TEPCO EARTH HUMMING MESSAGE & REQUEST
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佐野高太郎さん

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写真集『高尾山 ちいさな山の生命たち』

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川のほとりに咲くハナネコノメ
(c)Kotaro Sano

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宝石のような水滴をつけるムラサキケマン
(c)Kotaro Sano

2007.4.29 ON AIR
野生動物写真家
佐野高太郎さん

 

高尾山はすごいんです。

高尾山っていうのは特別天然記念物が住んでいるわけでもなく、これといった特別なモデルがいる山ではないんですけれども……じゃ、なにがすごいかっていうと種類が多いっていうことなんですね。植物の種類が1300種類あるんですけども、たとえばイギリス全土の植物は1600種類しかないんですね。で、高尾山って770ヘクタールしかなくて、599メートルの標高しかなくて、その小さな山にイギリス全土に匹敵するぐらいの数の植物があるってていうことなんですね。ま、それだけの植物があるっていうことは当然、昆虫も多くて5000種類いるんですけども、この5000種類って数はだいたい日本の3本の指に入るくらいの昆虫の密度だって言われていて、あと野鳥も130種類記録されているんですけれども、これはだいたい日本全国で記録された野鳥の4分の1以上はいるんですね。

さらに土の中も……

ミミズとか土壌生物がすごく多くて、これはどれだけいるっていうなかなか数で記録できるものではないと思うんですけど……土の質がすごくいいんですね。で、土壌生物っていうのは常にいろんな腐敗したものを食べながら消化して土に戻して、常に土を耕しているわけですよね。そのいい土を作ることによってさっきの植物の種類がたくさんあるっていう話につながっていくんですけれども……そうやって、ありとあらゆる多様な生き物がつながっているっていうことがすごく分かりやすい山だと思います。

そして、こんな面白さもあります。

高尾山は植物の生息域の境界線でもありまして、たとえば、高尾山はブナの生息域の一番南なんです。で、そのブナの隣にアカガシっていうカシの木があるんですけど、アカガシにとっては逆に高尾山が北限なんですね。そのアカガシと、北にあるブナが隣同士に生えている場所っていうのは、本当に日本でも何ケ所かしかなくて……そういう高尾山が植物の境界であるがゆえに起こる奇跡というか、そういうのもたくさんある山です。

佐野さんが動物写真家を目指したのは……

僕が写真家になろうと決めたのは、小学校の4年生の時なんですね。小学校4年生の時の父の仕事の都合で南アフリカに住んでました。南アフリカには2年間住んでいたんですけど、その時に野生動物をたくさん見ることができまして、で、南アフリカで見た野生動物は当たり前のことなんですけど自分の意志で自由に、その代わり命をかけて暮らしているわけですよね。その野生動物の姿を記録したいと言う願望がだんだん湧いてきて、たまたまその時に父が持っていた一眼レフカメラがありまして、ちょっと使わせてもらったらすごく面白くて、それではまってしまったんですけど。その時に自分の人生が決まっちゃったみたいなもんで、それから帰国して中学、高校と行ったんですけど、もう動物写真家になることしか考えてなくて、その意志をずっと変えないままこの歳まで来てしまったんですけれども。

北海道、カラハリ、そして高尾山で……

写真家になったばかりの頃というのは、今みたいに植物とかに目を向けることがなくて、動物しか見えてなかったんですね。で、北海道で7年以上、カラハリだけで30ヶ月以上滞在して動物の撮影をしていたんですけど、それだけ長い時間をかけていろんなものを見ていると、だんだんものを見る目が変わってくるんですね。それで、高尾山を撮る動機になったのは、元朝日新聞の天声人語を書いていらっしゃった辰濃和男さんのお話を聞く機会がありまして、その時に高尾山がいかに土壌生物に恵まれていて、それがどれだけの植物を育んでどれだけの豊かな自然を支えているかというようなお話を聞いて、それを写真で表現してみたいと思ったんですね。ちょうど2003年の秋だったんですけど……それをきっかけに撮り始めました。

高尾山の撮影の様子は?

最近高尾山の撮影でいうとブナの森を撮ることが多いんですけども、そのブナの森の中でも一本の“美人ブナ”と呼ばれている……美人ブナっていう種類じゃなくて固有名詞なんですけども、その美人ブナを撮ることからまず始めるんですけど、この美人ブナがある場所っていうのが高尾さんの尾根なんですね。で、その美人ブナに陽が登ったばっかりの一番いい光が当たる時間に行きたいので、それで、山に登り始める時っていうのは陽が登る前の時間で6時とか7時とか……もっと夏になると早くなるんですけど、そのくらいの時間に登りはじめることが多くて、その時間帯っていうのは、高尾山って年間200万人以上の登山客がいるんですけれども誰にも会わないんですね(笑)。で、ブナの森の撮影が終って、9時とか10時に沢道に下りることが多いんですけど、その時間帯は沢道に咲いている植物に一番最初の光が当たる時間なんで、ちょうどま、一番最初に光が当たる場所を追いかけながら山を歩いているような感じですね。それでお昼ぐらいには登り始めた場所に帰ってきて、登山口とかに寄り道をして豆腐屋さんで豆腐を食べたり……そんなスケジュールですね。

高尾山にトンネルを通す計画があることについて

自然破壊はもちろんよくないんですけれども、それに気がついていないっていうのはもっとよくないことで……気がついていないと、自然が本当にもったいない話でどんどんどんどん失われて行っちゃう。ま、そんなことに気がついてくれたらいいなとは思うんですけど。で、これをやっちゃいけないんだっていうような押し付け的な意見ではなくて、まず最初に綺麗な自然に気がつくっていうところから入ってもらうと、みんなもっと気持ちよく入れるんじゃないかなと思って、ま、そういう意味もあって写真集を作りました。

ゴールデンウィークの高尾山

ブナの森のちょうど若葉の時期なんですね。ブナの若葉っていうのはものすごく柔らかい黄緑色で、その色を一番楽しめる時期がちょうどゴールデンウィークなんですね。撮影する僕にとっては非常に都合の悪いことなんですけれども(笑)。で、しかもその黄緑色が一番綺麗に見える場所の1つに有名な釣り橋があるんですけど……高尾山の4号路の途中にある「みやま橋」っていうんですが、その「みやま橋」の近くっていうのはイヌブナの若葉がすごく綺麗に見える場所なので、それを目指して行かれるともしかしたらすごい光景に出会えるかもしれません。

佐野さん情報

★写真集『高尾山 ちいさな山の生命たち』
 出版社:かもがわ出版 (2007年2月出版)
 定価:2,730円

★写真展『高尾山 ちいさな山の生命たち』
 会期:〜5/27
 会場:モンベルクラブ (南町田)グランベリーモール店
    ※東急田園都市線「南町田駅」グランベリーモール口
   ※営業時間 10:00〜20:00


LINKS

●動物写真家 佐野高太郎の世界!
 http://www.kotarosano.com/

『高尾山 ちいさな山の生命たち』