American Airlines MUSIC FLIGHT

DATE
2017.03.25.SAT
TIME
21:00-21:54
DESTINATION
JAMAICA

音楽家/外池満広

ラストフライトは、レゲエアイランド/ジャマイカへ。
ジャマイカ音楽をの歴史を紐解けば、スカ、レゲエ、DUB、ダンスホールなど表現豊かでオリジナリティ溢れる音楽スタイルが連なります。その中の一つ、60年代に誕生したのが「ロックステディ」。メロディアスなサウンドと緩やかなリズムは、後に続くジャマイカ音楽の発展を広げる礎となり、時代を越えて愛される音楽です。そこで今夜は、ロックステディレゲエの色褪せぬ魅力を音楽家/外池満広さんと巡ります。

建築家/隈研吾さんの旅コラム、ジャイルス・ピーターソンのミュージックセレクションも。

◆ロックステディとは

ロックステディとは、1966年から1968年の間にジャマイカで流行したポピュラー音楽の一種で、簡単に言うとレゲエの一部分。全盛期はたったの2年間でしたが、この短期間に輝く曲がたくさん生まれ、多くの人たちに聴かれました。まさに「一瞬開いた宝石のような音楽」です。

もともとジャマイカの初めての音楽としては、早いシャッフルのインストのバックバンドのダンスミュージックである「スカ」がありました。それがテンポを落として、どちらかというとインストよりも歌中心の楽曲に変わり、それがロックステディの入り口になって行きます。

これはジャマイカの国や社会情勢とも深い関係が…。1962年に独立を果たジャマイカでは、やっと自分たちの国になった、これから自分たちで良くしていくんだ、と世相的にも希望に満ちた明るいムードが島全体を覆っていました。以前はレコーディングスタジオもジャマイカにはなく、人々はラジオから流れるアメリカのR&Bなどを聴いていました。それがスカの時代に入ってからレコーディングができるようになり、自分たちが生んだ、自分たちが大好きな、自分たちのための音楽を作れるようになって、みんな自国の音楽に熱狂していきます。スカの誕生です。

そして次第に人々は明るい音楽やラブソングに興味が湧いてきて、インストではなく歌詞の乗った歌モノ、楽しい甘い音楽を聞きたい、という気持ちに呼応するかのようにリズムのテンポを落とし、甘い曲がたくさん生まれました。こうして希望と愛に満ちた、楽しい音楽「ロックステディ」が広まっていきました。

たった2年の全盛期…その後ロックステディはレゲエに変化を遂げます。実は1969年以降のジャマイカでは、独立を果たして自分たちの国は良くなると信じていたのに、ちっとも良くならないじゃないか!というムードが島に漂っていきます。そういった不満や不安が反抗心を呼び、歌詞のテーマも恋愛からレベルミュージックに形を変えていきました。反抗を歌うリズムとしてはロックステディは甘すぎるということで、バックトラックもテンポを落とし、ヘヴィーなサウンドになり、反復する、おどろおどろしい硬質な音楽へ…。それがレゲエの誕生に繋がっていきます。



◆ロックステディの音楽的な特徴

ロックステディの一番大きな特徴は、ゆっくりとしたテンポにと、スイングした跳ねて楽しい曲調。曲もシンプルな作りなのにムーディ。そこがたまらなくキュート!

大編成でインストがメインのスカに比べて、ロックステディはぎゅっと縮めた人数で歌を中心に奏でています。この変化に伴い、ムーディな歌詞を支えるようなバックの演奏もコード感をたくさん使った甘いものになっているのです。その次のレゲエもムードを出すような音楽ではなくて、硬く、ヘヴィーで単調に繰り返すビートの上でメッセージを叩き込んでいくという音楽の構造。「ジャマイカにはたったの2年しか幸せな時代がなかったにかと思うと切なくなるけど、希望に満ちた気持ちで、次々と生まれてきた宝石のような音楽がとても好きなんです。」と外池さんは笑顔で語ります。

そんなロックステディの要である歌部分の源流は、アメリカから来ているのだそう。アメリカで流行っているオーティス・レディングやサムクックのようなR&Bや、デルフォニックスやドリフターズのようなコーラスグループのソウルの影響をとても強く受けており、ジャマイカの人たちはそういった音楽に憧れながら暮らしてきました。それまで自国のプレスがなかったために音楽を輸入していた彼らが、自分たちの生んだ音楽を手にして、ロックステディのゆったりとした甘いリズムの上でジャマイカなりのソウルが生まれていきました。そのハッピー感は、「ジャマイカの独立」と「自分たちの音楽が作れる」という二つの意味が込められているのですね。

アメリカへの憧れはロックステディの英語の発音にも表れています。当時は綺麗な英語で歌うことがお洒落という風潮もあって、意識的にはっきりとした発音で歌っているのだとか。だから60年代のロックステディは非常に綺麗な英語を使っているのです。曲調も緩やかで、言葉もシンプルなものを選んでいるので、何回か聞けば何を言っているのか理解できますし、サビはすぐにみんなで合唱できるような曲が多いです。それもまた一つの魅力であり、黄金時代の表れです。



◆ロックステディの今

全盛期はたったの2年間だったが、ロックステディは今も生き続けている!と外池さんはお話しします。ラジオやサウンドシステム、野外ディスコでも早い時間やお客さんがまばらな時間帯には必ずロックステディが流れていて、みんなその曲を知っているのだそうです。だからメインで流れなくても人々の心の中には必ず生き続けているし、大切なときに聴かれ、歌われている音楽なのです。

また、ロックステディ全盛期に流行した曲を後の時代で別のアーティストカバーし、再び注目を浴びることも度々あります。DERRICK HARRIOTTの自分が恋の敗者であることを歌った「THE LOSER」という曲は、90年代初頭にFREDDIE MCGREGORにカバーされています。そこではなんと「WINNER」というタイトルで「僕は恋愛の勝者になるために生まれてきた」とポジティブな歌に変えてリリースし、島中の大ヒットに。ただカバーするだけじゃなくて歌い変えてしまうあたりもジャマイカっぽい!


◆ロックステディとジャマイカの魅力

最後に、外池さんにロックステディ、そしてジャマイカの魅力を伺いました。

「ロックステディは、輝きを失わない宝石です。時代に関係なくみんなに愛されて、昔も今もこれ以上愛に溢れた音楽はなかなかないと思います。ロックステディには暗い曲調がなく、ほとんどがメジャーキーで歌われていて、明るい曲ばかり。それがまたリスナーをハッピーな気持ちにさせてくれるんです。

そして、ジャマイカは夢のような音楽の島!どこへ行っても音楽が途切れないにはジャマイカくらいしかないんじゃないかな。ジャマイカは日本の四国くらいの小さな島なので、レンタカーを借りて半日もあれば一回り出来てしまいます。そうするとジャマイカの色々なところが見えて、色々な人に出会えて、田舎の人に優しくしてもらえますよ。音源を持っていかなくてもカーステレオから聞こえるラジオからはずっとレゲエがかかっているし!僕が初めてジャマイカへ行ったときは、八百屋のおばちゃんがタバコの箱くらいの小さなトランジスタラジオをギターアンプに繋いで爆音で聴いていたんですよ(笑)その瞬間「あー俺ジャマイカに来たんだー!」としみじみ感じました。乗り合いの小さなミニバスでも、運転手がカスタマイズしたウーハーがブンブンなっていて。音楽の押し売りみたいな感じで、音楽を切ってくれという方が難しいですよねきっと。とにかく行けば音楽が鳴っている、最高な島です!」

◆お知らせ

ロックステディの歴史や魅力を体感できるイベントが近々開催されます!

「BB Seaton from Gaylads meets Matt Sounds」

日程:2017年5月2日(火/祝前)
会場:東京 Shibuya QUATTRO
詳細はこちら

各地でソールド・アウトとなり回を重ねるごとにファンを熱狂させている「ロックステディ・レジェンド」シリーズも6回目。ジャマイカの人間国宝級レジェンドたちのステージをナマで観られる貴重なライブ。そのバッキングとして、外池さんがキーボードを務めるバンド・Matt Soundsが出演します。本物は波動が違う!生のロックステディを体験しに来てください!

NEXT ONAIR

昨年9月から、全29回に渡る音楽の旅をお届けしてきました当番組、2017年3月25日をもちまして終了となります。ご搭乗ありがとうございました!

MESSAGE

MUSIC SOUVENIR

ジャイルス・ピーターソン
GILLES PETERSON

M6 JUDGE DREAD PRINCE BUSTER

ロックステディとスカの歴史に欠かせない重要人物、歌手でプロデューサーのPrince Buster! 昨年78歳で他界するまで数々の名曲を残しましたが「Judge Dread」は彼のユニークな音楽スタイルが際立った彼のクラシックと言っても良いでしょう。

M7 007 (SHANTY TOWN) DESMOND DEKKER

レゲエ音楽史の中でも伝説的な存在であるDesmond Dekker 。「007」は、レゲエ音楽シーンのテイストメイカーDavid Rodiganにインタビューをした際、彼の人生にとって重要な1曲としてセレクトしてセレクトした1曲です。

PLAY LIST

  • M1 PERFIDIA PHYLLIS DILLON
  • M2 ROCK STEADY AND THE FLAMES ALTON ELLIS
  • M3 ON THE BEACH PARAGONS
  • M4 THE LOSER DERRICK HARRIOTT
  • M5 BETTER THAN LOVE CHRISTOPHER ELLIS
  • M6 JUDGE DREAD PRINCE BUSTER
  • M7 007 (SHANTY TOWN) DESMOND DEKKER