2005年6月。アンドレア・ポンピリオとMODAISTAは、伝統とモダンが共存する街:ス
ペインのバルセロナにいました。World Walk Edition inバルセロナ。見えない磁力
にひきつけられるかのように、MODAISTAが向かったのは、建築家:アントニオ・ガウ
ディが残した壮大なプロジェクト:サグラダファミリア大聖堂。120年以上も前に、
ガウディが人類に残したメッセージとは何なのか?その答えを模索していたときに出
会ったのが、主任彫刻家を務めるる日本人:外尾悦郎さんでした。
ガウディは何を伝えたかったのか?サグラダファミリアはいつ完成するのか?この謎
解きに27年間向き合い続け、石に刻みこんでいる外尾さん、彼の言葉ひとつひとつ
が、大聖堂の鐘のように、アンドレア・ポンピリオの胸をジンと打ちました。
運命的な出会いから9ヶ月、新しい年を迎える前に、あの感動をもう一度確認した
い。ミライへの大きな1歩をふみだす、原動力になるかもしれない。そんな思いか
ら、今日の「TOSHIBA/Future Lounge」は、外尾悦郎さんの言葉を、フラッシュバッ
クしたいと思います。未公開パートを交えながら、最高のインスピレーションをお届
けします。
ANDY(以下、A):「外尾さんは、ガウディに出会ったっていう瞬間はあります
か?」
外尾悦郎(以下S):「いい質問ですね。実は仕事を始めた瞬間から、ガウディに少
しでも近づきたくて近づきたくて、じっと見てたんです。ガウディが残した資料とか
言葉を読んだりして、1ミリでもガウディに近づこうと戦ってきたんですよ。でも
ね、ガウディの遺志に沿った彫刻というのは、ガウディを見ていたんじゃできないん
です。一生懸命ガウディを見ても分からない、と思った時に、ふと、『ガウディは僕
なんか見てないんだ』って気が付いたんです。
僕はガウディを見過ぎていたんだと。じゃあ、ガウディはどこを見ていたんだろう?
彼の見つめていた方向を、一緒になって見ることによって、初めてガウディを見るこ
とができるんじゃないだろうか? そう思った時に、ガウディが僕の中に入って、僕
もガウディの中に入った。初めて、ガウディと一緒になれたという気がしたんです。
でも、ガウディが見ていた方向はなんとなくわかるけれど、具体的に何を見ていたの
かは、まだ分からない。それが僕の今後の課題でしょうね」
A:「建築物のシンボリズムや、ひとつひとつの彫刻のエレメントなのかもしれませ
んが、サグラダファミリアを見た時、なんか未来の方向に向かっているような気がし
たんです。じゃあ『何が未来か』っていうと、「ロケットの形」とかそういうんじゃ
なくて、「自然の形」のような気がするんですよね。「これは樹を象徴しているな」
とか、自然そのものに戻っていくというか、今、世界がテーマとしている部分を、ガ
ウディは当時すでに感じていたのかな、と思ったんです。
S:「あなたはとっても大事なことをおっしゃった。アートとか芸術とかいうもの
は、「いつも」新しいんです。いい彫刻・いい絵画・いい小説・いい音楽etc…それ
らはすべて、空間や時間をまったく無視できるんです。つまり、人間にいつも感動を
与えられる、それが芸術なんです。古いから感動するんじゃなくて、常に新しいから
感動できるんです。そして、人間が一生懸命感動できるものを造るとき、そのヒント
は常に周りの自然にあるんです。バラだって何千年も前から同じ花を咲かせているの
に、常に人を感動させることができる。自然は、決して人間を飽きさせない。人間を
常に飽きさせないもの、それが自然と芸術です。だから僕に言わせれば、彼は「初め
て21世紀に入った人」。最初に21世紀に入り、もしかしたら、人類の道筋を創った人
物だと思うんです。だから僕たちは、ガウディのメッセージを再確認しなくちゃいけ
ないのかもしれないですね。」
A:「このサグラダファミリア、20年で終えられる作業なんですか? それとも終える
作業なんですか?」
S:「この質問にはいくつかのテーマがありますね。まず『終える』とはどういうこ
となのか、考えなくちゃいけない。みんな『完成する』ということを無条件にひとつ
の行為だと思っていますけれど、『完成』にはいくつもの段階があるだろうし、よし
あしもあるだろうし。僕の言葉で言えば『完成』とは、それ以上やることがない・す
べての仕事はやり終えた、という状態。じゃあこの教会の『完成』はいつかという
と、僕はないと思うんです。多くの人は『完成』を無意識のうちの望ましいことだと
思い込んでいるけれど、モノを作る人間にとって『完成』ほど悲しい瞬間はないんで
す。だって、これ以上手を加えることができなくなるから。
ガウディは『人間は常に自然から発見する。人間が行うことはすべて、自然の中に書
き込まれている』という言葉を残しているんですけれども、そういう意味でいうと、
自然には『完成』はないんです。『あなたは完成品ですよ』と言われることは、生き
ものにとって辛いことです。人間は、明日は今日よりももっと良くなれる、と思うか
ら生きていけるんです。明日がどんな日になるか、まったく分からないからこそ、ど
んな弱い人でも生きていけるんです。もしタイムカプセルか何かでミライが分かって
しまったら、誰も生きていけないでしょう」
S:「この教会には、建築家だけじゃなくて、有名な医学者や政治家など、いろんな
人が来ましたが、不思議なことに、その人たちが常に疑問に思っていること・欲しい
と思っている答えが、必ずここにあるんです。それはジャンルを問わない。ガウディ
は本当に不思議なものを作ったなあと思いますね。だから、石になった彫刻を置いて
いくのが建築ではなくて、ガウディの精神を次の世代に伝えていく、それが本当のサ
グラダファミリアじゃないかなと思っています」
外尾さん、そしてガウディが我々に発信するメッセージは、2006年をふみだす我々
に、大きな勇気を与えてくれました。
このインタビューは、ノンカット/フルバージョンを音声ストリーミングでお聞き頂けます。
INTERVIEW with 外尾悦郎 6/16 2005 at バルセロナ,サグラダファミリア大聖堂
TRACK.1 『ガウディの「石」と「意思」』(7'11")
TRACK.2 『最初に21世紀に入った人、ガウディ〜ガウディが示した「人類の方向性」〜』(8'51")
TRACK.3 『サグラダファミリアの「完成」』(6'55")
TRACK.4 『「時」は神が創った。時計は人が作った。』(8'06")
TRACK.5 『次世代に伝えるスピリット』(3'47")
TRACK.6 『今日を一生懸命生きる!』(1'59")
TRACK.7 『リスナーへのメッセージ〜外尾氏が語る、生きるヒント〜』(1'44")
TRACK.8 『サグラダファミリア大楽器計画〜鐘の音〜』(1'19")
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