今回注目するのは、スマートロック【Akerun】。まず、スマートロックとはどんなものなのか？株式会社 フォトシンス、代表取締役社長の河瀬航大さんに教えていただきました。
「スマートロックとはその名の通り、スマートフォンで鍵を開けることができる、鍵がネットにつながった電気錠のことを言います。扉の内側に、横にするとカギが閉まり、縦にすると鍵が開く、という鍵がついていると思うんですが、これをカギの業界ではサムターンと言います。このサムターンに、私たちが開発した【Akerun】というプロダクトを強力な両面テープで貼り付け、扉の外側からBluetoothでつないでスマートフォンで操作すると、【Akerun】がサムターンを縦と横に回してくれるという、そんなプロダクトです。」
スマートフォンによって鍵を開けることができる。しかも、今使っているその扉にそのまま取り付けることができるのがスマートロック【Akerun】です。河瀬さんはなぜ、こうしたプロダクトを開発しようと考えたのでしょうか？
「２０１４年の頭に私を中心とした友人同士で飲んでいて、その中で、鍵をなくしてしまった人や家族や恋人に鍵を受け渡すのがすごく面倒くさい、というような人がいたんです。それなら今の時代、物理的な鍵じゃなくて、いつも持ってるスマートフォンで鍵が開いたらかっこよくない？という軽いノリから始まりました。ほんとにただ鍵をなくしたことで、『確かに鍵って結構、不便だよね。あるあるの問題だよね。』ということで盛り上がったのがきっかけでした。」
アイディアは『会議室』ではなく、『飲み会の席』で生まれました。そして、当時はまだ、起業しようという考えもありませんでした。
「もともとその飲み会自体は４人で、その中にはものづくりができるパナソニック出身のメンバーがいたり、通信に詳しいソフトバンクのメンバーがいたり、あとはアプリが開発できるエンジニアがいたり。このメンバーだったらもしかしたらできるかもしれないねと。実は最初から起業しようと思っていたわけではなく、自分たちの家の鍵がスマートフォンで開いたらかっこいいよね、ということで、秋葉原で部品を買って、３Dプリンターも当時から１０万円くらいで買えたので、３Dプリンターを買って、簡単な試作品を作って。趣味の一環、週末プロジェクトとしてやっていました。もともとは扉のなかにBluetoothと通信できるようなモジュールを突っ込んでしまうだとか、内蔵型のスマートロックを思いついたんですが、あくまで自分たちの家でやりたかったので、だったらサムターンにかぶせればいいんじゃないの？と、そういうアイディアを出しました。全員、賃貸に住んでいたので、自分たちの家でやりたいなら後付けだよね、とそんな感じでしたね。」
試作品は、３ヶ月ほどで完成。そして、ここでいきなりメディアに掲載されます。
「実は、当時はスマートロックという言葉は日本で知られておらず、さらに僕らの会社名もなかったタイミングだったので、新聞に大きく『スマートフォンで鍵が開く』というような見出しで取り上げていただきました。そこから自分たちの家だけじゃなくて、不動産の仲介で使いたい、ホテルや民泊で使いたい、福祉施設で使いたいと、いろんなお問い合わせをいただきました。それなら自分たちの家だけじゃなくて、しっかり量産して世の中に価値を提供したい、と。メディアに取り上げていただいたその日だけでも、１００を越える問い合わせとか、出資の話とか、事業提携の話だとか、結構これは大変なことになったなということで、メディアに掲載されたのが２０１４年７月２７日だったんですが、9月１日には創業メンバー６名で起業しました。」
開発者の想像をこえ、さまざまな場面で活用されているスマートロック【Akerun】。福祉施設でも使われています。
「例えば、誰がいつ出入りしたかという情報が取れるんです。だから、自分の歳をとった両親がその施設に帰ってきているのかどうかを遠隔で確認できるので、見守りサービスとしても活用されています。
鍵にまつわることで困っているシチュエーションというのを、鍵を落として不便とか、管理するのが大変くらいで考えていたんですけど、僕らが想定している以上に、入退出管理が取りたいとか、コワーキングスペースで使いたいとか、仮眠室で使いたいとか、いろんなニーズがありまして、鍵っていろんな場面で困っている方が多いんだなというのも感じています。」
飲み会の席で、４人の若者が話したアイディアの種が実を結び、スマートロック【Akerun】が 完成しました。世の中をもっと便利にする『鍵』は、ワクワクする未来を想像する、自由な発想のなかにあったのです。
◯スマートロック【Akerun】は、自分の家の鍵に貼り付けるだけ！ 詳しくは公式ウェブサイトをご確認ください。