1963年にデビューした本格国産ジーンズの第一号と言われるブランド「CANTON」。

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大石貿易という会社が、1899年創業のデニムミル、CANTON COTTON MILLSというアメリカ、ジョージア州アトランタの北にある小さな町で創業したデニムメーカーからデニムの生地を輸入してジーパンを製造。当時、大人気となりましたが、その5年後に消滅しました。時は流れ、2003年。豊島株式会社が"CANTON"の商標権を継承。数年後、"CANTON"を復活させるべく、満を持してチームが結成されました。そのリーダーが、今回お話を伺った佐藤健二さん。

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「私は学生時代にジーパン屋でバイトしてまして、ジーンズが大好きなんです。ジーパン屋でバイトして稼いだお金をほとんど古着に費やしていて、そのときに、鎌倉にある古着屋に行ってみたんですね。そこにCANTONっていうジーパンがあって、かっこよかったので2万くらいで購入して、履いていました。その後、豊島に入ったらCANTONをやっている大石貿易とうちが付き合ってると。弊社は繊維専門商社なので、自分の会社でブランドを立ち上げる、リリースするってことはなかなか今までなくて。そういう意味ではすごく不安も大きかったんですが、チャンスだし、自分も好きなブランドなので、ここはやってみようということで。」

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ジーンズをこよなく愛する男、佐藤健二さんを中心に'伝説'を 現代によみがえらせるプロジェクトが動き出しました。

「一番時間がかかったのは、キャントン・オリジナル・ファブリックを作ること。簡単に生地ってできないんですよ。そこで何ヶ月も納得いくまで、自分たちが理想とするデニムを作るんですけど、これは糸の番手・より・どういった原綿をつかうのか。綿・糸・染め・織り・仕上げみたいな。かなり微妙なんです。特に色ですね。デニムといってもいろんな色がありますよね。どんな色落ちを目指すかという部分でも、これはかなり難しいというか、履いていってかっこよくなるかどうかです。色落ちやあたり感だったり、風合いもそうです。実際にプロトタイプは、自分で履いたり、うちの部下とか仲いい人に履いてもらって、どうなるかっていう、そういうのも検証しましたね。」

徹底的にこだわった生地。そして、縫製も通常ではあり得ない方法がとられています。 

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縫製も、通常はやらないような仕様です。特に現行のモデルは、生地や縫製もですけど、運針もかなり凝ってます。運針というのは1インチあたり何本、針を打つかっていうことなんですけど、これは普通より多いです。ただ、すべて多いわけじゃなく、パーツによって変えています。番手も色も変え、運針も変えていますし、縫い糸は綿糸。綿糸っていうのは強度的には弱いですが、色が落ちるんです。通常のデニムはポリエステルのスパン糸が多いんですけど、これは耐久性はありますが色は落ちません。なので、味が出ないんですよね。CANTONは縫製糸まで色が落ちるという。」

2008年、CANTON OVERALLSという名前で、伝説のジーンズが復活。さらに、企画のスタートから数えておよそ10年。佐藤さんいわく"最強のデニム"が誕生しました。名前は、『CANTON 1963 XX』。

「触ってみるとザラ感があるんですが、これはたぶん、CANTONしか作れないデニムだと思うんです。とにかく、テンションをかけずにざっくりとゆるく、極端な話、手で織ったくらいのイメージです。革新織機って縦糸も引っ張るし横糸もすごいテンションで織るんですよ。でも、そうするとふくらみがなくなるというか、ザラ感もなくなります。やっぱり、織りですね。実は普通ではあり得ないような織り方で織ってます。一台の織機で織ってるんですが、一台で一日、20メートルか30メートルくらいかな?一反織れないんです。」

今回の新シリーズ。フィット、つまり、形も刷新されています。

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「最大の特徴は、おしりのところがピコンと立つというか。ダックテールって言うんですけど、これがですね、女の子が履いたらかわいいんです。サイズは26インチから34インチまであります。

今までのCANTONの感覚だと、メンズのフィットからレディースにおとしこむというやり方だったんですけど、今回のXXはレディースから来てると言っても過言じゃないです。女の子が履いてかわいい、かっこいいフィットなんですよ。実はこれ、男が履くとまたかっこいいんですね。」

最後に、豊島株式会社の佐藤健二さんはこのジーンズの魅力をこう語ってくれました。

「いい意味でのラフ感っていうかね、ゆるい感じが私たちの心に何かをもたらしているということ。ホッとするというかね、そういうイメージです。それも履いていくとじわじわ味が出てくるので、ほんと相棒になると思うんですよ。これ、織っただけで、何も手を加えてないんです。通常、よじらせて縮ませるとか、そういうのをあとでやるんですけど、これは織っただけ。織りっぱなしで、何もいじっていません。なので、履いていくとよじれて縮みますし、けばけばしていますし、このラフさ加減が絶妙ですよね。CANTON OVERALLSのXXに関してはね、時代に逆行している感じなんです。素材に関してもそうですし、シルエットも縫製もそう。あえてコストもかかるというか、手作業的なというか、手作り的なというか、そういうことをやっているんです。'ぬくもり'みたいな商品も必要だと思っているんですよね。」

履いていくと、よじれて縮む。縫製している糸も色落ちし、時には切れることもある。そんな"ゆるさ"が私たちの心にもたらすものとは何なのか?それはおそらく、何かを長く愛する気持ち。ときに傷つき、ときに喜び、いろんな時間をともに過ごすことの大切さ。一本のジーンズが、多くのことを教えてくれました。

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