西野カナさんに質問"曲作りの時に企画書を書くというのは本当ですか?"以前、こんな話を耳にしました。西野カナさんは曲づくりの際、企画書を作っている。まずは、これについてご本人に確認させていただきました。

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「曲によって書いたり書かなかったりするんですが、シングルになる曲は作ります。その企画書を作ってアンケートをとらせてもらったり。今回のアルバムでは【トリセツ】と【あなたの好きなところ】の2曲がそうですね。

【トリセツ】はもともと、恋人への手紙だったり伝えたいことを曲にしたもの、というざっくりとしたコンセプトがあって、それにもうひとつ何かおもしろいものをつけられないかなということで、取り扱い説明書のように、いつもの歌とは違う表現で書いたらおもしろいかなと。それでまず冒頭の『このたびは私を選んでくれてありがとう』というのを書いて、この曲は彼氏とか恋人へのメッセージを取り扱い説明書風に歌う曲です、っていうのを企画書にまとめました。そこからいろんな人に"もしあなたが取扱説明書を書くならどんなことを書きますか?"、"機嫌が悪いときはどんなことをしてほしい?"とか、"こんなことをすると機嫌が良くなります"、あと"どんなことができます"というスペック、そういうことを男女問わずいろんな人に書いてもらって。」

"彼へのメッセージを 取り扱い説明書風に歌う曲"。そんな企画書をベースに、西野カナさんのお友達やスタッフなど周囲の方へアンケートを実施。"取り扱い説明書"に入れたいことを書いてもらいました。

「実際にアンケートというか、その取扱説明書をいくつか書いてもらいました。男性と女性で全然違うのかなと思ったらそうでもなくて、同じ意見を男性と女性が書いていたり、紙だけ見てたら男の人が書いたのか女の人が書いたのか分からないなと思って。

男の人でも女の人でもやっぱり好きな人に気にかけていてほしい、というすごく根本的な気持ちは一緒で、こんなことをしてくれたら機嫌が良くなりますとか、大したものじゃなくてもいいけどプレゼントをふとくれたり、おみやげ買ってきてくれたら嬉しいなとか。あと、機嫌が悪いと黙り込んじゃうというのも男性も女性も意外と同じで、それを表に出すかどうかの違いくらい。だから【トリセツ】っていう曲は女性の気持ちを書いたという風に曲としては説明しているんですけど、意外とそうでもないのかなとは思います。」

アルバム『Just LOVE』の3曲目に入っているのが、【You & Me】。

「【You & Me】という曲は、曲の感じがカップルのおもしろおかしい日常かなと思って、【Darling】とか【トリセツ】と同じカップルをイメージして作っているんです。このカップルの女の子はこういう感じの性格で、彼氏はこんな感じでっていう、人物の設定は自分のなかで細かく最初に決めて、年齢層とか服の感じとか何となくですけどイメージして。この女の子はこうは言わへんやろなとか、この女の子の性格を考えたらここは怒るやろなとか、こういう風に言うやろなというのを考えながら言葉を選んでいます。」

これまで数多くのラブソングを手がけてきた西野カナさん。曲作りの壁にぶつかることはないのでしょうか?

「普段生活しているときは、作詞だったり楽曲制作のことはまったく考えてなくて普通に生活してるんです。曲を書くぞってなったときに、普段の生活を振り返ってみたり、友達とのガールズトークから曲が生まれることもほんとにたくさんあって。最近あの子と何しゃべったかなとか、普段の日々を思い出しながら書いてます。たぶん印象的じゃないことは覚えてないし、覚えてることを書いたほうがいいから、書き留めたりもしないですし、ネタ帳もないし。だから何も思い出せないときはほんとに困って、まる一日、一文字も進まない、テーマも決まらないという日もあります。毎回、曲を作るたびにどうしようって頭悩ませて書いてますけど、考えたら意外とあったりするものなんですよね。すごく時間もかかるんですけど、人物設定だけでも全然違うものができるし、その主人公の女の子が10代なのか、20代でも前半なのか後半なのかでも違ってくると思うので。」

シングルとしてもリリースされ大ヒット。アルバム『Just LOVE』では、14曲目に入っている【あなたの好きなところ】。この曲についても教えていただきました。

「この曲はネットサーフィンをしている途中でかわいいラブレターの画像を見つけて。『52 Reasons I Love You』って書いてあって、トランプはジョーカーを抜くと52枚になるんですけど、その52枚の1枚1枚に恋人の好きなところを書いて、記念日とかバレンタインに渡すというもので。それがすごくかわいいんです、見た目も含めて。52個も好きなところを考えるのってすごいなと思って見てみたら、好きなところを書いてるけど、好きなところの定義もいろいろありまして。ほんとのいいところだけじゃなくて、わたしにしかわからない彼のかわいいポイントっていうところ、ダサくても、人からみたらちょっといいことではないことでも書いてるのがすごくキュートだなと思って。52個もの多くの好きなところを考える行為そのものがすごく素敵だなと。52個考えている間はその人のことずっと考えているわけじゃないですか。そういう風にそんなラブレターをもらった相手はすごく嬉しいだろうなと思うし。」

西野カナさんに、最後にこんな質問。アルバム『Just LOVE』。全編を通して、とても明るい印象を受けましたが、何か意識をしたことはありますか?

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「中には【Set me free】みたいに失恋をして、明日からどうしようというような気持ちを書いた曲もありますけど、その曲ですらわたしとしては希望を持たせているというか。失恋の曲でも片思いの曲でも、聞いてくれた人にとって、その日がいい一日になったらいいなという気持ちがあります。

毎日みなさんが生活しているなかでいろんなことがあると思うし、このアルバムは恋愛のことが多いけど、音楽を聞くことでその人の一日がハッピーになったらいいなと思いますし、このアルバムを相棒に、というそんな気持ちもあるので。」

失恋も片思いもあるかもしれないけれど、音楽を相棒に、いい一日を。そしておそらく、そこにはこんな想いも込められています。このアルバムを相棒に、いい夏を。