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2010/04/10 井戸実(株式会社エムグラントフードサービス代表取締役)


井戸実(いど・みのる)
1978年 川崎市生まれ。
1998年 (株)築地すし好入社 寿司調理人として従事
2001年 (株)レインズインターナショナル入社 立地開発業務に従事
2003年 (株)小林事務所入社 業態開発、加盟開発業務に従事
2004年 店舗流通ネット(株)入社 業務委託店舗の営業開発に従事
2005年 (株)ワイズフードシステム入社 取締役として経営に参画
2006年 (株)まいど 代表取締役就任
2006年 (株)エムグラントフードサービス設立

エムグラントフードサービス
エムグラントフードサービスというのをご存知でないリスナーの方もいるかもしれませんので、どういう業態を、どういうふうにやっていて、ほかと何がどう違う、その辺りちょっと簡単に教えていただきたいんですが。
私たちは1都3県、東京、千葉、埼玉、神奈川を中心に、「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」というステーキハウスを展開してまして、いわゆる郊外のファミリーレストランとかがあるようなところの隣にあるようなお店なんですね。
何が特別だったかというと、通常チェーン店って外装のつくりとか、内装とかか全部同じなのを、僕ら65カ店あるんですけど、今全部違うんですね。何で違うかというと、いわゆる飲食店が撤退した店を安く改装して出店するという手法をしてきたので、要は焼き肉屋の後から、ファミレスの後から、回転寿司の後から、何でも看板だけ変えて、内装だけちょっと変えて「けん」にしちゃう、そんな店を展開している。
そこのスピードがすごいわけじゃないですか。普通だと撤退するときは現状復帰しないといけないわけですね。そうすると、借りていた人が元のとおりにするためにそれなりのお金をかけて、キッチンがあったらキッチンもばらして、壁もとって、全部やらなきゃいけないところを、「いい、残したまま行ってくれ、僕が使うから」と。
使うから残してくれと。逆に、きれいになっていたら僕らは出店しないぞみたいな話なんですね。
それは初期投資がかかるからですね。郊外型だというのはなぜ郊外にこだわるんですか。
郊外は家賃が安いですね。保証金も安いですね。だから、都内で同じ規模の物件を借りようと思った金額ぐらいで郊外ではお店までつくれちゃう。
だから、初期投資をできるだけ抑えてという意味においては、都内の一等地の家賃の高いところじゃなくて、まず郊外であるよと。それから、例えば設備費をかける、あるいは外装造作にお金をかけるんだったらば、あるものを全部使って、キッチンから何から全部、机も椅子も什器も全部使う。で、いいなと思ったらオープンまで最短でどのぐらいでいくんですか?
最短で今まで、契約からオープンまで12日というのがあります。
早い! これですよ、これ。皆さん普通に考えてください。外食をやるって言ったって、いろんなことがありますよ。まずメニューイングも決めていかなきゃいけないだろうし、人材も教育していかなきゃいけないだろうし、料理人から何からいろんなことを決めていかなきゃいけないものを12日でやるって、もうパツンパツンのスケジュールですね。
パツンパツンです。本当に。一日の中で10分単位でスケジューリングを決めていかないと、何かが遅れたらもう1日延びちゃう。
井戸さんは物件情報はポンと入ってくるわけですね。
そうですね。FAXとか。
それで、立地を地図でパッと見る。そして、ほとんど決めちゃう?
決めます。現地行ったら1分以内に結論が出ます。やるかやらないか。
一番大事なのは家賃ですね。家賃の金額が一定の金額以内だったらそれでOK。次に、近隣に他社のチェーン店さんが出店しているかどうか。していればOKです。なぜなら、チェーン店の開発の方がその辺りを調査しているわけじゃないですか。OKだから店があるわけじゃないですか。だからOKなんですよ、そこは。僕らが道路の前でカチカチ通行量をはかったりとかは1回もやったことはないですね。ちなみに今まで撤退もまだ1個もないです。
判断のスピードが早い。それから初期投資を徹底的に抑えてスモールスタートでスタートしていく。そして、チェーン店なんかドーンと撤退しますから、そこは一気に?
一気に押さえますね。
それで2000何年にスタートして、今何軒?
「けん」は2006年7月に1号店を千葉の南柏でつくってから、今日の午前中もまた1軒開けてきたんですけど……、今日の午前中も川崎市の麻生区というところでお店を開けてきました。今日時点で65軒ですね。
業態も「けん」というお店があって、「いわたき」「やすだ」「ふくのかみ」「DNA」「はまじろう」とそれぞれ業種、業態が違うわけでしょ。居酒屋もあって……
居酒屋の業態もあって、4月からはふらんす亭というステーキハウスの経営権も我々が取得したので、これが70店舗加わってきましたから、そうすると4月末時点で累計150店舗体制というような状態になっています。
井戸さんは78年の川崎市のお生まれということは今32歳。
実は、小学校の文集のときに、僕は30歳になるまでに店を出すんだと書いていたそうですね。
そうですね。27歳のときに1号店をつくりましたので。30歳のときには35軒になっていました。
井戸さんは高校を出られた後、寿司職人を目指す。大手寿司店に入社をされる。そこでは、職人をやっていたんですか?
普通に板前です。カウンターの中で寿司を握っていました。
じゃ、寿司を握れるんですね?この頃でも、いつかは自分で店を出すぞということが前提で入っていた?
もちろん前提です。
3年後に店舗開発のノウハウを学ぶために牛角を展開していらっしゃいますレインズインターナショナルに転職。業態開発を経て、数社、いろいろなところを回られて、2006年株式会社まいどの代表に就任されて、いきなり6店舗の経営を任された。
何でいきなり6店舗を?
いわたきというステーキハウスが6店舗あったんですね。このお店を経営している親会社が、本業の業績が悪くてつぶれちゃったんですね。その6店舗の経営権が宙に浮いたんですね。その話を聞いて、やらないかという声をいただいて、すぐやろうと。
そういうサービスをしている会社にもいたんですね。リース会社のような会社に在籍していたもんですから、営業マンとして。
それで、飲食店、6店舗プラス2店舗、8店舗の経営権を買い取る形?
そうですね。
イニシャルではなくて、分割で。買い取り時点で総額1億2000〜3000万を4年間とかで分割してお支払いするという契約で。
怖くなかったですか?
怖いです、それは。どう考えたって。だって、貯金が500万もなかったのに、1億円の借金ですから。
とんでもないことですよ。26〜27歳の男の子が1億円の債務を背負うと。ものすごい決断ですよね。
それで、株式会社エムグラントフードサービスを設立。そして、今の郊外ロードサイド型、居抜き専門の飲食店経営をスタート。あるメディアなんかではハイエナ商法とまで言われているぐらいに、人が出たらすぐ入っていって、パッと見て、1分間以内には入るか入らないか決断して、2週間以内にはオープンさせると。
このノウハウだけれども、これはどこで、今までの職歴の中でのノウハウが?
そうですね。今までの職歴の中で、物件を開発する仕事をしたりとか、業態開発をする会社だったりとか、お金のマネジメントをする会社だったりとかを経験して、それぞれの集合体が今のすべてのノウハウになっているんですね。
今、ちらっとリース会社にもいらっしゃったとおっしゃいましたけど、リースという形がどういう形で契約がなされるかという辺りに関しても、例えば厨房の冷蔵庫とか、ああいうものがどういう形でリースされるのかを知っていた。
そういうことですね。
それから、職人としての大変さも知っていた。
もちろん。
そういう点と点がずっとつながってきて、1つの集大成として、エムグラントフードサービスの今の強き競争優位になってきているということなんですね。
1つ疑問なんだけれども、例えば「けん」でやっていらっしゃるステーキとか、ハンバーグとか、言っちゃえばどこでもあるものでしょう。しかも、物件は人が出て行った場所でしょう。出て行ったということは、そこでうまく集客ができなかった、ビジネスが成り立たなかった場所でしょう。そうすると、とんでもないおいしいもの、あるいは安いもの、何かの引きがあったら来るかもしれませんが、ホームページを見る限り、私もお店に残念ながら行けていないんですけど、ものすごく競争優位のある食材を使っているとかいうわけではないような気がするだけれども。
そこなんですよね。自分たちで言うのも変なんですけど、ステーキとハンバーグのお店と言いながら、そんなにむちゃくちゃステーキがおいしいとか、ハンバーグがおいしいというわけじゃ正直、ないんですよね。
じゃあなにが、というと、やっぱりコストパフォーマンスに優れているのがあると思います。費用対効果です、やっぱり。最後、レジでお金をお客様がお支払いしたときに、これでこれだけ食べられたら安いよねと言ってくれるところのものはご提供させてもらえているかなという自信はあります。メインで今1029円のハンバーグを提供して、サラダが食べ放題、ご飯が食べ放題、これにカレーがついていて、スープもあって……
ちょっと待って。カレーもついてる?
カレーもついているんです。ご飯にカレーもくっつけちゃって。
セオリーで言ったらつけちゃいけないんですよ。ご飯の食べ放題はいいんですけど、カレーはつけちゃダメなんですね。ご飯食べられちゃうので。ただ、ここは置かないとダメだろうと。
あと、アイスクリームも置いてあるんですけど、これも食べ放題で、非常においしいんですよ。
でも、やっぱりそこの大盤振る舞いと言いながらも、抑えるところは抑えて費用対効果が高い。冒頭に言った、安かろう悪かろうではなくて、この値段でこのうまさだったら十分お金を払った価値があるよねということがお客さんにわかってもらえるようなものが提供できているというのが最大のポイントで……。だから、そこが前にいた店舗よりも全く違う業態として……。見てくれは?
見てくれは変わらないです。看板が変わっただけですから。外装とか、そのままですから。
ここに来るまで、途中で、自分、走りすぎじゃないかなとか、生き急ぎすぎていないかなとか、大変だったなとかなかったですか?
しんどいときはやっぱりありましたし、会社設立の2期目ぐらいの頃は本当につぶれかけたときもありますしね。資金繰りがやっぱり……。何せ、出店、出店とやっていますから、月末でお金がないとか平気でありましたし、銀行にお金貸してくれと言っても貸してくれないですし、そりゃ、しんどかったですね。
どういうふうに乗り越えたんですか?
出店、出店でお金はどんどん出ていきますけど、本当にしんどいしんどいと言っているときに、テレビで一番最初、松戸店が紹介されたんですね。そこから一気でしたね。
結局は井戸さんの経営手腕、経営手法が一線を画していたということがメディアに伝わっていって、本来ならば大枚をはたいて広告をやらなきゃいけないところが、向こうから来てくれて取材をしてくれたところが大きなブレークポイントになったんですね。
やっていることは間違いないと思っていたんですけど、それが認知されていなかったので、それを取り上げていただいて、一気にいったと。
引きつけますね。
メールが井戸さんにいろいろ来ています。ナオさん、ヒロリンさん、アズキさん。
外食産業は最近値下げ、値下げ、そこまでしなくてもいいんじゃないか。あるいは食の安全性とか考えると大丈夫なのか。逆に言うと、原価ってそのぐらい下げられたのか、この業界は。という話があるんですが。
業界を代表して言いたいのが、本当に不毛の争いだなと思います。大手チェーンでも290円とかやっていますけど。もちろんそれが売れちゃうからいけないのかもしれないし、逆にそれが長続きするかというと、本当に僕らは首をかしげていますね。
よく、家で飲むビールの値段と、外で飲むビールの値段を比較するようなことがありますけど、家は家ですからね。外で外食するというのは、その空間を楽しまなきゃいけないわけであって、そこでデフレを意識した業態をつくることが果たしていいことなのかは、僕個人で言ったらNGというか、そうじゃないよねと。
あと1つ。横浜市のメグさん。それだけのスピードで出店するとなると、人の教育、それは3日や4日じゃできないんじゃないですか。何かポリシーはあるんですか。
ポリシーはあります。任せちゃえ、やらせちゃえと。やれるかやれないかとかいう理由は要らない。やるためにどうするかだけ考えろみたいな、結構体育会系なんですけど。環境と責任です。
最後なんですけれども、日本、いろんな意味で閉塞感がいまだに漂っております。人もなかなか元気が出ていない。最後に頑張れのメッセージをいただけるとうれしいんですけどね。
頑張れなんて人様に言えるほどのことは全然していないんですけど、少なくとも言えるのが、悪い話ばっかりしていても誰も幸せになれないと思うんですね。悪い、しんどい、きついとか言っていても誰も幸せになれないので、しんどくても、うちはいいぜ、うちは儲かっているぜ、それぐらいのことを誰かが言わなきゃいけないなと思うんですね。
なので、あえて言うのであれば、世の中不況、不況、外食業界も不況、不況と言いますけど、うちは今年はむちゃくちゃ業績がいいですね。

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