藤代:おはようございます。今朝は「日銀に関する誤解」についてです。最近、いくつかのメディアで日銀が23兆円の損失を計上するかもしれないという報道があって、国会でもかなり話題になっているので、簡単に解説します。

J.K.: そもそも日銀が損失を計上するとはどういうことなのですか?

藤代:日銀は、建前上は政府から分離された機関なので、独自に採算を計算しています。民間の銀行と同じように利益も損失も計上され、決算もあります。何が原因で日銀に損失が発生するのか?というと、それは日銀が大規模な金融緩和をする手段として大量に買ってきた国債、その値段が下がるから可能性があるからなんです。日銀の国債保有額は400兆円くらいで、値段が少しでも下がると、莫大な損失がでます。損失を埋め合わせるため、国民の税金が投入されるかも、という懸念です。

J.K.:仮に23兆円の税金が投入されるとなると、とんでもない話ですね?

藤代:23兆円と聞くとびっくりしますが、結論から言うと、そのような税金投入はあり得ません。この損失は"評価損"のことで、あくまで会計、帳簿上の話。しかも一時的に発生するものなので、国債を満期まで保有していれば損失はゼロ。丁寧に言うと、「日銀が保有する国債の価格が一時的に下落して、23兆円の会計上の損失が帳簿上に計上される」という意味なので、損失が出たとしても、税金投入という話には結び付きません。

J.K.: では私たちが払った税金が投入されることはないのですね。

藤代:とはいえ、いくつかの条件が揃うと、税金が日銀の損失補てんに投入される可能性はあります。その場合に重要なのは、日銀が損失を計上した分は、実は他のところで利益が出る計算になるので、国民にとってみるとほとんど影響のない話。また、日銀の赤字が表面化するのは、景気が良くなって、金融緩和を止める時ではないでしょうか。でも景気が良くなるのですから、他で補える部分もあって、それはそれで結構なことだと思います。