FUTURISM

ON AIR DATE
2017.05.07

ゲストは、生物学者の福岡伸一さんです。

文京区の印刷博物館で、様々な技術を体感しながら、
芸術作品の未来についてお届けします。

SONG LIST

  • Gone
    Open Reel Ensemble with 高橋幸宏
  • Rapt In Fantasy
    石野卓球
  • Canvas
    Imogen Heap
  • Today
    Zero 7
  • In Another Time
    Sade
福岡伸一さんとの話を通じて見つけた、未来を創る鍵。
それは、
<フレームの外を見よう>

「ヨハネス・フェルメールは、写真のような三次元空間を二次元の絵にする試みをしたサイエンティスト」だと福岡伸一さんは言います。
それを聞いて、生物学者である福岡さんが画家のフェルメールの熱心なファンである理由がわかった気がしました。
そう、2人ともサイエンティストなのです。

福岡さんは、デジタルリマスタリング技術によって、描かれた当時の色調とテクスチャーを求めて再創造するリ・クリエイトというアプローチで、世界に点在しているフェルメールの37作品全てを1箇所で鑑賞できるようにするプロジェクトを展開しています。
行方不明であったり、美術館が門外不出としている作品も含まれていますから、テクノロジーの力がフェルメールとの距離を縮めてくれます。
リ・クリエイトが発展し、フェルメールの技法を習得した人工知能が38作目を描くなんていう日も来るかもしれません。

デジタル的に美術を再創造することで、作品の新しい楽しみ方を見出し、絵と絵の間に隠されていた文脈や物語が見えてくる。
それは、印刷博物館内で福岡さんと一緒に鑑賞したView Paint(凸版印刷提供)によるフェルメールの傑作のひとつ『牛乳を注ぐ女』からも感じたことです。
View Paintは平面に描かれている絵画を三次元で再構成し、様々な角度から鑑賞できる技術です。
長らく謎であった牛乳を注ぐ女の前にあるテーブルの形状も表現されていたりと、View Paintならではの新しい発見がいくつもあります。

同館内にあるVRシアターでは、視野角120度、高さが4メートルもあるカーブ型スクリーンで、法隆寺へと「バーチャル・トリップ」しました。
法隆寺内では禁止されているドローンを縦横無尽に飛ばし、上から下から法隆寺を楽しめます。
本物の法隆寺では鑑賞できない角度から眺めてみると、新しい発見も。
細部まで精密に再現されたVR法隆寺を見学していると、思わず旅行気分に。

これまでの美術作品は四角い枠の中に閉じ込められ、限られたウインドウから世界を覗いていました。
一方、技術の力でフレームの外側に想像力を広げてくれたのが、この『牛乳を注ぐ女』や法隆寺です。
VRが、想像力や視野を広げること、未来にやるべきことを提案しているかのようでした。
ほとんどの絵や写真は四角の枠の中に収まっていますが、その外側にまで我々の視覚や体験を延長してくれる。
これぞVRの可能性なんですよね。

私たちは、慌ただしい毎日の中で目に入ったものだけに視野を奪われ、大局観をなくしがちです。
そんな時は、フレームの外側に思いを馳せてみましょう。
窓の外側に広がりがあるのは、絵だけでなく私たちの日常生活も同じ。
フレームの外に目を向けると、きっと新しい発見があるはずです。

小川 和也