藤代:おはようございます。今朝は春闘の結果を踏まえて、賃金の動向について。

J.K.:今まで何度かこのコーナーでも話題になっている賃上げですが、今年はどうなのでしょうか。期待してよさそうですか?

藤代:まず春闘とは何か解説しておきます。ごく簡単にいうと、毎年春に労働組合が会社(経営陣)と賃金について交渉することです。今年は春闘で妥結した賃金上昇率が2.16%、そのうちベアと呼ぼれる一律底上げ部分は0.77%。一見すると小さな数値に思えますが、実は20年ぶりの上昇率でした。企業業績が好調、人手不足も深刻、会社側が人件費増加に前向きになってきた形です。

J.K.:この流れは続きそうですか?

藤代: 賃金は企業業績、つまり景気の波の影響を大きく受けますので、長い目で見れば業績の悪化に直面して悪い方向にいく可能性はあります。一方で、働き盛り世代の人口が減るなかで、良くも悪くも人手不足の状態が続きそうですから企業は、労働者をつなぎとめるために賃金を上げるという動きは今後も続くと思います。実際、厚労省が実施している「賃金引上げ等の実体に関する調査の概要」をみると、アンケートで「人手不足」を理由に賃金を上げたという企業がここ数年増加していることが示されています。

J.K.: 賃金を引き上げる理由。他にはどんなものがありますか?

藤代: 少し意外感があるのですが「世間の相場」です。つまり、他の会社の動向をみて賃金を決めるということです。ここで、注意が必要なのは、みんなが賃金が上がらない、或いはマスコミの報道など賃金が上がらないと叫べば叫ぶほど、経営者は「世間も上がってないなら自分の会社も上げなくてよい」という認識を持ってしまうことです。また、労働者側もそれを忖度して賃金要求を控えめにしてしまう可能性があります。冒頭で触れたように現在の賃金上昇率は20年ぶりの高さなので、人々が賃金が上がっているという認識をもっと広く共有すれば、賃上げの流れがよりしっかりしたものになる可能性があると思いますし、消費でも前向きな動きが強まると重います。