藤代:おはようございます。最近のアメリカ経済について。トランプ政権誕生半年で変わったもの、変わらなかったもの、という視点お話したいと思います。

ケン:いろいろと政権公約がありましたけど、実際のところどうなりましたか?

藤代:結論からいうと、経済政策は良くも悪くもほとんど何も実行されていません。トランプ大統領に批判的な人は、「減税」、「規制緩和」など「経済対策は何もできていない!」と厳しく批判していますが、一方で、人々が望んでいない政策も実行していないわけですから、結果的に何も起きていないというのが実情です。ここでいう「望んでいない政策」というのは、中国やメキシコとの貿易に関税をかけて、自由な貿易に制限をかけるというものですが、最近はこれに積極的に取り組む様子はみられていません。

ケン:一時は日本企業も混乱していたようですが、現在は大丈夫ですか?

藤代:私の知る限り、今のところトランプ大統領の誕生で壊滅的な打撃を被った日本企業はありません。政権発足直後は日本を含めた外国企業に辛口の批判が目立ちましたが、最近はその辛口な表現にも慣れてきた印象です。また為替を巡る議論では、他国の通貨政策を批判することがありましたが、アメリカにとってみるとドル高でもドル安でも一長一短なので、どちらがよいとはすぐに結論が出ない問題だと思います。

ケン:それでもTPPの離脱は混乱を招きましたよね?

藤代:実はTPPの離脱に関しては、大統領がトランプさんでも、クリントンさんでも結論は変わらなかったという事実を再認識する必要があるように思えます。というのは、選挙で負けた民主党のクリントン陣営も、TPPの離脱を公約に掲げていたので、実のところ選挙は関係なかったのです。こうして考えると、トランプ大統領の一存で経済が何もかも変わると考えは、色々な意味で冷静さに欠けていたように思います。今後政治的イベントがあった際には、それが民間の経済活動にどういった影響があるか、冷静に考える必要があると思います。ちなみに私は政治と経済、国と民間をそれぞれ分けて考えるクセをつけています。

ケン:第一生命経済研究所の藤代宏一さんでした。ありがとうございました。