2015/3/20 Bach in the Subways Day の Hidden Story

3月21日は、歴史にその名を刻む作曲家、音楽家、ヨハン・セバスティアン・バッハの誕生日。
今年は、生誕330年にあたります。

「音楽の父」とも呼ばれるバッハの誕生日を祝うため、世界の39カ国、129都市以上でバッハの音楽が演奏されます。それが、Bach in the Subways Day。
Bach in the Subways

その名の通り、バッハの曲をニューヨークの地下鉄で演奏したのがはじまりです。

ニューヨーク在住のチェリスト。デール・ヘンダーソンが、前々から路上演奏をよくやっていたんですが、2010年の3月21日に限って、ふと思い立って「そういえば、今日はバッハの誕生日だ」ということで、……いつもは路上演奏というと、道で弾きながら、聞いていただいた方にドネーションなどをいただくのが普通なんですけども……今日はバッハの誕生日だから、そうじゃなくて「お祝いの気持ちをまわりの人たちと分かち合おう」と思ってポストカードを自分で印刷しまして、ニューヨークの地下鉄に行って、それで弾きながら、チャリンとしてくださる方達にお断りして、その代わり、今日はバッハの誕生日なのでポストカードを刷ってきたのでこれ持って行ってください、ということをしたのが、2010年の3月21日なんですね。

2010年、たった1人が始めたこのアクション。
ニュース専門放送局CNNでも取り上げられ、多くの人が知ることになります。
その輪は どんどん広がりました。

2014年、去年はもっとその輪が広がりまして、アメリカとカナダ以外にドイツと台湾にも広がりました。
4カ国12都市で77人の演奏者が参加しての Bach in the Subways になりました。

そして、今年、日本でも初開催となるわけですが、きっかけは、今回取材にお答えいただいた李融果さんがネットサーフィンをしていて、Bach in the Subways の記事を見つけたことでした。

たまたま、私が2014年の7月に、何の気なしにネットサーフィンをしていましたら、こういうものがあるというのをインターネットで知りまして。

2015年の3月21日は、自分もすごく下手なんですけどヴァイオリンを弾くんですね。   友達と一緒に「日本でやろうよ。どっかの公園でやろうよ」と思って。

ニューヨークに「3月21日は自分たちも参加したいんだけど」とメールしたところ、ファウンダーのデール・ヘンダーソンのところに届くんですけど、デールから、日本には他にオーガナイザーがいないからあとよろしくって言われまして。

さまざまな街角で、バッハの音楽の生演奏が 無料で楽しめます。

こういったムーブメントを音楽家の人たちがみんなボランティアで参加してやっているわけですけども、なぜ、時間やお金を犠牲にしてまでこのムーブメントを盛り上げていこうと、日本だけじゃなくて世界的になぜそうなっているのかと言いますと、背景に、クラシック音楽が今ちょっと元気がないといいますか……

クラシックって堅苦しいよねとか、聞いても分からないとか、クラシックって自分とは関係ないよね、というような、そういう空気があって、本当はそうじゃなくて身近なものだし、やっぱり生の音を聞いて貰えば、すごくエキサイティングなものだというのを知ってもらいたい。というのが、みんなありまして、演奏者の方達もどんどん集まってきた感じです。

日本でも多くの演奏家がこの趣旨に賛同。
昨年、バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝した岡本誠司さん。東京都交響楽団のトランペット首席奏者、高橋敦さん。メイン会場である表参道ヒルズの他、さまざまな場所でバッハの曲が奏でられます。

最初にニューヨークでこのアクションを始めたチェロ奏者、デール・ヘンダーソンさんは、この広がりについて、こんな感想を持っています。

とにかく、バッハの誕生日に音楽をわかちあう。音楽の贈り物をする、ということがニューヨークから始まって、バッハの本国であるドイツ、ライプチヒも賛同してくださったり、アジアでも日本、韓国、中国、インドネシア、フィリピン、シンガポール、アジア人も賛同したり、ナイジェリアでもあったり、ドバイでもあったり、「国境、人種、言語を超えて、彼が根本で思っていた事をみんなでやる」というのが嬉しいそうです。

最後に、Bach in the Subways Japan の李融果さんにバッハの魅力について、語っていただきました。

これだけ構成がしっかりして、骨組みがしっかりして、希望のメロディを作れる。すごく宗教的なところもありますし、気持ちが……何て言うんでしょう……短調な曲でもどこか希望が見える曲を作るって、すごいなと思います。

作曲家って気まぐれだったりとか、そういうところもあると思うんですけど、すごくしっかり、頭脳明晰な中に明るい希望の曲を書くというのが、頼りにしていたり、信頼していたり、「やっぱりバッハだね」と言われる所以だと思うんですが。根本の部分で、「色々なことがあっても前を向こう」というのがバッハ自身にあったのかなというのを感じます、私自身は。

どんな曲からも聞こえてくる希望の響き。
だから、人々は彼のことをこう呼びます。「音楽の父」。

今だからこそ耳を傾けたい、音楽の父が その曲に託した想い。
人種、国境、言語を超えて、希望のメロディが世界をつなぎます。


3月21日に、世界で同時開催される作曲家、バッハにまつわるイベント Bach in the Subways の Hidden Story。

日本では、大阪、京都、奈良、広島、そして東京などで開催。
東京は、表参道ヒルズがメイン会場です。

古い楽器「ピアノフォルテ」の演奏や、オーケストラの演奏、さらに、バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝した岡本誠司さんの演奏もお楽しみいただけます。

観覧無料ですので、ぜひバッハの音楽に、生で触れてください。
Bach in the Subways