今朝は島根県松江市です。市内中心部にあり、街のシンボルともいえる「松江城」。別の名を「千鳥城」といい、江戸時代に建てられた「天守」が今も残っています。その時代の「天守」は全国でも数少なく、国宝に指定されています。この土地を治めた藩主の中で、よく知られているのは松江藩松平家七代目に当たる松平治郷です。

破綻していた藩の財政を再建、倹約令で支出を抑える一方、収入を上げるため、農業改革によって木綿や朝鮮人参などの特産物を栽培し、地元工芸品の職人を育てました。それらが軌道にのるのと同時に、藩主の松平治郷は茶の湯の世界でも名を上げていきます。その影響で当時の和菓子が今もなお伝えられ、作られています。

松江の郷土料理は「鯛めし」。茶の湯の世界では聡明なことを意味する「不昧公」という愛称でも知られる松平治郷。和菓子だけでなく、料理にもこだわりを発揮します。消化のよい「汁かけご飯」が好きで、長崎の出島から入ってきた西洋の料理も、出汁を工夫して御殿での食事にしていたといわれます。

そんなライフスタイルをヒントに生まれたのが「鯛めし」です。尾頭付きの鯛や刺身を使ったりする豪華なものではなく、蒸した鯛の身をほぐして「そぼろ状」にし、卵、大根おろし、海苔などと一緒に、炊きたてのご飯にのせ、だし汁をかけてお茶漬けのように食べるものです。あっさりした上品な味で、さらさらと食べられて、寒い朝には暖まる一品です。