藤代: おはようございます。今朝は15日に発表された日本の経済成長率についてお話したいと思います。

J.K.:息の長い景気回復をしているとのことですが、どんな結果でしたか?

藤代:内閣府が発表した7〜9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.4%。プラス成長は7四半期連続。景気の感じ方は人それぞれですが、この数値を客観的な基準で評価すると、景気が強いということになります。

J.K.:客観的とはどういうことでしょう?

藤代:まず日本経済の本来の実力を確認することが重要です。現在の労働者、生産設備などをフル活用した場合に達成される経済成長率は1%弱と計算されています。これを潜在成長率と言って、「合格点の成長率」、「実力ベースの成長率」と言い換えることもできます。この潜在成長率を上回っていると、労働者や生産設備、つまりヒトとモノが足らなくなります。そこで企業が採用や設備投資を積極化する動きが広がって、経済が活発に動くようになります。

J.K.:実際、そうした動きは広がっていますか?

藤代:この1年程度の成長率は平均すると2%程度ですから、1%弱とされる潜在成長率を明確に上回っています。そうした下で、失業率は1990年代前半の水準にありますし、最近は省力化投資という人手不足を補うための投資も活発化しています。これだけ景気が改善しているにもかかわらず、「謎」の部分もあります。それは賃金と物価の上がり方が過去の景気回復に比べて鈍いこと。しかも、同じ現象がアメリカでも起きているので、色々な論争が起きています。その理由の一つに、日本では労働者や労働組合が経営陣に賃上げを要求しなくなっているという傾向が観察されています。日銀が2%の物価目標を掲げて、政府は3%の賃上げを要求しているにもかかわらず、労働者側の要求は控えめです。これが賃金の上昇を抑制し、物価上昇率の鈍さに繋がっている部分があるように思えます。