藤代:本日は最新のデータに基づいて「働き方改革」が経済へどういう影響を与えるのか、考えていきたいと思います。

J.K.:日本は長時間労働が社会問題化していますよね。

藤代:まず、厚生労働省が毎月発表している指標を確認すると、長時間労働が社会的に大きく取り上げられた昨年の後半以降、フルタイム労働者の労働時間はほとんど減っておらず、むしろ増えています。これは足もとの景気回復が影響しているので評価が難しいですが、増えたのは事実です。

J.K.:長時間労働の是正、やはりすぐには難しいのでしょうか。

藤代:ここで心配なのは、表面的に労働時間を削減しようすると、かえってサービス残業が増える可能性があること。当社が日本のサービス残業の時間を計算したのでご紹介します。その方法は、労働者が政府の調査に回答した労働時間と、企業が賃金の支払い時に集計した労働時間の差をサービス残業とみなしました。労働者は自分が働いた時間を素直にそのまま回答する一方、企業は賃金を払った分だけの労働時間しかカウントしないため、その差は"サービス残業"と考えてよいと思います。

J.K.:それは何時間くらいですか?

藤代:全産業の平均で年間およそ200時間。しかも2015年より増えています。企業側が労働時間の削減を打ち出す一方、現場がそれに追いつかず、結果的にサービス残業となってしまった可能性があります。なお、教職員の労働条件が問題となっていますが年間390時間。一日2時間なんです。

J.K.:サービス残業や、自宅に仕事を持ち帰ったりすれば、意味ないですよね。

藤代:働き方改革そのものは素晴らしいことですが、それがサービス残業に繋がる可能性はあると思います。サービス残業の増加は、本来もらえるはずだった賃金が消え、景気にも悪いので、労使双方で意味のある話合いが必要だと思います。