2015/2/20 ベイマックスのHidden Story

大ヒット中のディズニー映画「ベイマックス」。そこに登場するロボット、ベイマックスのコンセプトデザインを手がけたのは、日本人のコヤマシゲトさんです。今週は、そのコヤマシゲトさんに伺った「ベイマックス」のHidden Story。

©2015 Disney. All Rights Reserved.

「ベイマックス」の舞台は、サンフランソウキョウ。サンフランシスコと日本からインスピレーションを得た架空の都市です。そこに暮らす少年ヒロと兄タダシ。その兄が作ったケアロボット—傷ついた人をケアしてくれるロボット—がベイマックス。そのコンセプトデザインを担当したのが、コヤマシゲトさんです。

BIG HERO 6 - Concept Art by Shigeto Koyama. ©2014 Disney. All Rights Reserved.

まずはこの質問。コンセプトデザインとは どんなことをするのでしょう?

一般的にコンセプトデザインというのは、その登場するキャラクターとかが、どういう形をしているのか、ということの、構造というか……例えば物語とか、映画のなかに含まれている要素を抜き出して、アイディアとして出していくという形ですね。

最終的な決定ではなくて「こういう可能性があるのではないか」と、可能性をどんどん探っていく作業というか、色々なパターンを出して—「こういう可能性がある」「こういう可能性がある」というのを出して—それを本国のディズニースタジオのほうで、どんどんまとめていくという作業ですね。

そもそも、コヤマさんが、この作品に関わることになったきっかけは新作の取材のため 東京を訪れた ドン・ホール監督と食事をしたことでした。

たまたま監督がこの新作の取材で東京に来るということで、そのときに、僕の友人でもある翻訳家の柳さんがアテンドをしたという経緯もあって、一緒に食事をしましょう、ということになって。

その時に、色々なロボットアニメであるとか、日本のアニメのおもちゃとか、フィギュアを参考用に資料として買った中で、「面白いものを見つけた」ということで「そのロボットって何ですか?」と聞いてみたら、たまたま僕がデザインしたロボットのフィギュアだったんですね。

コヤマさんがコンセプトデザインを担当したのは、物語の中心となるケアロボット、ベイマックス。

基本となっているものについては、もともと、監督から丸くて巨大な、というか、フォルムというか、こういう風にしたいという希望は、監督からのスケッチとかでもあったんです。

医療用ということで医療用のシリコンラバーみたいなボディで全部包んで、というところまでは決まっていて、ただ、そこをどういうデザインにするかは決まっていなかったので、そこで監督から「鈴」のアイディアが出てきて。

最初、口に鈴がある、という形だったんですけど、それだとロボットというよりはキャラクターというか、まあ、これはロボットなのでプロダクトなので、人が作ったものなので、そういうニュアンスにするならば、目にしたほうがいいんじゃないですか?ということで、幾何学的にすることでロボット感を出せるんじゃないかということで。

BIG HERO 6 - Concept Art by Shigeto Koyama. ©2014 Disney. All Rights Reserved.

ベイマックスの目の部分。
あの穴の形は、日本の「鈴」をモチーフにしたものだったのです。

実際の作業はこんな風に進みました。

Skype でつないで、向こうのディズニースタッフと直接やりとりをする、という感じですね。

例えば今回劇中にも登場したロケットパンチだとかウイングだとか、そういう芝居に使う要素はこちらからもアイディアを出して、ロボットアニメという日本で発展した部分もあるので、日本だったらこういう形があるけど今回だったらこういう形がいいんじゃないかとか……アイディアを出していくという感じですね。

そして、もうひとつ、日本とアメリカをつなぐ、こんなHidden Story。

ベイマックスのアーマーはつま先がないんですよね。アーマー着ている状態のつま先というのが、ほとんどつま先というのが、接地面に対して筒状のものがドンと床に落ちているフォルムをとっているというか、それはもともと、ルーツになっているのは手塚治虫さんなんですよね。

で、手塚治虫さんのキャラクターのルーツにあるのは、ディズニーのアニメーションのキャラクターで、だから1周してるんですけど、僕は日本ではこれが好きでずっとやっていて、だから何て言うんだろう、ディズニーから影響された手塚治虫さんが日本で作ったものをもう一度ディズニーに戻すというか。そうやって混ざっていくというか、日本とアメリカで開発されたものが。
それがいいかなと思っていて。

アニメーションの歴史という縦軸、そして国境を越える横軸がクロスした地点。
『ベイマックス』は、そこから生まれた作品でした。

何となく言葉の壁というか、「他の国の人と分かりあえないんじゃないか」と自分の方から思いがちだと思うんですが、それは自分の側で作っちゃってる壁で。でも、絵って、見せればすぐ伝わるんですよね、一瞬で。

海外で僕もどんどん仕事をしたいし、する人増えるんじゃないですかね。
おそらく海外の人も、どんどん日本で仕事をするだろうしっていう、どんどん混ざっていくんじゃないかな、それが僕は楽しいと思ってますけどね。

人とつながることの面白さっていうのが、アニメーションの基本だと思いますね。

アニメーションって集団作業なんですよ。今回でいえば、僕もそうだし、イラスト、イメージボードで参加された上杉さんもそうだし、日本だけじゃなくてアジア、ヨーロッパからスタッフが集まって作っているわけで。「面白いから、みんなもっとやったほうがいいよ」と思いますね。

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まさに様々な人が混ざりあって完成した『ベイマックス』。
言語がちがっても、国がちがっても、アニメーションが多くのスタッフをつなぎました。

そして今度は、その作品が世界の人々をつなぎます。

人を癒すケアロボットが、悲しいニュースの繰りかえされる世の中にやさしい風を吹かせてくれますように。