2015/1/9 ポスターでみる映画史Part2 ミュージカル映画の世界の Hidden Story

京橋にある 東京国立近代美術館フィルムセンター。
7階の展示室で今週始まった「ポスターでみる映画史Part2 ミュージカル映画の世界」。

その中で、ひときわ大きな存在感を放つのが、オードリー・ヘップバーン主演の映画『マイ・フェア・レディ』のポスターです。

今回、1枚だけ非常に大判の日本版のポスターを展示しました。
『マイ・フェア・レディ』です。

1964年の映画なんですけど、1964年というのはミュージカル映画にとっては、かなり大きな意味を持つ年で、実は50年代にMGMミュージカルの最盛期が訪れたんですが、その後、大作化が進むんですね。このポスターなんかはその作品世界を象徴するような色々なシーンを散りばめたイラストなんですね。

この画像というのは世界で使われて、日本版でも、そのイラストを丸ごと活かしたデザインになっているわけです。
教授とイライザの交流ですけど、その間にあったいろいろなシーンが見事に構成されているんですよね。荒っぽく色を塗っているようで実はかなり繊細に描かれています。

今回、取材にお答えいただいたのは、東京国立近代美術館 フィルムセンター主任研究員の岡田秀則さん。

「ポスターでみる映画史Part2」は、どんな展覧会なのかというと……

今回の展覧会はシリーズもので、「ポスターでみる映画史」というそれの第2回目になります。
1回目はですね、西部劇、ウエスタンを主題にしまして、今回がミュージカルということになります。

どちらの分野も、ある時代は「これこそが映画だ」という王道のジャンルだったと言えると思います。ポスターというのはお客様を映画館に引きつけるもので、その映画の良い特徴を出すべく、いろんな工夫がなされているわけです。今回のミュージカルは、サイレント映画がトーキーになるというのが1920年代から30年代ですが、その時期から70年代くらいまでのミュージカルの映画の流れ、変遷が見えるようにしたいと思い構成していきました。

そして、この展覧会には、日本を代表するイラストレーターの1人、和田誠さんが関わっています。

この企画の始まりはですね、2年前にさかのぼります。

実は前にフィルムセンターで行った展覧会で、「日本の映画ポスター芸術」というのがありまして、東京と京都の2会場でやったんですけど、京都では和田誠さんに来ていただいてトークショーをしていただいたんです。そのイベントが終わったあとにですね、和田さんが「実は映画のポスターを集めているんだよ」とおっしゃったんですね。それを聞いた私も京都の美術館の学芸員の方も驚きまして、「これはぜひ一度、いずれ、お借りして展示させていただけないかな」と思ったというのが始まりなんですね。

全部で54点のポスターが展示されているんですが、例えば、ジーン・ケリー主演、「巴里のアメリカ人」。

これは、「巴里のアメリカ人」というMGMミュージカルの傑作のひとつですけどね。

特にジーン・ケリーのラストに非常に長く続く魅惑的な踊りが、ラストシーンが有名です。アメリカを代表するポピュラー作曲家、クラシックでもあるんですが、ジョージ・ガーシュインの曲がずっと使われていると。この頃はカラーのミュージカルが増えてきましたので、「テクニカラー」とカラーに重きを置いているのが面白いと思います。

そして、ジーン・ケリーといえば……

「世界映画史的に見て、アメリカのミュージカル映画を1本挙げるとすれば」という時に出てくる作品の1つだと思いますが、『雨に唄えば』ですね。

特に、この日本版とアメリカ版を今回並べて展示するんですが、日本版がいかにアメリカのポスターをうまく活かして作ったのかというのがよく分かります。一番人々に訴えかける名シーンだということで、映画の雰囲気を一枚の絵で見せる、という感覚をよく出しているポスターの1枚だと思いますね。

『雨に唄えば』は、アメリカ版と日本版のポスターが並べて展示されます。
さらに……

『バンドワゴン』、これも傑作中の傑作ですけど、主演フレッド・アステア、当時、中年くらいになっているわけです。落ち目になった元スター、という設定になっていて、その彼がだんだんと再起していく、というような話になっているんですけど、公演を続けるごとにノってくるという高揚感が、1つの絵に集約されている感じがします。

歌って踊って恋をする。
映画史に残るミュージカル映画。

そのポスターに描かれているのは、「その作品と観客をつなぎたい」という想いです。

作られた映画が世の中に届くときには、ポスターであるとか宣伝であるとか、様々なものが作られますよね。それは、映画の観客と、その映画を作った人たちを結びつける媒体ですよね。
いかに、この映画が楽しいものであるかを伝えようとする技術の結晶がポスターにはあると思います。

これに刺激を受けていただいて、元の作品に触れたいと思うようになってもらえたらと思いますね。それぞれの作品の、笑えるところは笑えるし、キュンとくるところはキュンとくると思うんですよね。 そういう演出に込められた配慮を味わってほしいと思いますね。

恋も笑いも、出会いも別れも、ときめきも切なさも。
すべてが1枚のポスターに、つまっています。


「ポスターでみる映画史Part2 ミュージカル映画の世界」のHidden Story。
キュレーションマガジン「アンテナ」の記事からピックアップした話題を番組で改めて取材してお送りしました。

「ポスターでみる映画史Part2 ミュージカル映画の世界」は、京橋にある東京国立近代美術館 フィルムセンター、7階の展示室で2015年3月29日までの開催。月曜はお休みです。
そして、嬉しいことに、料金は、一般210円!
18歳未満の方、高校生以下は、無料です。
ポスターでみる映画史Part2 ミュージカル映画の世界