毎月1回、税についての「頼れるパートナー」として、税理士さんによるわかりやすい税のワンポイント解説をお届けしています。リスナーの亜矢子さんから 質問をいただきました。

「実家の父が亡くなりました、家の名義を、今住んでいる母にかえようと思います。どのような手続きをすればよいのでしょうか?また、いつまでに手続きをする必要がありますか?」

この質問について、東京税理士会の山田 和江さんに 教えていただきます。

相続についてですがお父様の遺言書がない場合は、民法で定める法定相続人全員による遺産分割協議によって、相続する遺産が決定されます。各相続人の合意を明らかにするために、遺産分割協議書という書類を作成し、不動産は相続登記を行います。また遺言書がある場合は、原則としてその遺言書に基づき遺産を相続します。名義変更の期限ですが、法的には相続による名義変更の期限はありません。しかし相続登記をしないでいると、対外的に持ち主が誰なのかがわからなくなり、管理者が不明になる等の問題がありますので、なるべく早めに登記を行ったほうが良いと思います。

不動産は「相続登記」が必要です。質問の「名義変更」については、期限はありませんが、「早めに」ということです。では、税金については期限があるのでしょうか?

相続税の申告と納税の期限は、亡くなってから10か月以内です。ただし、遺産の総額が相続税の基礎控除額(3千万円プラス法定相続人一人当たり600万円を加えた金額)以下という場合には、申告も納税も必要ありません。お父様に所得税の確定申告が必要な場合は、亡くなられてから4か月以内に相続人が準確定申告書の提出と所得税の納税を行います。

そして、質問をいただいた亜矢子さん。こんなことも書かれています。

「母親がすべて相続をする場合と、結婚して家を出た一人っ子の私と二人で相続する場合は税額などが違ってくるのでしょうか?」

相続財産の総額によって相続税の総額が決まりますが、それぞれの相続人の税額は、その総額を取得した財産で按分して算出します。ところが、配偶者が法定相続分相当額、あるいは1億6千万円以下の財産を遺産分割で相続した場合には配偶者の税額が0円となりますので、相続税の納税額は大きく減額できます。また、居住用の宅地については、小規模宅地の特例によって330㎡までその評価額が8割軽減されます。ただ質問された方の場合、同居が用件になっている小規模宅地の特例は、原則として次回の相続では適用できませんので、次の相続税の負担も考慮して分割を検討してください。相続税の負担は相続人にとって重要な課題でしょうが、相続人の皆様の将来設計にプラスになるような遺産分割が行われると良いですね。

おうちを、お母さんがおひとりで相続する場合と、亜矢子さんと二人で相続する場合は、相続税は変わってきます。詳しい条件や税額などについては、東京税理士会のホームページ、「やさしい税の話」や「相続税の計算方法」でも 解説されています。今月のワンポイント解説は、「相続税」をテーマにお送りしました。