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2010/07/17 財部誠一さんにうかがうニッポンの「今」


財部誠一(たからべ・せいいち)
1956年東京生まれ。
慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。
同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。
金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。
BS日テレ『財部ビジネス研究所』等、TVやラジオでも活躍中。
また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し
「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。

HARVEYROAD JAPAN
今日は参院選後ということで・・もう随分前のことのように感じますけれども、242議席のうち民主、国民新党合わせて110と過半数を切ってしまったというような現実がありました。どういうふうに参院選はご覧になりましたか?
一言で言うと、民主主義の難しさを痛感しているというのが僕の正直な気持ちなんですね。それはどういうことかというと、民主党は政権をとってまだ1年もたっていないわけですね。本当に若葉マークもいいところなわけで、せっかく半世紀以上続いた政権を、いわゆる自民党による1党独裁が大きく変わりました。そこで彼ら民主党の政権運営には問題があったということは僕も重々承知しているんですけれども、もう少し待ってやらせてあげればいいのにという気持ちがある一方で、そういう人が結局多かったということだと思うんですけれども、もう一方で逆に、もうこれは耐えられないんだ、日本の経済の現状を見ていたらこのまま放置できないという、その気持ちもわかります。実際に地方とか取材とか講演で行くと、緊急を要するような厳しい状況が依然として続いているわけですね。そこでいち早く民主党にイエローカード、場合によったらレッドカード出している人たちがいるという姿を見ていると、選挙によって現出した姿はねじれで、この衆参のねじれによって、残念ながら政治は動かないですね。はっきり言えることは、権力闘争がここからさらに非常に激化していくということになる。
完全に国益を無視した状態で政党政治が進んでいく。そういう様相を呈し始めている感じがしていて、実際にマニフェストというどうも手垢がついてしまったような政権公約、そういえば政権公約だなと、みんなの党はアジェンダと言っていますけども、それもどうなのかなというすごく不安な不安定な状況で、プラス参議院というもののあり方というのが、昔は良識の府と言われたそうですね、教科書の中では。要するに、衆議院の政策というものをちゃんと見張り番として見張るんだと。そこがどうも政党政治になっていくと、あんまり意味がなくなってきているのかなと。
はっきり言うと、権力闘争の道具になっちゃっているというのが実態ですよね。実は経済だけじゃなくて、政治、あるいは政権交代というものもグローバルに見ると、見えてくる景色が変わるんですね。
世界各国で古今東西、政権交代というのはたくさん起こっているわけですけれども、多くの場合、長らく政権をとっている側に野党サイドが政権交代を挑む場合に、当然のことながらすばらしいことを、いわば甘言を弄するわけですよ。言ってみれば、あれもやります、これもやりますと。マニフェストに人気取りの中身が凝縮してくると。で、政権交代が起こりました。何が起こるかというと、大概半分ぐらいのケースでは即座に前言を翻して、要するにマニフェストも何もありませんと現実路線に戻っちゃう。つまり、もとの政権とそう変わらない運営になってしまう。
残りの半分ぐらいはどうかというと、大体頑張るんですけれども、持って半年から1年なんです。要は、半年、1年やって、自分で1回、2回予算編成をやると、それはかつて野党時代に与党を批判してきた、あるいはそれに代わる理想的な、あるいは空想的なすばらしい政策ができないんだということがわかってきて、大概は半年から1年で残りも現実路線に戻るというのが過去の政権交代の世界の歴史なんですよ。
だから、ここで本当に短期的に見てマニフェスト違反だとか、もっとマニフェストをやるべきだとかね。だけど、僕から見ると、去年の12月に民主党が出した成長戦略と今年の6月に出した成長戦略は全く違っていて、相当現実的でしたよね。つまり、民主党、あるいは日本の政権交代も世界のご多分に漏れず現実路線に変化をしていく。僕は、そういう中で、政権交代が起こり得るきちんとした国のオペレーションができる政治家が増えていくという点で、もう少し見守ってあげればよかったのになという気持ちが実はなくはないんです。
有権者ももう少し見守って時間をあげればよかったのかなと。
結果、ここから先本当に、よくも悪くも、政治家は1人の例外もなしに権力闘争にすべてをかけます。
この動きはちょっと看過できませんね。
ただ、政治学の本質を見ても、政治というものは権力闘争に尽きるんですよ。ただ、権力闘争の道具立てとして国民経済をいかによくしていくかというところが具現化して伴っていくというところに、権力闘争をしてもらってもいいという部分はあるんですけれども、それが本当にこのままいくのか、それがちょっと心配ですけどね。
先週、今週1週間の株式市場の動きなんかというのは、あまり反応なかったですね。むしろ円ドルも96円。若干株がそれにつられて下がって9400円ぐらいまでいったのかな。むしろ円が買われたというような状態で、日本の政局に対してあまり海外は関心がないのか、影響がないと思っているのか、どんなふうに見ているんですか。
たぶん海外といっても、アジアと欧米は違うと思うんですけれども、基本的に欧米から見た日本の存在感は非常に軽くなっていますね。逆に言うと、日本に対する話題自体が減っているし、欧米のメディアをネット経由で見ても本当に扱いは小さいですね。
実際、リーマンショック以降も何人も財務大臣も代わる、総理も代わるというような中で、基本的に国際会議における日本の政治のリーダーの存在感がない。それが結果的にはみんな様々、G8、G20における財政再建の目標を決めましょうというような議論の中でも、日本は飛び抜けて財政危機にあるにもかかわらず、それも横に置いておいて、その他の国々の財政再建目標を決めましょうというようなですね。
GDP比に対する国の借金ですよね。そういえば、財部さんのホームページにいきますと、国の借金時計がありまして、今どんどん増えておりますけれども、今現在835兆9032億4000円になりました。というふうに増えているわけですが、GDP比、ほかの国は50%にまでしましょう、それに3年間与えましょうと。日本は5年かなと、1国だけ別扱いされたような状態で。
うちのホームページも借金時計を掲げて随分たつんですけど、よくおしかりのメールをいただくことがあるんですよ。借金だけじゃないんだ、もう一方で資産もあるじゃないか。借金ばっかり出すのはおかしいというご意見もよくいただくんですね。だけども、確かに日本は国内だけで海外に国債を買ってもらっているわけでもないし、確かに大きく資産があることも事実です。
借金がある代わりに資産も約400兆ぐらいあるかなと。例えば土地とか、橋とか、道路とか、こういうのは国の資産ですからね。ただ、これは流動性、換金性がないじゃないですか。
よく海外に貸し金もあるじゃないかという議論もあるんですが、これ、本当のことを言うと返してもらえるのかというものだってあるわけですよ。極端なことを言えば、例えば日本が持っているアメリカ国債、これは売れるのかという話ですよね。つまり、資産があるという議論は、一般の事業会社と同じような会計レベルで考えていい話ではなくて、これだけ膨れ上がった借金の一番の問題は借り換えなんですね。これ、本当にいつまでもロールオーバー、借り換えがきちっとできていけばいいですけど、金利がちょっと上がりましたというようなことになったら、突然返済額が跳ね上がるわけですね。そうなったときに、いつ何時、突然借り換えができなくなるんじゃないのという恐怖感、危機感は持っていなきゃいけないわけですね。
悪しきは予算案、これだけ使うという歳出計画・予算があって、97兆円ですか、それに対して税収32、この基本構造を変えていかないとダメですよね。
まったくおっしゃるとおりで、感覚として、それは考え方としても全く間違っていますよね。確かに32兆しか税収がないというのはリーマンショック後の非常に厳しい税収減によるところが大きいといっても、8兆、9兆税金が減りましたと。これが戻っても40兆円ですよね。半分は借金なわけですよね。実際に日本は借りているお金を返すためにまた予算を組むという格好になっているわけですね。
これを考えていくと、今はまだいいけれども、本当に10年、20年先、少子高齢化が進んでいって、若い人たちが減っていくという時代に、こんな予算的にはできるはずがないわけで。
そこですよ。そこを解決するために、企業いえば普通ならばこれから中期経営計画、成長戦略を描いていかなければいけない。社員一人一人から福利厚生費をせしめて福利厚生をやっていくというやり方ではなくて、企業として新しい事業をやるということになるんですけれども、日本はそれができるのか。どうも悲観論が先にきちゃうんですが、財部さんはそうではないというご意見をお持ちだと思います。
日本はどうしてもマクロな数字を見ていくと、日本の持っている財政赤字、GDP比81%だとか、ギリシャなんかより全然大きいじゃないかとか、そういうとてもネガティブなニュースがエキセントリックに報道されることが多くて、また、それを受けて日本っていうのはダメだな、大変なことになるぞということを言いながら酒を飲むと言うのが好きな国民のようで、私はアメリカが長いんですけれども、どこの国に行っても自分の国はダメだなという国民はいないんですよね。うちはナンバーワン・イン・ザ・ワールドと必ず言うんですよ。
すごいのは日本人ビジネスマンは世界中に行って日本はダメだと言いまくっているという驚くべき現実があるわけなんです。
たぶん、日本の経済がある意味では昔は日本国内で完結できたわけですよ。例えば、日本でモノをつくって、日本も1億2000万人というそれなりの大きなマーケットがあって、それから輸出をするという、モノは国際化をしていたけれども、日本人は実はほとんど国際化していなくて、非常に内向きなまま過ごしてきたわけですね。
ところが、世界全体を見るとものすごく大きな地球規模の変化が起こっていて、それは世の中全体をグローバルに俯瞰するというところが日本人は非常に不得意なんですよ。その結果、日本が置かれているグローバルなポジションは結構今、いいポジションになってきているんですね。間違いなくなってきていますよ。
財部さんは、そうするとこれからの日本はものすごいポテンシャルがあると。
僕はものすごい楽観しています。久しぶりに将来が楽観できる、今、状況になってきたなと思っていますね。
久しぶりというのは、具体的にどのぐらいぶりに?
僕は日本の不良債権処理って90年代半ばぐらいから本気でやってきましたから、本当に十数年ぶりでしょうかね。
株式会社日本、財部さんが代表取締役社長であったらば、中長期経営計画、どんなふうに立てていかれるかというところで、この日本丸はどういうふうに進んでいくべきでしょうか。あるいはキーワードがあればぜひご享受いただきたいんですけれども。
これは明確なアジアシフトですよ。アジアシフトっていうのは、パーシャルにアジアという意味ではなくて世界全体がアジアを中心に動いていく時代に劇的に変化しているわけです。1つ、象徴的な数字を申し上げると、1990年、日本の貿易総額(輸出と輸入を足したもの)に占めるアメリカの比重、27.4%だったんですよ。
1990年で27.4%、3割近いですね。
これが2000年、25.0%。
下がってきましたね。
それが、2009年、何と13.5%。
半分じゃないですか。
これ、驚きですよね、10年間で。
つまり、何が起こっているのかというと、リスナーの皆さんもBRICsという言葉をさんざん聞かれたと思うんですけれども、これって単純化すると、2000年代頭に先進国の時代から新興国の時代に変わりますよというシナリオの象徴の言葉がBRICsですよね。これが実は劇的に進んでいて、当時リーマンショックをはさんで、さらに変化が加速しているわけです。
逆に、中国の比重はどうかというと、2009年20.5%なんですよ。
もう全部の2割はあるわけですね。
つまり、アメリカが日本だと大きな存在であったと思っていたら、今や20.5%は中国ですと。そこに香港、台湾、シンガポールを足した大中華圏という枠で見ると30.7%、アジアで見ると49.6%。じゃ、EUは幾らかというと11%なんですよ。つまり、日本の経済というのは知らぬ間に劇的にアジア依存になりましたねと。一方で、今世界経済をけん引しているのは誰ですかと。これは明確に中国であり、アジアであり、インドでありと。つまり、一番成長力を持っている国々との日本の経済の関係が一番太くなっているという点でいうと、国家戦略として実にいい形で進んでいるということなんですよ。
よくボトム・オブ・ピラミッドと言われますですよね。プラハード博士が言った定義ですけれども、年間大体の所得が3000ドル以下で暮らしている人たちが40億人もいると。2万ドルから3000ドルで12億だと。我々日本先進国なんて、あと残りのほんの小さな人口なんですね。
実はお話の次のステップとして、年収が1万ドルの世帯というものが、いろんな大きく消費量が伸びていく転換点と言われているんですけれども、実は今、中国、香港、台湾、インドネシア、インドというところで中間層の人たちがものすごく増えているんですよ。
なぜ僕は日本の将来に希望を今見出し得ているかというと、象徴的な言葉で言うと、メイド・イン・ジャパンの再評価というものが起こっているんです、アジアの中で。
すごく象徴的なお話を1つ言うと、ある日本の化粧品メーカーが日本でなかなか伸び悩んでいたときに、たまたま香港の華僑の人たちがその化粧品の独占的な販売権が欲しいと言って彼らに渡しました。香港でものすごく売れました。中国にもさらに半分求めて出て行きましたと。気がついたら、日本の本社の売上と香港・中国の売上が同じになっちゃったっていう、こういうことがさんざん起こっているんですよ。
実は香港に取材に行って、「どういうふうな売り方をしているんですか?」と聞いたんです。そうしたら、日本の商品を定価の50%で香港に仕入れる。香港で定価の1.3倍で売ってバカみたいに売れる。「中国で幾らで売っているの?」と聞くと1.5倍で売っているというわけですよ。「そんなに売れるんだったら、あなた自分で生産したらいいじゃないの?」と聞いたんですね。それは、財部さんノーですよと。なぜか。「日本でつくっているから価値があるんだ」という返事が返ってくるわけです。
これと同じような話として、さらに大きな話として言うと、実はデジタルカメラは日本製が世界の市場を制したんです。世界の市場の7割は日本製品のカメラなんですが、正確に言うと日本製じゃなくて、日本のメーカーのロゴがついているカメラが世界の7割を占めているんです。「誰がつくっているの?」というと、中国で台湾の企業が圧倒的に生産をしていると。つまり、メイド・イン・チャイナ・バイ・タイワニーズなんですよ。世界の5割をそのうちのタイワンのトップ3のOEMメーカーがつくっています。
この中の一番トップブランドの会社の社長さんがいわく、「これからはメイド・イン・ジャパンじゃないと勝てない」と言うわけですね。「どういう意味ですか?」と聞くと、従来は中国製の部品を使って、あるいは台湾製、韓国製の部品を使って中国の工場でつくって、日本のブランドで売っていたと。それはもう古いと言うんです。これからは中国で売るにも、インドで売るにも、うちの部品は全部日本製ですと。これが競争力になるんだと言うわけですよ。もちろん日本から全部輸入したんでは商売になりませんから、日本の会社を買収したい。買収するなり、合弁して台湾に出てきてもらって、そこで上場して資金調達して中国で部品メーカーをつくりましょうとか。実は、アジアのネットワークの中で日本という国の企業が果たし得る役割は本当に2年前では考えられなかったぐらいに劇的に高まっているんですよ。
もう一方で、旅行客のビザの条件の緩和ってありましたよね。これを見ても、例えば香港一つとっても、かつてイギリスから返還されてものすごくGDPが落ちた。ところが、中国本土から解禁しただけで、2003年以降GDPが激増するわけです。日本もまさにその意味でいえば同じ立ち位置で、ここからあふれ出てくる中国の人・モノ・金が日本に入ってくる。日本の内需も中国で押し出されるという時代に入ってきているんです。

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