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ホームページを見ると、うすいピンクにオレンジ、チョコレートのような色で手のひらにのるくらいの立方体。まるでスイーツのようなキューブがずらりと並びます。これ、実は石鹸なのです。製造・販売するのは、宮城県の女川町にある『三陸石鹸工房 KURIYA』。代表の厨勝義さんにお話をうかがいました。まずは、このお店を始めるきっかけについて。

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石鹸工房を始めようと思ったきっかけは、たまたま仮設住宅で石鹸作りのワークショップをされているのを見たときに、お母さん達の盛り上がりがすごかったからです。いろいろ調べてみると地方の特産を活かした石鹸というがありまして、例えば、北海道のがごめ昆布とか、石川県にはなまこを使ったものがあったり。なので、最初は地元のワカメとか、三陸は海藻が有名なので、それを石鹸にできないかと思ったのがきっかけでした。」

2011年、東日本大震災が発生した年、厨勝義さんは、東京で翻訳の仕事をされていました。物資を持って東北をたずねたことをきっかけに7月、宮城県の南三陸町に移住。その後、石鹸づくりのワークショップに出会ったのです。

「まず、どうやって作るかも知らない状態からスタートしちゃったので、石鹸作りの教室に通って作り方を習いました。そのときに、アカモクという海藻を粉にしたものを持って行って、『これで作れませんか?』と相談したのが最初でしたね。そのできた石けんを、先生がその教室に通われている方に配っちゃったんですけど、すごく好評だったので、結構いけるんじゃないかなという実感が少しわいてきまして。作り方がわかったものの場所がなかったので、次は場所を探して、山裾あたりにある何年も人が住んでなかったような家を借りて、そこの一室で始めました。津波で8割以上の建物がやられている場所なので、最初は場所探しがすごく難航しました。」

まさに手探り状態でのスタート。さまざまな素材を使い、試作が重ねられました。

「そのころはまず素材として海藻とか、町内に養蚕をやっている方がいたのでシルク。あとハチミツは近くで養蜂をやっている方のところからだったり、近くでとれるものでとにかく試作してみる感じでした。石鹸は大部分、油なんです。オリーブオイルとかパームオイルとかの植物油が主原料になります。それに水酸化ナトリウム、いわゆる苛性ソーダをまぜて、真っ白の石鹸はできるので、そこにワカメやハチミツを入れて機能をもたせて、あとは色づけをしたり。僕たちの場合は、そこにアロマオイルをいれて香りもつけています。ある程度、時間がたったときにいい香りになるようにしたかったのですが、それは作ってみてしばらくたたないと分からないので、何パターンも作ってみて繰り返したという感じです。」

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2015年10月、女川町の仮設の商店街に店舗をオープン。さらにその翌年の冬、女川の駅前にあるシーパルピア女川のなかに、『三陸石鹸工房 KURIYA』が誕生しました。こちらの石鹸の大きなポイントは、地元の素材を使っていることです。

「例えば、南三陸町志津川湾のワカメですね。製粉をお願いしているところがあるんですけど、そこが地産の素材しか扱わない業者さんなので、湾内でとれた素材のみです。南三陸町で山内鮮魚店さんというところがありまして、そちらがこだわりでほとんど目の前の市場にあがるもので製品を作ってしまうところなんです。とれてる場所とか、とっている漁師さんも分かりますし、何より加工している方のモットーとか、人も知っているので安心して使わせてもらっています。あと、仙台のすぐ近くの秋湯温泉というところに、今のところ宮城県でひとつだけ、秋湯ワイナリーというところがありまして、そこでワインをいただいてきてワインの石鹸も作っています。」

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『三陸石鹸工房 KURIYA』。代表の厨勝義さんに最後にうかがいました。この石鹸を通して伝えたいのは、どんなことですか?

「いま宮城県内の素材が7割ほどになっているんですけど、地産のものを使うということで、その土地の豊かさみたいなものも間接的にですが伝えられたらいいなと思っています。僕自身、三陸のほうに移住しようと思ったのも、豊かな土地だなという印象があったからです。丁寧に作られている作物、海の海藻だったり、山のほうにいけば養蚕をやってらっしゃったり、無農薬有機栽培でササニシキを守っている方がいたり、すごく丁寧な生産者さんにたくさん出会って。そういったものを活かす意味でも石鹸はのせやすいキャンバスなので、石鹸作りを続けているという感じです。」

土地の豊かさに魅せられ、移住してきた厨さん。その豊かさをのせるキャンバスとして、石鹸を作る日々。色とりどりの石鹸には、三陸の自然からの贈り物が詰まっています。地元のものを使った、かわいい石鹸。ぜひ、一度手に取ってみてはいかがでしょうか?

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三陸石鹸工房 KURIYA』の詳しい情報は、公式ウェブサイトをご確認ください。