ONAIR: 2007/06/10「自然との共生ってなんですか?」
中村宏治(なかむら こうじ)さん

水中カメラマン
18歳の時にスクーバダイビングを始め、海洋生物の権威、益田一氏に師事。伊豆海洋公園をベースに、水中撮影を学ぶ。1978年に、日本水中映像(株)を設立。映画、テレビ、CM、大型展示映像など、あらゆる分野の水中映像で、多くの作品を手がける。アメリカ、イギリス、フランス、カナダなど、海外の映画、テレビの水中撮影も担当し、世界で活躍中。
現在、移動式の美術館のノマディック美術館で行われているグレゴリー・コルベールの展示会「Ashes and Snow」では、コルベール氏の重要なパートナーとして水中撮影を担当。(お台場・〜6月24日迄)また、6月9日〜17日(船の科学館)で開催される「第5回 水中映像祭」では、16・17日に上映するスライド・ムービーショーで実行委員長を務めている。
(このスライド・ムービーショーのチケットを4名様にプレゼント。ご希望の方は、お名前・住所・電話番号を明記の上、メールでお送りください。チケット当選者の発表は、発送を持って代えさせていただきます。尚、チケット希望のメールに関しては、6月11日で締め切らせていただきます)

★「Ashes and Snow」
★水中映画祭

今週のテーマ「自然との共生ってなんですか?」

岡田「グレゴリー・コルベールさんとの出会いは何なんですか?」
中村「ある日突然、僕の会社に電話がかかってきて、最初に泳ぐ象を撮りたいって言ったんです。で、僕は泳ぐ象をその電話が来た日の1年半くらい前に日本のCFで撮影してたんです。タイに凄くいい場所があるんですよ。で、グレゴリーが『カメラは何がいいんだ?』と。僕が使ってたカメラは、当時、最先端にあったアリフレックスの『アリ?』っていうムービーカメラで、レンズはこれ、この部分はこれ、といった感じでスペックを説明していったんです。そしたら、1ヵ月後くらいにケース屋さんから凄い荷物が届いたわけ。開けてみたら、ハイドロフレックスっていうケースが届いたの。普通、このハイドロフレックスっていうのは売らないんだよ。リースするか、一つの国に一台か二台、特別な契約を結ばないと売ってくれないものなの。日本でもそういうカメラリース会社が持ってるだけで、個人で持ってる人なんていない。バックオーダーも5年くらいあるのに、僕が言ってから1ヶ月後くらいに新品で着たからビックリしてグレゴリーに電話したら、『タイで象を撮影する時に持ってきてくれ』と。それで、タイで初めてグレゴリーと会ったんです」

岡田「グレゴリーさんってどんな人だったんですか?」
中村「凄くエネルギッシュで、かなり情熱を持ってるようなところがあったんだけど、タイで初めて会った時、僕は生物を撮影するのが専門の人間だから、学者とかと仕事することは多々あるんだけど、芸術家っていうのは一応警戒するんだよね。芸術家っていうのは得てしてわがままだし、とんでもないこと言い出すってのが仕事みたいな人でしょ(笑)。最初は警戒しながら撮影を始めたの。で、僕が泳いでる象を撮影するのかなと思ったら、そこに彼が絡んでくるわけ。で、そのうち、象の下を潜りたいと言い出した。タイでは象の足の下を潜ると幸運が訪れるっていう言い伝えがあるんですけど、そんなに深い所じゃないから位置によっては岸に近くて、象の足が降ってきてリーフとの間に挟まれる危険があるわけ。そんなことになったら即死だから、『もっと沖の方でやらないと』ってヒヤヒヤだった。撮影する人間と生物がいて、生物が全く協力的ってわけではないでしょ。そういうものも含めて、注意しないと事故も起きるなぁと思ったし、生物に関する知識が一番ある僕がしっかりしないとなって思ってましたね」

岡田「今、グレゴリーさんの作品って、凄く世界中で支持されてるみたいなんですけど、これは何故だと思いますか?」
中村「早さとか便利さを追い求めてきたのが20世紀の文明だよね。それで環境問題は20世紀の末から起きてきたんだけど、このままじゃいけないんだって言ってる人達は何が原因なのかってこと考えてるわけだよね。その中でグレゴリーがやってる映像的なことでは、デジタルではなくアナログだし、ファーストではなくスローだし、やっぱり人間が普通の生物のテンポまで戻って、じっくりと他の生き物達との付き合いを考えてやっていく。20世紀の文明っていうのは、僕も生物のことやってるからよく分かるんだけど、例えば分類学っていう学問だって利用できる生物のカタログなんだよ。人間がこの生物を利用していくという図式の元に作り上げられたカタログ…、根本の思想がね。だけど、エコロジー、生態学という学問が、20世紀の末から皆が重要視するようになったのは、人間が他の生物を利用するカタログ作りではなくて、人間が他の生物とどうやって協調して生きていけるかってことを学び始めたことだと思うんです。で、その方向の思想を持ったアートを本気で取り組んだのがこの作品だと思う。僕も最初は『何じゃこりゃ』って疑って見てたけど、僕は生物の専門家だっていうプライドも自負もあるから、アーティストがどこまで生物のことを理解できるんだ、と。グレゴリーも最初は生物のことがあまり分からなかったけど、真剣にやってるのが分かってきて、僕も本気で教えたし、本気でケンカしたことも8回くらいあったかな(笑)。でも、続けてきて良かったなと思う。今回の『Ashes and Snow』もそうだし、ヴェネチアのもニューヨークのもサンタモニカのも観てきて素晴らしいと思うし、僕ではここまで表現できないなと思う。僕が生物を撮っているよりも、彼のパフォーマンスが加わることでもっとパワフルな表現ができたなって思う」

岡田「中村さんにとって、グレゴリー・コルベールの『自然と共にある』とフィットした部分というのは?」
中村「僕は海の生物を撮影するのが専門で、それはグレゴリーと会う前から一生懸命やってきたことなんですが、どれだけ一生懸命やっても中々うまくいかない。何故なら、彼らは野生の生物だし、どうやって野生の生物をうまく撮影するかっていうのはリスペクトしかないわけだよね。といっても尊敬して、崇め奉るんじゃなくて、やっぱり、奴らと僕らは同じベースに立った生き物なんだっていうことから、彼らを少しでも理解しようと思って、素で理解しようとする。例えば、鯨が見せるほんのちょっとした動作だとか、1cmの魚が見せるほんのちょっとした目の動きだとか、僕らは感じ取れるわけ。そこから、次なる動きをね。そういうことから海の生き物を少しずつ理解できる感度が良くなってきて、それで海の生物を撮影するってことを作り上げてるわけでしょ。その中にグレゴリーが入って来た時に、今度は彼を撮影するのか野生生物を撮影するのかっていうジレンマが出てくる。グレゴリーが遅いがためにカメラに入りきらないとか、逆に僕が遅れちゃって撮れないとか、色んな失敗があるけど最終的に僕がグレゴリーとうまくシンクロできた時、グレゴリーがパフォーマンスをしているところに野生生物が入ってきて、どんな反応をするか。『何じゃこりゃ』って思うのか、それとも好奇心を燃やすのか、その反応を撮るのが、この『Ashes and Snow』での僕の最大の仕事だと思ってる。で、そういう風に考えるようになってから、こんなに美しくて素晴らしいシーンを撮影できることが、僕は本当に幸せだなと思ってる。野生生物という考え方から見て、『人間って何なんだ?』と思った時、『水の中に住んでる生き物じゃない。でも、わざわざ水の中に潜ってきてパフォーマンスをしている』。それを野生の生き物達が見て、人間という風に認識はしないかもしれないけど、『人間だからこそ、ここでこういうことをしてんだな』と。エサを探すでも繁殖するでもないんだけど、自分の表現をしている。『表現をする生き物が人間なんだな』と。その表現を見た野生の生き物達の反応を一枚の写真に撮る俺も、人間としての行動をしている。凄く素晴らしいチャンスを与えられたんだなと思って、作品に凄く愛着があるし、この『Ashes and Snow』で作られたものっていうのは本当に自分の一部だと思う。『Ashes and Snow』の一部になれて、凄くいい経験をしたなと思うな」

この空間は卑怯ですよ(笑)。卑怯って言っちゃうのもあれですけど…(笑)。
まず、音楽を使っているとかね。普通は音楽がないんですよ、アートプロジェクトって。基本的にはね。客観的に言うと、やっぱり色んな人の作品があって、その人のテイストに合わせなくちゃいけないから、グループ展とか何点か入ってると曲が流せないわけですよ。色んな人のイメージがあるから。だけど、グレゴリー・コルベールの空間は、音楽もあるから視覚だけじゃなくて聴覚とか気温とか、映像もあれば写真もあるし、自然との共生ってこととか、謳ってはいないけどリサイクルとかね。坂(茂)さんの建築でも、何の芯なんだろう…、何かの芯を組み立てて物販コーナーとか作ってるんですけど、それもゴミだった物を使ってたりするし。なんか、五感を刺激するアートプロジェクトって、これは全部の芸術なんだということを分かって欲しい、と。作品一つ一つだけではなくて、総合芸術だってことを分かって欲しい、ってことを言っていて、まさにその通りだなぁと思わせてくれる空間なんですよ。

普通の絵とかを見るのも楽しいかもしれないですけど、やっぱり視覚だけでは僕としても物足りなかったりとか。
・・・あるんですけどね、「視覚だけで温度を感じ取れよ」みたいなこととか。アーティストの中では温度だったり、音色だったり、「無音の方がいいんですよ」ってことも色々あると思うんですけど。
でも、やっぱり、グレゴリー・コルベールは作品に力があって、中村さんとコルベールで撮った作品もそうだし、映像もそうだし、メッセージもあるし。作品自体に動物と人間の境目がなくて・・・。なんか、全部リアクションを撮っていってる感じはしましたけどね。観に来る人のリアクションだったり、その場でのリアクションだったり、コルベールが踊っているものを撮っている中村さんは、コルベールを見た動物達のリアクションを撮っていたりだとか。
結局アートとかって、リアクションが全てだと思っているので、リアクションがなければ始まらないし、作品を創るにしても観る人のリアクションだったり、これを描いた時の何かのリアクションだったりっていうものがアートだと、僕は思っているんですよ。

まぁ、とにかく、ずっと居られちゃいますね。そういう場所って凄く大事なんだと思うんですよ。「なんか、いい空気が流れてるなぁ」とか、押し付けがましくない感じというか。
「いいことしようよ!」っていう広告って結構沢山あって、僕はそれを楽しまないと意味がないと思っているので、そういうことを押し付けがましくなく「忘れないでね」って優しく言ってもらえるような感覚のする展覧会だなぁと思ってます。これが終わると当分日本に帰ってこないようなので、皆さんも是非一度、観にいってみてください」


×  ×  ×  ×  ×


岡田「さて、最後になりますが、中村さんから紹介していただける方がいらっしゃるということなんですが…」
中村「皆さんに是非、知っていただきたい人なんですが、「Ashes and Snow」のベネチアの展示の時からグレゴリーの重要な相談役というか、パートナーでサポーターをやってきてくれているダビデ・トゥルーケットさんです。イタリア人なんですけどね」
ダビデ「どうぞ宜しくお願いします」
岡田「(日本語)うまいですね。宜しくお願いします。なんか、コルベールさんから日本の皆さんへのメッセージを持ってきてくれたとお聞きしたんですけど…」

〜“Ashes and Snow”の目標は世界を旅することである。自然を思い起こすための体験である。自然は人間のものだけではないということを思い出してください。自然の尊厳を失うことで人間の尊厳をも失うことになる。“Ashes and Snow”はこのメッセージを体験できる空間であることを願っています〜
グレゴリー・コルベール

1.NORTH SHORE SERENADE
NA LEO

2.FREE
DONAVON FRANKENREITER FEAT.JACK JOHNSON

3.CHILDHOOD
MICHAEL JACKSON

4.SWIM
PAPA’S CULTURE

5.LOVE LOVE LOVE
TRISTAN PRETTYMAN

6.HEY YOU
MADONNA


「つい2日前に観てきた「Ashes andSnow」に参加しているカメラマンさんの話であり、とても興味深く聞かせてもらいました。岡田くんも言ってましたが、所謂アートフェスタとはかなり違った趣向性がふたりの会話からよく解ったし、クジラと写っていたヒトがグレゴリー・コルベール自身だったということに驚きました。そして、命がけで作品に向かう中村さんやプロジェクトメンバーの苦労や真剣さを感じられて、作品をより深く知ることができたことがうれしいです。中村さんのジェットスクーターでやられたマッコウクジラは少しかわいそうでしたけど。この回の岡田くんはいつもよりたくさん話して、アートがすきなんだなぁと感じられました。コンテナと旅をするなんてステキですね。でも、地球環境のためには、移動に伴う燃料排出は最小限にしてほしいとも思います。ゲストはカメラマンの中村さんなのに、Ashes and Snow の裏話的内容でもあって、とても充実したお話でした。最後のコルベールさんからのメッセージからは、「芸術は人間の良心そのものなんじゃないかな」と感じられました。これからもいろいろな方々の話を岡田くんといっしょに聞いていきたいと思います」(つゆさん)

「前日の9(土)にashes and snowに行き、会場でこの番組のことを知りました。中村氏による撮影秘話を聴きながら、昨日見た映像や会場の空気感がどんどん蘇ってきました。岡田さんが言っていた"五感””総合芸術”のキーワードがまさにピッタリの展覧会だったと思います」(kumakumaさん)

「いつにも増して岡田さんのワクワクした感じが伝わってきました。いますぐにでもお台場に行きたくなったほどです。私も水族館とかプラネタリウムとか、星や月や絵など眺めたりとか大好きで、広い意味ではこれも自然との共生かな。生きている自然(動物や植物など)はもちろん、例えばそこにある建物だったり、空気だったり、環境だったり、感情だったりあるがままを認めて受け入れることが共生の一歩なのかなと感じました。グレゴリーさんの作品絶対観に行きます!」(のとっちさん)

「ノマディック美術館についてはテレビなどで何度か拝見していてとても興味があったのですが、詳しい内容がわかっていなかったので今日、中村さんのお話を聞けて非常に嬉しかったです。まっこうクジラのお話や、撮影中の裏話、コルベールさんとの信頼関係などとても興味深いお話が多く、聴き入ってしまいました。自然・動物達をリスペクトする(素で理解しようとする)ことで共生への道が開ける。簡単そうで実はすごく難しいことですよね。最後のコルベールさんの言葉『自然は人間のものだけではない。自然の尊厳を失うことで、人間の尊厳も失うことになる』これを人間一人一人が心に留めておくことで自然との共生ができるのかもしれませんね。『Ashes and Snow』ますます興味が湧いてきました。絶対行かせていただきます」(みなみさん)

「"ashes and snow"は始まってすぐに観にいきました。何と言って良いか、本当に感動して、いままでの価値観が覆るほどでした。きょうの中村さんの撮影のときのコルベールさんのお話を伺って、あのつたわってくるものが、彼の全身全霊をかけたものだと改めて感じました。もう一度、見に行こうと思います。"growing reed"は、初回から毎回聴いていますよ。とてもinterestingなもので、岡田准一さんの感性の良さを感じています。とても好感を持っている男優さんのひとりです。では、また」(Shigeさん)

「写真から想像することが好きです。「誰でも撮ることが出来るもの、写真というものはプロにとって伝える力が重要ではないだろうか。」と私の師匠が言ってました。その力に動かされたい。その想像の世界に没入したいと思っています。グレゴリーさんの作品を実際に見ていないですが、その力を感じます」(ma=saさん)

「話を聞いていて面白そうだなぁと思い、ラジオを聴きつつインターネットで今話している展覧会のHPを検索してました!お二人の話によると本当に魅力的な展覧会なんだなぁと感じました!是非行ってみようと思います!!」(碧イルカさん)

「私もノルマディック美術館見に行きました。美術館内の世界観はすばらしいですね!移動式の美術館ということと、周りのコンテナからはもっと簡易的な内装だと思っていました。しかし、中に入った瞬間どこか違う場所に来たのかと感じてしまいました。写真や映像・音楽・空間全てが一つの芸術となっていて、見ているというより中に入っている気分でした。機会があったらまた行きたいと思います!できれば人があまり入っていない時に」(tomomiさん)

「本日のテーマに耳くぎづけです。昨日、グレゴリーコルベール展鑑賞してきました! 祈りを感じる作品に鳥肌がたつほど感動しました。水中の映像は中村さんだったことに驚きました!本当に素晴らしいかったです。呼吸の水泡が上がらない神秘的なシーンに息を止めて見入ってしまったほどです」(みぎみぎさん)