今回ご紹介したのは、六本木の東京ミッドタウンにある『21_21 DESIGN SIGHT』です。

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「21_21 DESIGN SIGHTは、2007年に東京ミッドタウンの誕生とともに生まれました。スタートは少しさかのぼるんですけど、1980年代、設立者の三宅一生が周囲の人たちと、『日本にデザイン・ミュージアムをつくろう』と、その重要性について、アーティストのイサムノグチさん、グラフィックデザイナーの田中一光さん、建築家の安藤忠雄さん、デザイナーの倉俣史朗さんをはじめとする方々と語りあっていたことが経緯の大もとにあります。その後も一貫して三宅はその想いを持ち続けておりまして、2003年に[つくろうデザイン・ミュージアム]という寄稿を朝日新聞に致しましたところ、多くの反響と賛同を得まして、計画が進んでいた東京ミッドタウンに開館する運びとなりました。」

お話をうかがったのは、現在、"アスリート展"を開催中の『21_21 DESIGN SIGHT』、 アソシエイト・ディレクターの川上典李子さんです。川上さんがアソシエイト・ディレクター、ということは、ディレクターと呼ばれる立場の方がいらっしゃいます。

それが、『21_21 DESIGN SIGHT』の大きな特徴なのです。

「21の独自性というのがいくつかありまして、『デザイン・ミュージアムをつくろう』という問いかけから、実際にはアーカイヴを持つタイプのデザイン・ミュージアムではないんです。ここは、"デザインとは何か"ということをみなさんと一緒に考える場所としてオープンしましたが、まず第一線で活躍されているデザイナーがディレクターであると。このことは極めてユニークだと思います。しかも、世界的に活躍されているジャンルの違う3名。その3名を中心に、いま何が必要かということを率直に意見交換して題材を決め、まさにそのとき何が大事かというのをつくっていく。ちょっと他にはなかなかない活動が継続してきたと思います。」

ディレクターは、三宅一生さん、佐藤卓さん、深澤直人さん。この世界的に活躍する3人、そして、川上典李子さんが意見交換をしながら『21_21 DESIGN SIGHT』をつくってきたのです。


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「私たちの中には展覧会のプロが中にいたわけではないんです。もちろん、三宅さん、佐藤さん、深澤さん、それぞれ展覧会をなさったり、私も展覧会に関わった機会はありますが、デザインの現場に関わる人間として私も参加させていただいて、開館の2年近く前から、何をしようかということをディスカッションし始めました。おもしろいことがいろいろ動き出すのでドキドキするんですけど、これは今も毎月、定例会議で続けています。深澤さんや佐藤さんともよく話しますが、これほど貴重な時間はないねと。ざっくばらんに何がいま大切で、どう考えていったらいいのか。私たちだけではなく、多くの方が関わってくださる、というのが大切な場所なので、どういう方に関わっていただこうかと。毎月毎月、会議を重ねています。」

スケジュールをあわせるのが困難なメンバーが顔をあわせ、今も毎月、3時間から4時間の会議をひらいています。

「10年間あっという間でした。毎回、来年・再来年の企画で何をキーワードにするかを意見交換して。あと、これも21らしいと思うんですが、そのときにほんとに大事なものをディスカッションするので、ときどき企画が前後するんです。震災が起きたときは、『私たちができることをすぐやろう』ということで"東北の底力"という展覧会を7月に開催しました。そういう風に今やるべきこと、というような気持ちでいつも動いています。アスリートもそういう経緯であがってきたキーワードだったんです。あらためて人間の力だったり、何か目標に向かって進んでいくことだったり、そういうデザインのチャレンジというか、それをどういう言葉で考えていけるだろうかと。そういう議論のなかで、アスリートという言葉があがり、みんなで『それだ!』と言った瞬間がありました。わりと、『それだ』と思ったときにキーワードが決まることが多いです。」

現在、開催されているのは、アスリート展。

こちらを、『21_21 DESIGN SIGHT』の岡田祥太朗さんにご紹介いただきました。

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暗い部屋のなか、壁にうつしだされた白い人の影が

例えば、走り高跳びの、

例えば、ハードル走の、

例えば、マラソンの、世界記録を実現していきます。 

音楽にあわせて、走りすぎるシルエット。

世界記録のスピード高さを感じることができるのです。

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例えば、各競技の世界記録が表示されながらシルエットが描かれているんですけど、世界記録のダイナミズムをメディアでは見ることができなかったり、実際の競技者のかたわらに人々がいるわけではないので、それを自分ごととして認視することができるといいのでは、と考えました。画面の四方にモーショングラフィックで人の形をしたアイコンがいて、世界記録のダイナミズムを体現する、そういうのを間近に見ることができる作品ですね。」

最後に、開館準備の段階からずっと 『21_21 DESIGN SIGHT』に関わり続ける川上典李子さんにうかがいました。デザインの力、どんなことを感じていますか? 

「三宅さん、佐藤さん、深澤さんと、デザインというのは、人間が発揮できる大きな力だ"ということをよくお話します。人間の歴史の中で発揮してきた知恵であったり工夫であったり想像の力。しかも、人が他の誰かのために発揮できる力です。そのポジティブなデザインの力や魅力をより多くの人と共有できればというのが、この21の大事なところにあります。今、そしてこれからデザインに何ができるのか、というのを考える、本当に貴重な時間を過ごさせていただいています。そのことを考えることや、実際にここは展覧会の場所でもあるので、体感していただくことで、体全身でそのことを感じていただけるんじゃないかなと思います。さらに、そこで感じていただいたことや、みなさんの声をお寄せいただけるのが21のおもしろいところなので、ぜひみなさんの声もお聞きしたいなと思います。」

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デザインとは、人が、他の誰かのために発揮できる力である。そして、そのデザインがいまできるのは、どんなことなのか?ディスカッションを重ね、展覧会という形で提示して、そこを訪れる人々が何かを感じとる。そんなチャレンジを積み重ねた10年でした。

現在開催中のアスリート展は6月4日(日)までの開催です。お早めにどうぞ!

  • 21_21 DESIGN SIGHT
  • 住所:東京都港区赤坂9―7―6東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
  • 電話番号:03-3475-2121
  • アクセス:都営大江戸線『六本木駅』、東京メトロ日比谷線『六本木駅』、東京メトロ千代田線『乃木坂駅』より 徒歩5分
  • 開館時間:午前10時~午後7時(入館時間は午後6時30分まで)
  • 休館日:火曜日、年末年始
  • 入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料