1985年に公開された映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。
科学者であるドクが乗用車デロリアンを改造して開発したタイムマシンは当初、核燃料で動いています。しかし、未来の世界で改良され映画のエンディングではゴミをエネルギーに動くマシンに生まれ変わりました。そのシーンのように、不要になった服から作ったバイオエタノールでデロリアンを走らせよう！というのが 『GO！デロリアン 走行プロジェクト』です。中心になって進めてきたのは、日本環境設計株式会社。代表取締役社長の岩元美智彦さんにお話を伺いました。
「最初のきっかけは約30年前、私が21歳のときに見た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のゴミを入れて車が動くシーンです。あれが脳裏から離れなくて。これを将来、日本のテクノロジーでできるものだと思っていたんですがなかなか実現性が薄いということで、9年前に独立してやっちゃったと。」
日本環境設計株式会社。その名前からも分かる通り、環境にまつわることを手がけてきた会社です。
「環境のインフラを作ろうということで、いろんな技術開発をやってきました。衣類の代表的なものは、ひとつは綿、もうひとつはポリエステルです。私たちは、綿からバイオエタノール、ポリエステルをまた同じポリエステルに戻す。このふたつのリサイクル技術を持っていまして、これで地下資源を使わない循環型社会を作ろう、というのが取り組みのひとつです。あと、携帯電話のリサイクルをやっていまして、総務省の発表で年間700万台回収リサイクルされていますが、弊社では400万台回収リサイクルしています。そこから金とか銀とか銅とかのリサイクルをさせてもらっていると。さらに、回収拠点づくりですね。スーパーや学校に行くなど、消費者の生活導線上に回収拠点を置いてスムーズにリサイクルができる。その回収拠点の整備と技術開発を主にやってきたんですが、今回はそこにエンターテイメントを入れたわけです。」
岩元美智彦さんの心に残っていた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のゴミで車が動くシーン。そして、そこに「エンターテイメントの力をかりて、リサイクル活動をもっと広めたい」という想いが重なりました。捨てられる衣類を回収して、それを燃料にデロリアンを走らせよう。プロジェクトが動き始めます。しかし、タイムリミットがありました。
「2015年10月21日は、デロリアンが行った未来の日付なんです。その未来に行った時の燃料がゴミでした。」
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』第一作のラストシーン。主人公マーティの未来に問題が発生した！ということでマーティとガールフレンド、そしてドクはデロリアンで未来に向かいます。その未来の日付が、201 5年10月21日だったのです。しかし、企画から実現までの間で大きな問題となったのがユニバーサル・ピクチャーズからの許諾を得ることでした。「USJとか国内の広告代理店などを回ったんですけども、相手にされないんですよね。もうこの10月21日ははずせないと思いまして、アメリカの本国にラブレターを出してOKをもらったんです。あとは電話で何回もフォローしながら説得をして。」デロリアンはこの企画のために特別に制作され今年の夏、日本にやってきました。そして、不要になった衣類を集めながら全国を巡回。リサイクルを呼びかけました。
「リサイクルは地球環境がやばいですよとか、石油がなくなりますよとか、そういうことを言ってもリサイクル率はもう上がらないんです。それは講演とかで言っても、そのときは感心するけど、ドアをあけて外へ出ていくともう忘れてしまうと。一番大事なのは、消費者にどうワクワクさせるかというのがポイントで、今回のデロリアンも、服を集めてデロリアンを動かそうということになりますと、何倍も集まるんです。だから一番消費者が望んでいるのは、ワクワクドキドキリサイクルをしたい。楽しいこと、ワクワクドキドキできる参加型が一番じゃないかなと思います。」
そして、最後にプロジェクトについてこんなコメント。
「デロリアンがゴミで動く、という夢みたいなことを実現したのは、日本環境設計だけの夢ではなくて世界の夢なんです。ここから消費者参加型の循環型社会が形成されたらいいなと思っていまして、毎年10月21日を資源循環デイにしようと考えています。循環型社会ができますと、地下資源の石油を使わなくなりますので。結果、戦争がなくなっていくんですね。戦争をなくせるのは、お金とか武器ではなく、循環型社会だという証明をやりたいと思っています。」
80年代に作られた映画に、すでに組み込まれていた環境への想い。まさに、Back to The Future！ 過去から未来という名の「今この瞬間」へ。
2015年10月21日。
平和への願いをのせたデロリアンが、お台場を走ります。
