データを暗号化したまま解析可能な
暗号技術の研究開発

ONAIR:2017.6.2

EAGLYS, Inc.
今林広樹(早稲田大学/EAGLYS, Inc.)
http://www.yama.info.waseda.ac.jp/crest/
http://eaglys.co.jp/

データを暗号化したまま解析可能な暗号技術の研究開発

世の中では、絶えず機密情報や個人のプライバシに関する情報が狙われています。最近もマルウェアなどによる情報漏えい事件が多発していますが、私の興味・関心のある対象はこのようなデータのセキュリティについてです。 私がつくりたい世界は、「全てのデータを暗号化したまま処理する世界」です。このような世界をつくりたいと思ったのは、ある経験にもとづいています。

私はこれまで、いくつかのデータ解析の受託、人工知能(AI)系アプリケーションの受託開発をやってきました。企業側からみると、データ解析・AI開発の外部委託です。企業が私にデータを委託・共有する際には、データが入ったExcelファイルをメールに添付したり、Dropboxなどのクラウドサービスを利用したりしています。
ただ、このプロセスに至るまでが、なかなかめんどくさいのです。企業側もデータを共有したい、私も共有してほしいと思う一方で、簡単には共有できません。というのも、データには企業の秘密情報や個人のプライバシ情報が含まれるため、共有するためには私自身やクラウドサービスをそもそも信頼していないといけないからです。信頼を得るためには、契約書類のめんどうな法務書類作成・承認プロセスを経たり、データを見ていない状態でアルゴリズム選定、データ解析手順の推定、プロジェクトの計画などを行った後、それらの資料作成やプレゼン・打ち合わせを行って内容を評価してもらう必要があります。(もちろん、データがわからないので全部"仮"です。ただ、お互いのリスクを減らすために必要な作業なのです。)使うクラウドサービスを利用していいのかどうかとういう検討も必要です。この全プロセスを経て、「そこまで考えてくれるなら実データ(の一部)を渡すから、これで実現可能か検討し、再度提案してくれ。」となります。私は、この結論に至るまでのプロセスは、企業側にとっても私にとっても膨大な工数がかかるし、意思決定のスピードも低速になるので、正直無駄だと思うのです。(なにせ、"仮"な状態での提案なので。)
このような状況は、私のケースだけではなく、データを外部とやりとりする全てのケースに当てはまると思います。 社会ではデータ利活用が推進されているにもかかわらず、上記のようにそれを妨げるような大きな制約が存在しているのが現状です。

では、もし、これらのデータが暗号化されていて、その暗号化データに対して解析を依頼できたらどうでしょうか。企業側は一切情報漏えいのリスクから解放され、データサイエンティスト側も従来通り独自の解析手法を暗号化データに対して試すことができます。(データサイエンティスト側も情報漏えいリスクから解放されることになります。)データは暗号化されているので、一切情報漏洩のリスクもありません。それゆえ、めんどうな書類業務も必要なく、「とりあえずやってみよう」というラフな感じになります。このような世界になれば、もっとテンポよく業務がまわっていくし、能力さえあればどんな人でもデータ解析に積極的に貢献できるようになるのではと考えています。 現在は、本暗号技術の研究開発をしながら、"データの安全性に常に注意をしながら、解析等の処理を行わなければならない"といった強い業務ニーズを持っている企業もしくは個人を探しています。業界としては、医療、金融、法律あたりと想定していますが、具体的な業務までなかなか見えづらい業界なので、ニーズを汲み取るところで苦戦しています。今後、技術が適用できそうな業界・業務を知っておられる方とコラボしていきたいです。

この技術は、10年、20年というスパンで当たりまえに使われていく技術になると確信しています。この技術によって、皆がセキュリティリスクから解放されて、積極的にデータを利活用していけるようにしたいのです。そうなれば、加速度的に技術も進歩していき、きっとシンギュラリティといわれるポイントに、より早く近づいていくのではないかと思っています。