自分の苗字がスタイリッシュな封筒のデザインに?!

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"苗字封筒"や"雲棚"など工芸とのコラボでかわいい商品を生み出すユニット『Y2』

【苗字封筒】とはどんなものなのかというと、例えば、"佐藤さん"の封筒は、スプーンですくった砂糖が描かれていますが、近づいて見ると、砂糖の形に見えていたのは、カタカナの"サトウ"だと分かる、というもの。"鈴木さん"は、木から垂れ下がる実の部分が、鈴の絵になっています。まさに、鈴の木で、鈴木。この【苗字封筒】は、富山県にある和紙の会社桂樹舎とのコラボレーションで生まれた商品です。  

20160610hidden01.jpg「おわら風の盆の八尾の桂樹舎さんというところで作っていただいています。『なにか新商品を。』とお題をいただいて、まず和紙をどういう場面で使うかな?と考えました。いまお手紙を書く機会も少ないですし、我々だったら何を一番使うかなと思った時に、お手紙は書かないけど封筒は使うね、となりました。さらに、ただの封筒ではなく、封筒に自分の名前が、もしくは差しあげる方の名前がすでに入っていたら面白いなと。日本人の多い苗字、最初は5大苗字だったんですが、桂樹舎さんは吉田さんとおっしゃるので、吉田さんを繰り上げにして5つで五大苗字封筒を作って販売しました。これが好評だったので、じゃあこれを12に増やそう、20に増やそう、ということで、今は多い苗字の20番目まで作っています。(優香さん)

みなさまがSNSですごく拡散してくださって。自分は違う苗字だけど、"佐藤"の方が好き、とか。(優雅さん)」

このユニークな商品を発案したのは、ふたりの有井さん。お姉さん・有井優雅さんと、妹の有井優香さん。優雅さんと優香さんで "Y2"です。この【苗字封筒】は和紙の会社と一緒に作った商品ですが、こうした日本の工芸との共同作業。そもそも、その始まりは?

「富山県の高岡市はいろんな伝統的な工芸があることで有名な場所です。その中のひとつに400年以上の歴史を持っている高岡銅器という伝統工芸がありまして、銅合金の鋳物の90%くらいのシェアを持っているすごい産地なんです。

高岡銅器で何が作られているかというと、仏具仏像・美術工芸品・茶道具とかなんですが、そのなかでも仏具のボリュームが大きくて。

"仏具"というお題をいただいて、どんなものがほしいかなと考えたときに、私たちの場合、一番身近な喪失体験はずっと同居していた祖母なんです。我々の思い出のなかでいろんなものを祖母と一緒に手で作った記憶があるので、今の仕事をしているのは祖母の影響がすごく大きいと思うんですが、ふっとその祖母のことを思うときに、お花をいけたいとか、チーンと鳴らしたいとか、行動がひとつつくことで心が落ち着くことってあるなと思って。すごくパーソナルな行動だから、一個ずつ選べるものでもいいんじゃないかなと思いました。(優雅さん)」

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いくつもの道具のセットではなく、単体でも買える身近な仏具が最初に手がけたモノでした。さらに続いて作ったのは【雲棚】、という商品。雲のような形の木彫りを壁に貼ると、その雲の上に、神社でいただいたお札がすっぽりおさまります。

「神社に行っていただくお札をおまつりして、壁にぴとってくっつける。井波彫刻という木彫りの産地があるんですが、そちらで作っていただいています。井波は寺社仏閣の扉や屋根のところのすごい彫刻、ああいうものを専門に作ってらっしゃる職人集団なんです。(優雅さん)

井波はもともと、両面彫りの欄間とかを作っていたり。そういうものって実際に目にすることも少なくなっていますが、これだけ小さいとおうちに持って帰りやすいですよね。(優香さん)

そういうプロのすごい本物をぎゅっと小さくしておうちに持っていきましょう、というコンセプトです。(優雅さん)」

天井と鴨居のあいだ『欄間』を彩る彫刻。富山県に伝わる 井波彫刻の技を家庭でも楽しめる【雲棚】。発売するたびにすぐ完売する人気商品となりました。Y2が関わるアイテムのなかで、もうひとつ気になるのが、江戸木目込人形をアレンジした【アロマ屋文左衛門】。悪徳商人がお代官さまに小判を差し出す姿の人形で、小判の部分にアロマオイルをたらし、香りを楽しむことができます。

「一緒にお仕事させていただいているなかで東京というと"江戸切り子"・"江戸節句人形"・"江戸木目込人形"があって、こちらは江戸木目込人形の商品です。【アロマ屋文左衛門】という商品で、悪のシルバニアファミリーを目指しています。足立区の木目込人形と江戸節句人形の両方で伝統工芸師を持っている方って日本で唯一なんですが、松崎人形の松崎幸一光さんが作ってらっしゃる商品です。(優雅さん)

20160610hidden03.jpg我々が小学生くらいのときに、大岡越前とか水戸黄門とかがやっていたのを楽しみに見ていて、そこからそういうシーンをお人形にできないかなと思って。(優香さん)

この【アロマ屋文左衛門】が出てからその翌年にはお代官さまもできて、お代官さまのときは松崎人形さんに、『悪い顔ってかいたことないからほんとに難しいんだよね。』って言われて。(優雅さん)」

おもしろい商品が次から次へ。Y2が生み出すモノはどれも 日本の工芸にちょっと違う角度から光をあて、これまでにはなかった楽しさを感じさせてくれます。

「作る方も買う方もお店で売る方も、みんな楽しいのが一番だなと。それぞれのアイテムを目にして手に取って、誰かと会話が広がるとか。楽しい波動が広がるようなものをできるだけできたらなと、それが夢です。(優雅さん)

みんなのなかにある"あるある"とか、共通して笑えること、商品にそういうものが込められていると、いい商品ができるんじゃないかなと思っているので、作ってくださる方といっぱい話すようにしています。(優香さん)

あとはやっぱり、あくまでビジネスなので、きちんとここのメーカーさんなり業界なりにプラスの実績になるものにしたいと思っています。特に伝統工芸、地場産業だと巨大な企業ってないんです。ファミリー規模で伝統をつないでらっしゃる企業さんが多いので、そうするとリスキーな投資はできないし、小さく産んで大きく育てるというか。いまはどんな人でも情報発信できる可能性があるから、小さくてもできるだけ綺麗な形の石をなげて波紋を広げていくというか。今まで知らなかった方に知っていただいて、それで次のビジネスにつながったり。(優雅さん)」

時をこえ受け継がれる日本の工芸。その歴史、つまり『過去』と次のビジネス、すなわち『未来』をつないでいく。そのヒントは、ちょっと笑えること。楽しい気分になれること。小さくても綺麗な形の石を投げ、波紋を広げていく。軽やかな姉妹の挑戦は続きます。

Y2プロデュースの商品は"ここかしこ"のページで購入することができます。【雲棚】は入荷してもすぐに売り切れてしまう人気商品なので、次のタイミングをお見逃しなく!

http://kokokashiko.jp