注文が殺到、ただいま3ヶ月待ちとなっているイヤホン『Just ear』。この究極のイヤホンについて語るには、35年以上におよぶ、ソニーのヘッドホン・イヤホンの開発の歴史をひもとかくてはなりません。Just earは、購入する人の耳の型をとり耳にぴったり装着できる形がつくられますが、実は、ソニーではかなり前からこの耳型の研究がおこなわれてきました。

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耳型とは何かというところからなんですが、ソニーでは耳の複製をつくって会社のなかで集めて保管しようということをやっているんです。それを集める役割を『耳型職人』という人間がやっています。実際にやる作業としては、耳を上にして机に伏せた状態で枠をはめ、そこに時間でかたまるやわらかい材料を流し込んで、耳の反対側をつくります。それを取り出して、そこに耳型の材料となるものを流し込んでかためる。要するに、その人の耳の複製を保管しておく、というものです。」

耳型職人。ソニーには、そう呼ばれる人が存在します。

これをソニーでやり始めたのが1979年くらい。みなさんが一般的にお使いになっているイヤホンというもの、あれは実はソニーが開発したものなんです。耳のなかにおさまるヘッドホンということで、当時、ヘッドホンもある程度大きな振動板のものが主流だったのを、できるだけ耳のなかにおさまるところまで小さくしようとして作ったのが、一番最初のインイヤーレシーバー。これをどういうサイズでどういう形状にすれば耳におさまるかという検討を始めるために、当時の設計者が、社内の人間の耳の型をとってそこから寸法を割り出したのが最初です。このときに、耳の型をとって保管するというのが、ヘッドホン・イヤホンの設計においてすごく有益だというのが分かったので、人を育てて、常に専門の人間がいる状態をつくるために、耳型職人という名前をつけて、1979年に始めた方が初代。いま6代目の人間が耳型職人をやっているんですが、私はその5代目をやっていました。」

1979年からきょうに至るまで、耳型職人が集めた『耳型』がソニーのヘッドホン、イヤホンづくりにいかされてきました。

基本的には設計に活用するのが一番の目的ですので、ある程度、取り出しやすいところに特徴的な耳の方のものは保管しておいてあります。いろんな設計者が耳型職人のところに来ては、『こういう耳を探しているんですけど、ありますか?』『じゃあ、この耳でどうでしょう?』みたいな。

最近だと耳のなかにイヤーピースを介して直接挿入するタイプのインイヤー型のヘッドホンが増えてきているので、外耳道の向きがどうなっているのかとか、大きさはどうなのかとか、だんだん見るポイントが深くなってきています。」

こうした開発の歴史を経て登場したのが究極のイヤホン『Just ear』です。

音響面と装着面と両方あるなと思っているんですが、まず音に関するところでいうと、通常、そのカスタムのイヤホンのカテゴリーでは使われてないような、大きな口径の振動板のドライバーユニットを使っています。それを実際に製品として見せていくことは、デザイン上のアイコンにもなるんですね。このJust earは販売価格として非常に高いものですので、イヤホンとしての音質と装着性という使い心地の面もありますが、見た目も含めた質感は大事にして材料を選びました。耳のなかに入る部分は、補聴器などでも使われている医療用の材料を使っているんです。耳に密着してある程度長時間使うものなので、耳に対してアレルギーなどがない材料を使いたいなというのがあって。」

Just earを購入したい、と思った人はまず、『東京ヒアリングケアセンター 青山店』を訪ねることになります。まずはここで、耳型をとってもらうのです。   

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とった耳の型をソニーのほうが受け取って、そこから製造が始まります。完成したらまた東京ヒアリングケアセンターに戻して、お客さまに郵送したり、直接お客さまがお引き取りに見えたりしてお渡しするんですが、これはJust earのなかのXJ-MH2というモデルのプロセスになります。MH2というのは、あらかじめ決められた『モニターサウンド』『リスニングサウンド』『クラブサウンド』という3種類音質があって、好みとか用途によって、その中から選んでいただくものになります。もう1つXJ-MH1というものがありまして、これは個別に『音』もカスタマイズするというサービスになっています。エンジニア自らがお客さまとやりとりしながら、個別に音をカスタマイズする、というのは世界初なんです。」

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エンジニアの松尾伴大さんが自らお客さまと会話をして、『音』をカスタマイズ。これは、世界初の試みです。

最近は、特定のミュージシャンとかアーティストのファンの方が、そのアーティストの音楽を聴くことにフォーカスして、そういった音づくりをしてほしい、というお客さまが増えていますね。そのアーティストの楽曲を一番いい状態で聴く、というのが、ファンとして一番いい姿だろうと。

僕が思っていることとしては、『音楽』というコンテンツがとにかく力を持っている。その音楽を楽しむためにオーディオ機器が残ってきていて、ライフスタイルが変わるなかで、そのオーディオ機器がより、パーソナルなものになってきたなというのがあります。そういう意味では、すごく重要な役割を担っているんだなというプレッシャーを感じながらやってますね。」

音楽を持ち歩く時代。そんな『今』のライフスタイルに寄り添う究極のイヤホンが 誕生しました。

Just now。 Just ear。 

1度聴いたら、欲しくなる!Just earについて詳しくは、公式ウェブサイトをご確認ください。