グレーの表紙の左上に、黒の文字で【月刊ドライブイン】。最新号、vol.8で取り上げられているのは、静岡県富士宮市の『ドライブインもちや』と 栃木県益子町の『大川戸ドライブイン』。毎月2軒、ドライブインが紹介されています。

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「ドライブインというのはまさにその名前の通り、ドライブの途中に立ち寄るお店です。高速道路だとサービスエリアやパーキングエリアと呼ばれますが、一般道だとドライブインという看板を掲げているお店が結構あって、レストランであることが多いです。車が普及する前の時代は車がないので、そもそもお店に駐車場が必要ありませんでした。でも1960年代になって車が普及し始めたときに、自動車・トラック・観光バスが止まれるようなお店が必要になって、それで日本全国にドライブインというお店がぽこぽこできたということだと思います。」

そう語るのは、取材・撮影・文章のすべてを手がけ、【月刊ドライブイン】を発行する橋本倫史さん。そもそも、なぜ、ドライブインを紹介するリトルプレスを作ろうと思ったのでしょうか?

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「あるときドライブインがあるとうことにハッと気づいたときがあったんです。それで2011年に全国のドライブインをめぐる旅をしようと思ったことがあったんですけど、そのときに全国にドライブインって残っているなと思って、いつかこれを記録に残したいなと思ったんです。そしてそのまま時が過ぎて、2017年のお正月に、今年の目標何にしようかなと思ったときに、そろそろドライブインのことを記録にしたいなと思って、2011年に行った店をもう一度検索したんです。そうすると結構な数のお店がもう閉店してしまっていて、これは今のうちに記録しないとドライブインがなくなってしまうと思って、この【月刊ドライブイン】を創刊しました。」

vol.6で紹介されている1軒は、福島県の二本松バイパスドライブイン。記事のタイトルは 『トラック野郎のオアシス』。

「二本松バイパスドライブインっていうお店が、すごくトラックの運転手さんに愛されているんです。24時間営業で、さらにお風呂まである。そこの看板メニューがバイパススタミナ定食というメニューで、これはホルモンと野菜が炒めてあって、その炒め物自体も美味しいですし、しかもご飯がおかわり自由ということですごくドライバーの方に愛されています。お店のお母さんによると、『この店でスタミナ炒めを食べたいからよそで食べないでここまで我慢して走ってきたんだ』と言うドライバーの方もいらっしゃるようです。」

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24時間営業で、お風呂まであるドライブイン。橋本さんは朝から長時間このドライブインに滞在し、取材を続けました。トラックを止め、運転手さんがお店にやってきます。

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「やっぱり二本松バイパスドライブインにいらっしゃったドライバーの方たちの姿は印象に残っていて、みなさんお酒を飲むんです。お昼すぎくらいに入ってこられて、お酒を一杯二杯くらい召し上がって、お風呂にはいり、『じゃあ、お母さん寝るわ』って駐車場のトラックに戻って眠りにつく。僕も夕方くらいに一度ホテルに戻って翌日早起きをして、朝5時とかにそのドライブインに戻ってみたんですけど、5時の時点でもう1台もトラックは残ってないんです。だから夕方から寝て、明け方に目を覚まして、道がすいているうちに次の目的地に向かって走っていく、という風に過ごされていると思うんですけど、その方たちの姿は印象的でした。」

【月刊ドライブイン】

福島県の二本松バイパスドライブインのページにはこんな記述があります。

『ドライブインの歴史は、自動車とともにある。モータリゼーションが進展するにつれ、日本全国で問題が生じ始めた。慢性的な渋滞を解消するべく、都市を迂回するバイパス道路が建設され始めるのもこの時代だ。二本松バイパスは 1970年12月に完成した』

その翌年にオープンしたのが、二本松バイパスドライブインです。

「お話をうかがうと、一軒一軒、お店ができた理由が歴史とつながっているなと思うことがあるんです。ここに観光バスが行き交うようになったとか、新しい道路ができたとか、産業が移り変わってこういう風になったとか。それぞれ町や地域の歴史とお店が密接につながっていて、しかも多くは個人でやってらっしゃるお店ですから、お店の方の人生とそういった歴史が密接に結びついているというのが、こうやって取材を続けていて、一番面白いところかもしれないです。」

時代の流れと、お店の方の人生。さらに、ドライブインを利用するお客さん、例えば、トラックの運転手さんの人生が交差します。

「消えていってしまうのが嫌だなというのが一番強いと思います。今ならまだ、ここにどんな時間があったんですか?という話を聞くことができるわけですよね。それが聞けるうちに聞いておかない手はないだろう、というのが、この月刊ドライブインを作っている理由だと思います。」

自動車の普及とともに、時代を過ごしたドライブイン。それぞれの人生の物語が、そこにはありました。

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