J-me Chinema Circle

僕と世界の方程式(X+Y)

2017年1月20日

私には北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」を読んで、「医者になって世界中フラフラしてやる」と決意した時期があった。祖父も父も医者だったから、深く考えもせず、ありえない妄想を抱いても仕方なかろう。先日、小学生の時の作文ノートが出てきて、恐る恐るページをめくっていたら「どくとるマンボウ航海記を読んだ」「船医になろうと思う」と書いていたから、そこそこ本気だったようである。アホだ。

中学校までは数学も苦手ではなかったから、どんな船に乗るかも考えたこともある。死にたくなるくらいアホだ。

高校の最初の数学の授業でいきなり笠松という数学の先生が「サイン、コサイン、タンジェント」という呪文を唱え、「石津くん、この答えは?」「○○です」「はい、大倉君、これは」「・・・・・」という恐怖体験を味わってしまった私は、それ以来数学から半径1メートル以内に足を踏み入れることはなかった。
あんときなんでみんな答えられたの?
予習?
そんなこと最初の授業でやんなきゃいけないの?
その時点で私は医者になるつもりだったことも忘れてしまった。

ところが不思議なもので、40歳を超える頃から数学に憧れを抱くようになってしまった。素数に興味を持ってしまったからである。
その数字と1でしか割り切れない整数が素数である。
放送で「奇蹟がくれた数式」を紹介するときに少し話したけど、素数は美しいのよ。理由はないけど、説明しようがないくらいキラキラ光っている不思議な素数。永遠に続く数字の中でどこに出てくるか法則が発見できていない素数。だけど、11と13のようにひとつ数字が飛んだだけの双子素数はいくら数字が大きくなっても出現する。
どんな暗号が素数には隠されているのか。
もっと詳しく知りたい人はマーカス・デュ・ソートイの「素数の音楽」を読んでください。私は半分も理解できなかったけど、最高に胸躍る本です。

そんなわけで、私は数学がテーマの映画、小説は数式の内容が理解できなくても大好きである。

自閉症スペクトラムと診断され、人とのコミュニケーションが苦手で、息子を心から愛している母親ともうまく交流できないネイサン。
しかし、彼は幼い頃から数学に関しては飛び抜けた才能を発揮していた。そんなことってあるのだろうか。あるのだ。この作品は実話からインスピレーションを得て制作されたものだもん。
話がそれだけなら「ヘー、すごいね」で終わるのだが、それではここで紹介する意味がない。
彼は数学オリンピックのイギリス代表の候補に選ばれ、台北での特訓合宿に世界中から集まった同世代の子供たちと参加することになる。
数学だけが彼を救っていたのだけど・・・、という具合にこの素敵なお話は展開していく。

いいなあ、数学で心も人生も輝くし、大事なおまけもついてくる。
ただただ羨ましい、若くなりたい、数学がいきなり理解できいるようになりたい。
これからサイン、コサイン、タンジェントをもう一回やってみよう、という気にはならなかったけど、数式を壁という壁に思いつくまま書きなぐってみたい。

高校の先生にあえて数学ポンチの私がお願いしたいことがある。この数式、公式にどんな意味があって、これが理解できればこんな楽しい世界が君を待っているよ、ということも教えていただきたい。
私と同じ高校を出て、すーっと東大に入った久田くんは「高校の授業で何かを学んだという記憶はないな」と言ってましたぜ。あのスーパー優等生がそんなことを、と思うかもしれないけど、大切なのは、学ぶこととは覚えることじゃなくて、何を意味するのかを理解することであります、なんて偉そうに書いてみたりして。

ややこしい映画じゃありません。
どなたでも「よかったね」と恋人と映画を観た帰りに、居酒屋でホッピー飲みながら焼き鳥をつまみつつ語り合いたくなるような作品です。「X+Y」って原題もすごくいいのよ。観ればわかります。
映画の内容をほとんど書かなかったけど、信用してくださいな。

1月28日公開。


僕と世界の方程式

2017年1月28日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次ロードショー

【配給】レスペ

© ORIGIN PICTURES (X&Y PROD) LIMITED/THE BRITISH FILM INSTITUTE / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014
オフィシャルHP

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