藤代:おはようございます。今朝はこの後発表される「法人企業統計」を見据えて企業業績をみるうえでの注意点について解説したいと思います。

J.K.:注意点とは、どんなことでしょう?

藤代:法人企業統計という指標は、企業の財務情報を政府がまとめたもので、3ヶ月ごとに発表されます。この指標が発表されると、ニュースではこんな報道が多くなると思います。それは「企業が抱える内部留保が過去最大」、「企業は現金を溜め込んでないで有効活用すべき」という趣旨の話です。この議論は正しくありません。誤解している方が非常に多いので要注意。というのも「内部留保」と「企業の手持ち現金」は根本的に別物だからです。

J.K.:それではまず「内部留保」とはどんな意味ですか?

藤代:一般的に内部留保というのは、過去に積み上げてきた利益のうち配当など外部に出せず、企業の内部に蓄積されたものを指し、正式な用語では「利益剰余金」と言います。長年にわたって黒字を計上してきた企業では豊富に利益剰余金、すなわち内部留保を抱えていることになりますが、ここで重要なのは「利益剰余金が大きい」と「現金が豊富」という関係は別の話になります。

J.K.:「内部留保はけしからん」という意見も多くありますよね。

藤代:「内部留保はけしからん」は「利益剰余金はけしからん」と言い換えることができます。そうするとおかしなことに気づくはずです。更に変換すると、「黒字経営はけしからん」と言っていることになるからです。内部留保が積み上がるのは、黒字経営の「結果」ですから、それは良いことなんです。決して何か悪いことの「原因」ではありません。恐らく、内部留保の多さを問題視している人が本当に言いたいことは「現金を有効活用せよ」という趣旨だと思いますが、それにしても何故、「内部留保=悪」という考え方が定着したのか、慎重に考える必要があるように思えます。