藤代:おはようございます。今朝は「企業の内部留保」についてお話しします。

J.K.:最近企業が利益を株主に還元せず溜め過ぎているといわれていますね。

藤代: ここ数年、企業の内部留保が過去最高を更新しています。そうすると、「稼ぎを内部留保に回さないで給与、設備投資、配当に回しなさい」と言った批判がでます。ただ、この指摘をしている人の中に「内部留保」と「現金」を混同していると思われる人がいますので注意が必要です。まずは内部留保を正しく理解する必要があるように思えます。

J.K.:内部留保は必ずしも現金ではない、ということですか?

藤代:「内部留保」と「企業が保有する現預金」は別物です。内部留保とは、「企業が稼いだ利益のうち、配当などで会社の外に流出しなかった額」のことです。企業の"内部"に"留保"された額で、正式にはこれを利益剰余金と言います。ですから「内部留保するな」という指摘は、極端な話「赤字経営しなさい」と言っているのと同じことになってしまいます。

J.K.:それではなにが問題になっているのですか?

藤代: 本質的には、現在企業が保有する現金が問題視されています。企業が保有する現金は200兆円あるのですが、10年前から50兆円くらい増えていて過去最高です。給料や設備投資に回しなさいと批判されているのですが、一方で日本企業は、海外進出などに多額のおカネを投じているというのも事実で、企業が保有する資産の内訳をみると、現金だけでなく海外子会社などへの出資額も過去最高です。それが功を奏して、ここ数年利益額も利益率も過去最高。こうして考えると、企業は「投資という形」で現金を有効活用しているという見方も可能になります。単純に現金の残高が増えたからと言って、企業が闇雲に現金を積み上げているという批判は

少し乱暴な印象を受けます。内部留保と現金の区別をしっかりしたうえで、

企業の財務諸表をよく分析する必要があるように思えます。