藤代:おはようございます。今朝は今年の振り返りも兼ねて「行動経済学」という考え方をご紹介したいと思います。

J.K.:ちょっとアカデミックで難しそうですが、どんなものでしょう?

藤代:今年のノーベル経済学賞、この分野で功績の大きかったセイラーさんという学者が受賞しこともあって、いま注目されています。一般の経済学が数学的な裏付けを伴うのに対して、行動経済学は人間の感情に着目して政策やビジネスに活かすというものです。そこで今日は面白い事例をひとつ紹介します。それは「アンカリング効果」。

J.K.:「アンカリング効果」は耳にしませんが、どんなものでしょう?

藤代:これは、人間は直前に目にした数値に引っ張られる傾向があるというもので、ビジネスをしている人にとっては有利、反対に消費者は要注意です。実際の実験結果をご紹介します。実験台になったのは、理系の天才が集まるマサチューセッツ工科大の学生で、まず電話番号の下2桁を紙に書いてもらい、書いた番号の大きい順に5つのグループ分けをします。そして同じワインを見せて、それぞれ値段を答えさせるというものです。

J.K.: そうするとどんな結果になるのですか?

藤代:驚くべきことに、電話番号の下二ケタが一番大きな数字のグループと反対に一番小さなグループでは、答えたワインの値段は3.5倍もの値段の差があったそうです。それは直前に意識した番号がその後の判断に影響を与えている可能性が極めて高いという訳です。大きな数値を書いた人は高い金額、小さな数字を書いた人は安い値段を答えたというわけです。これは現実のビジネスでも応用されています。たとえば、ワインのように価値のわかりにくいモノを高く売りたい時、そして営業で相手の譲歩を引き出したい時は、直前にとても大きな数字を書いてもらったりすると効果てきめんというものです。