代に即していない。今はデジタルということで、機材もあっという間に古くなってしまいますので、思い切って抜本的なリニューアルをおこないました。」

取材にお答えいただいたのは【アドミュージアム東京】の副館長、中村優子さん。開館から15年を経て実施されたリニューアル。2分間ほどの映像と、ナレーションでそれぞれの時代の広告を分かりやすく解説します。入ってすぐ右から、江戸時代の広告資料です。

「私たちは江戸が一番面白いと思っているんです。先輩の解説員がアドバタイジングにかけて"エドバタイジング"と言っていまして、例えば、プロダクトプレイスメントといって、映画のなかやテレビ番組のなかで商品をさりげなく広告するじゃないですか。その手法はすでに江戸時代にあったんです。歌舞伎が一番のエンターテイメントでしたが、その頃から役者さんを使って、はっぴを着せたりものを言わせたり、そういうものがすでにあったんです。」

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アドバタイジングではなく、エドバタイジング。こんな資料も展示されています。

「越後屋さんのもので引き札の3連ばりなんですが、そのときのきれいな人に、今年この着物の柄が流行りますよ、という形で着物を着せて、越後屋さんの本店と支店の間に立たせる。そして、向こうに富士山が見えて、つまり越後屋は日本一だと言っているんです。これは今のファッション雑誌と同じですよね。今ある手法はすべて江戸時代にはあったんです。」

デジタルテーブルという展示では、テーブルのように置かれた画面で、1950年代から現在までのテレビCM、ポスターなどを自由に閲覧できます。明石家さんまさんの『幸せって何だっけ』という曲を使ったキッコーマンのCM。山下達郎さん『クリスマスイブ』が印象的な、JR東海 シンデレラ・エクスプレス。日本の名作CMのほか、世界の国々のCMも見ることができます。中には、こんな内容のCMも。

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「世界に課題がたくさんあるじゃないですか。環境とか、教育とか、それを広告のコミュニケーションの手法やアイディアで解決しようという流れは前々からあるんです。これもそのひとつで、病気の治療で髪が抜けてしまった子どものために、みんなが知っているいろんなキャラクターが一緒に髪を切ってみました、という内容です。恥ずかしいことじゃないよ、っていう。結構シリアスなものもあるんですが、広告コミュニケーションのよさは深刻な内容なんだけど、明るくアプローチできるところだと思います。」

【アドミュージアム東京】、副館長の中村優子さんは、こんなことも話してくれました。

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「私たちが扱っているものは歴史的に有名な国宝ではなくて、江戸時代から21世紀までのさまざまな広告資料ですが、江戸時代とか大正時代、昭和の広告跳躍期の共通点は、一般の方々、江戸時代でいえば庶民文化が盛んだった、元気だったということなんです。広告コミュニケーションが元気なときって、平和で文化が豊かであった、というのが時代を通してみると分かるんです。メディアの手法によって伝え方は変わってくるし、広告としての役割は終わっても、人間の持っている普遍的な感情というか、どんなに人間が進化しても変わらないものがそこには見えてくるんですよね。」

広告が元気なときは、文化が豊かで 平和な世の中である。そして、一方、世の中の課題へのメッセージを発信するのも 広告の力。歴史をこえ、国をこえ、広告が伝えてきたこと、伝えようとしていることに触れられる場所。日本で唯一の広告ミュージアム、【アドミュージアム東京】。