ONAIR: 2007/12/30「コミュニケーションって何ですか?」
平田オリザ

劇作家・演出家
1962年東京生まれ。16歳で高校休学、自転車による世界一周旅行を敢行。国際基督教大学教養学部卒業後、在学中に結成した劇団「青年団」を率いて、自ら支配人をつとめるこまばアゴラ劇場を拠点に活動、「現代口語演劇理論」を確立する。95年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞を受賞したのをはじめ多数の賞を授与される。

現在、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授。

*劇団サイト http://www.seinendan.org

コミュニケーションって何ですか?

【大阪大学で行っていること】

岡田「大阪大学の教授に去年(2006年)からなられたんですが、教育の現場にも興味があったわけですか?」
平田「あんまり無かったんだけど、まあ成り行きですね(笑)」
岡田「(演劇と)通じることはあるんですか?コミュニケーションを授業として教える、研究するっていうのと」
平田「もともとは自分の劇団の俳優たちの訓練の為のいろんなワークショップの方法っていうのを開発していて、それがたまたま外でやってみたら、最初高校演劇の指導でやってみたら、非常に有効だってわかって」
岡田「それは何に有効だったんですか?」
平田「もちろんそれは高校演劇の指導とかね。最初は演劇界で、だんだん一般の人とかね、それから中学校の国語の教科書作ったりとか、今国語の教科書にワークショップの方法が載っているんですけど、それから大学にも呼ばれるようになって、ていうふうにだんだん広がっていったんですね」
岡田「そのコミュニケーションというのが今の時代に必要だっていうのは思われていたんですか?」
平田「うん!必要なことは間違いないでしょうね。例えば今はね、阪大はね、ご承知のように医学部を中心にした非常に理系の強いお固いイメージの大学でしょ、関西では。で、大学院生たちだから医者とか科学者とか弁護士とかの卵たちに演劇を実際にやらせてコミュニケーション能力を付けるんですけど。これあと数年後には必修になるので、もう演劇やらないと医者になれないという時代が来るんです」
岡田「おお。でも失礼かもしれないですけど、平田オリザさんって16歳で自転車による世界一周をされてますよね。どう考えても、コミュニケーションができる人は、世界一周しないと思うんですよ」
平田「そう!?(笑)」
岡田「いや、だって、自分探しじゃないですか!」
平田「あー、はあはあはあ、なるほどね」
岡田「変なことを言うと、客観的に見て、そういうことをする人、僕もどっちかっていうとやりたい人だったんですけど、基本的に口下手な人が多いはずなんです」
平田「うん、そうだった」
岡田「(笑)そうだったと思うんですよ」
平田「僕ね、30過ぎてからだった、人とちゃんとコミュニケーションできるようになったのは。あの、今はね大阪大学で教えているコミュニケーションの授業っていうのは、いわゆる人とちゃんと喋れるとかそういうコミュニケーション能力じゃなくて、専門用語で言うと、グローバル・コミュニケーションスキル、異文化コミュニケーション能力って言うんですけど、異なる価値観を持った人とか、異なる文化的な背景を持った人と、どうやってうまくやっていくかっていう能力なんですね。つい最近もOECDって先進国のグループがやっているPISA(学習到達度調査)調査っていうので日本の学力が下がったって新聞に大きく出てたでしょ。その調査っていうのは実は異文化コミュニケーション能力を問う試験なんですね。これが日本は弱いと言われているんですね。要するに、日本人の間だけだとわかりあったり察しあったりできるんだけど、全然異なる価値観を持った人となかなかうまくやっていけない。要するに逆に言うと、日本人の今までのコミュニケーション教育とか学校の中で行われてきたものは、心をひとつに、とか、一致団結とか、わかりあうことが目標だったのね。それからすると、僕の人生は外れていると思うんですよ。全然一致団結してないからね。でもこれから必要とされるのは、わかりあえない人間同士がどうやってうまくやっていくような、そういう能力が必要とされてくるんですね、国際社会では。これを僕は『協調性から社交性へ』って呼んでるんだけど、演劇ていうのはたかだか二ヶ月くらいの稽古期間の間に、知らない人同士が集まって一つの作品を創ってやるわけでしょ。俳優たちって協調性は無いけど社交性はあるわけよ。幕が下りるまではどうにかしてうまくやるでしょ、映画作ったりするときも」
岡田「はい」
平田「それはホントにわかりあったりするわけじゃないかもしれないけれど、擬似体験とか擬似集団ですよね、そういうものを作るノウハウが演劇の中には蓄積されているだと思うんですよね。そのノウハウを学んでもらうんですね」

【欧米のコミュニケーション教育】

岡田「コミュニケーションにノウハウはあるんですか?」
平田「そうだね。演劇を経験することによって、自分と違う感性の人と一緒にモノを創ったりする、経験するっていうことが大事なんですね。急にコミュニケーションがうまくなるってことは無いですよ。そういう体験をたくさんして、練習するってことなんですね」
岡田「練習…」
平田「で、ヨーロッパの多くの国々は、このニ三十年間、そういう教育をずっとしてきたのね」
岡田「日本はしてなかった」
平田「してない。だって小中学校で演劇なんてないじゃない」
岡田「ないですね。海外ではそれは基本なんですか?」
平田「そう、普通普通。だからアメリカの大学だと演劇科があって演劇の授業はもちろん出すんだけど、それ以外に他学部他学科の学生向けの授業ってたくさん出してて、お医者さんとかカウンセラーとか先生とか看護士さんとか、そういう対人関係につく職業の人は演劇科の授業を取るんですよ。取ると、アメリカの社会だから必ず履歴書に乗ってキャリアになっていくのね。私は大学でこの授業を学んでいますからコミュニケーションの技術を持ってますってことが、一生付いて回る。そういうことがやっと日本の大学でも普通に始まってきた」
岡田「日本は遅いですね」
平田「全く遅い。30年ぐらい遅れてるかな。この分野に関してはね。要するにね、コミュニケーション能力がある・ないとか、コミュニケーション能力を付ける・付けないじゃなくて、今とかこれからの社会の中でどういうコミュニケーション能力が要求されてきているかだと思うんですよね。例えばアメリカのホテルでエレベーターに他人と乗り合わせて無言ってことはないですよね。知らない人でもなんか声をかけたり、目で挨拶したりするんだけど、日本人はエレベーターに乗ると皆、あの上の表示を見てるでしょ。じゃあ、日本人の方がコミュニケーション能力が無いかというと、僕はそうでもないと思うのね。アメリカという社会はそういうとききちんと私はあなたに敵意を持ってませんよということを言葉にして、あるいは動作でちゃんと示さないと伝わらない社会なわけでしょ。日本はさ、今までは少なくともそういうことをしなくても済んできた社会ですよね。で、どっちがいいのって言ったら、しなくてもいい社会の方がいいていうのも一理あると思うんですよ。でも、もうそうもいかなくなってきた。普通にわかりあったり、察しあったり、共通言語をきちんと持てたりという社会じゃなくなってきた。日本人同士でもそうだし、今はどんどん多国籍化していかないといけないですよね。そのときにはわかってよとか察してよということを通用しなくなりますよね。だから大阪大学の、特に最先端の医療とか、科学者なんていうのは、ほとんどがもう国際共同作業だから、外国人とうまくやっていかなかったらデータとかももらえなくなっちゃうんですよ。だから僕が学長から言われたのは、もちろん海外の学会できちんとプレゼンできる学生を育てたい、でもそれだけじゃなくて、ホントに大事なのは学会が終わった後のパーティーでちゃんと友達が作れる学生を育ててくれと」

【日本人のコミュニケーション能力】

岡田「日本人のコミュニケーション能力は昔より下がっていると見たほうがいいんですか?」
平田「あのね仕事柄、そういうインタビューをマスコミからよく受けるんですね。で、当然マスコミは僕に今の子供たちのコミュニケーション能力は危機的状況ですって答えを期待するんだけど、全然そんなことはなくて、あのそういう親父顔した評論家たちには、でもあんたたちよりダンスはうまいと思うよって、いつも言ってやりたい」
岡田「(笑)」
平田「あるいは自分の思ってることをさ、スピーチではちゃんと言えなくても、ラップでなら言える子もいるわけじゃない。それは全然かまわないでしょ」
岡田「それは偏ってきているということですか?」
平田「いや、違う。表現が多様化してきた。伝わればいいでしょ。もう一つは、例えば外国人と話すなんてことは僕が子供時代、30年ぐらい前までは外交官とか商社マンとか、ほんの限られた人の仕事だったんですよ。でも今はもうどこに住んでても、マンションの隣に外国人が住んでてもおかしくないでしょ」
岡田「そうですね」
平田「だから接触の機会が全然増えてるから、それを前の世代が、今の若い者はという資格は全然無いんですよ。要求されてる水準が高くなっているからね。で、ただね、一つだけ言えるのは、少子化で他人と接触する機会がすごく減っているんですね。兄弟の数も少ないでしょ。そうすると、例えばさ、『ケーキ』って子供が喋ったとしても、兄弟が多ければ無視されるか、せいぜいケーキぶつけられるぐらいでなんともなんないんだけど、今のお母さんは優しいから『ケーキ』って言っただけで、ケーキだしちゃう。もっと優しいお母さんだと、言う前にだしちゃったりするでしょ。とすると、どんどん子供は喋らなくなる。表現力が低下しているんじゃなくて、表現の必要がなくなってきているんですよ、日本の国内では。あるいは教室の中では」
岡田「与えられることが多くなった」
平田「そう。そういう温室のようなコミュニケーションの中でずっと育てられて、でも一歩外に出るとグローバルスタンダードだと言われて、強い説明責任とかを求められるわけでしょ。このギャップに子供たちはおびえて、心の弱い子は心を病んでしまったりとか、ニートやひきこもりになっちゃうんだと思うのね。だからホントは伝える技術よりも伝えたいという気持ちの方が大事でしょ。で、伝えたいって気持ちは伝わらないって経験からしか生まれてこないんだけど、伝わらないって経験が少ない、今の子供たちはね。それをやっぱり少しずつでも体験させてあげることが大事なんですね」

【大人のコミュニケーション】

平田「対人コミュニケーションって相手のことを探りながらだんだん近づいていくわけじゃないですか」
岡田「はい」
平田「だから余計なことたくさん喋んないといけないんですよね。でも今までの日本の学校で教えられてきたコミュニケーション教育っていうのは、スピーチだったりディベートだったり、きちんと喋るように教えられてきて、無駄なことはあまり喋んない方がいいってされてきちゃったのね。ここは一つ間違ったところで、いろんな無駄なことを喋りながら相手との距離をだんだん縮めていくのが、大人のコミュニケーションなんです」
岡田「無駄が大人(笑)」
平田「無駄が大事(笑)」

コミュニケーション、大変ですよね。僕もね、コミュニケーションは、ホントに難しいですよね。なんだろう、モノを作るときのじゃない普通のコミュニケーションだと通じるんですよ、楽しくいれるんだけど。モノを作り出すとね、僕もね悩んでいるんですよ、ここ4年ぐらいですけど。それまではなかったんですよね。でも、自分の好きなものとか、見えるビジョンが変わってきちゃうんですよね、皆と。そうすると、コミュニケーションていうか共通言語が無い、これが一番モノ作りでは辛くてね〜。なんだろ、共通言語がある人たちで集まっちゃうんですよね。うーん。でも合わない人とやることで、なんか新しいものができたりとかしたりもするし。コミュニケーションっていのはホントに大事ですからねえ。ちょっと暗い話になってしまいましたけれど。来年こそはコミュニケーション、皆さん悩むところもあるかと思います、家族・友達・仕事、いろいろあると思いますけど、2008年こそはコミュニケーションをうまく取りたいですね。がんばりましょう。僕もがんばります。

COMMUNICATION BREAKDOWN
LED ZEPPELIN

GET THE PARTY STARTED
PINK

FINALLY MADE ME HAPPY
MACY GRAY FEAT.NATALIE COLE

GIVE IT AWAY
RED HOT CHILI PEPPERS

WAITING ON THE WORLD TO CHANGE
JOHN MAYER

SEND ONE YOUR LOVE
STEVIE WONDER