2014/12/5 義足のエンジニア遠藤謙さんの Hidden Story

今週は、世界から注目を集める義足のエンジニア、遠藤謙さんのHidden Story。

2012年。アメリカのMITマサチューセツ工科大学が出版する科学雑誌「テクノロジー・レビュー」が選んだ『世界を変えるイノベーター35人』。その中に、義足のエンジニア、遠藤謙さんの名前がありました。

現在は、ソニーコンピューターサイエンス研究所に所属する遠藤さん。
そもそも、義足についての研究を始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

僕、大学生から大学院生まで日本で研究をしていまして、対象はヒューマノイドロボットというロボットの研究だったんですね。

そこで、二足歩行を中心に研究をしていたんですけど、僕の友達が骨肉腫という病気になって「歩けるか、歩けないか」という現状に対して、日本の二足ロボット技術が彼に対して役に立っていないという現状を目の当たりにして、もうちょっと自分は「役立つ……少なくとも近未来で役に立つものが、何かないか」と考えた時に、義足というものに出会いました。

それが、MITのメディアラボのヒュー・ハーという先生がいまして。

遠藤謙さんは、MITに留学。
そこで、自身も義足を使うヒュー・ハー教授とともにロボット義足の開発に 取り組みました。

まず最初に人間の足って、すごく良く出来ているなって感じたんですね。
これを人工物で再現するのは、ものすごくチャレンジングだということが分かりました。
人間の足っていうのは「ものすごく軽く出来ていて、なおかつパワフル」ということなんですね。

人工物で作ると、「パワフルなものは出来るけれど、ものすごく重くなってしまう」「軽くすると力が足りない」というジレンマだったんですけど、それをどうバランス取るかが難しかったです。

足首の部分に モーターを組み込むことで地面を蹴るときにパワーをアシストすることができる。
遠藤謙さんは、それまではなかったこの仕組みの開発に取り組んだのです。

帰国後、遠藤さんは、ソニーコンピューターサイエンス研究所に所属。
さらなる研究を進めています。

ロボット義足に関しては、今でやってきたノウハウを活かして、MITでやってきたものよりも、もっと良いものが出来ると。

なおかつ、インドでも義足を作っているんですね。インドでは、もうちょっと安価なもので性能の良いものが求められているんですけども、コストであったりとか、エンジニアリングのスキルであるとかが、あまりない中で、どういうものを作れば良いか……

最後に競技用義足の話なんですけど、特に短距離種目だったり走り幅飛びに関しては、「競技用義足がものすごく大きなメリットになるんじゃないか」という議論が研究者の間であるんですね。

僕は「その人間がどこまで速くなるかな」「どこまで遠く飛べるかな」という事にすごく興味がありまして。「人間の性能をフルで発揮できる義足って何だろう?」「それに対する人間の動きって何だろう?」っていう事にすごく興味があって。

ロボット義足の分野では、義足の高さが低ければ低いほど、多くの人が使えます。
もっと高さが低く、もっと軽い義足が求められているのです。

モーターとかをいっぱい付けちゃうと、高さが高くなっちゃんですよ。

今、1つのプロトタイプが出来ていて、地面からの高さが20センチ弱、19.7センチくらいというプロトタイプを作っています。軽さは2キロないところですね。

「なるべくパワーを残しながら、軽くする」という、MITでやっていたのと同じ問題ですね。

色々あった方が患者さんも選べて楽しいと思うんですよね。
僕が作っているような義足が使いたい人もいれば、もっとパワフルで効率が良い方が良い場合はMITの方が良いだろうし。

一番問題なのは、選べるオプションが少ないんですよ。
服を着るみたいに、着飾るオプションがあると楽しくなるじゃないですか。

遠藤さんは、ロボット義足の研究の一方で、アスリートが使う競技用義足の開発を進めています。

ここには、ものすごい、知らないワクワクがあると感じたんですね。
これは1人では出来ないので、色々な人に声をかけて、興味を持ってくれる人がいたんですよね。

1人が、元ハードル選手の為末大という元陸上選手と、もう1人が RDS というカーボン成形というか工業デザインの会社があるんですが、そこのデザイナーの杉原行里という方がいるんですけど、この2人がタッグを組んでやってくれるというんで、ソニーコンピューターサイエンス研究所が技術的にバックアップをして、陸上チームを作るということで、社外で株式会社Xiborgを設立しました。

義足を使った走り方について為末大さんがアドバイス。
杉原行里さんが カーボンの技術を駆使。
パラリンピックを目指す陸上選手も参加して、より速く走ることが出来る競技用義足の開発が行なわれています。

見た目はどうなるか分からないんですけど「人間の筋肉の方が、最大限に活かされるような形状と、板バネが作れたらな」と思うんですよね。

僕らのプロジェクト名って「9.57」って裏では呼んでるんですけど、これは「ウサインボルトを上回るぞ」という気概なですよね。なので、9.58を上回る9.57をプロジェクト名にしています。

目指すのはウサインボルト超え。
技術によって、障害はもはや障害ではなくなり、逆に能力が最大限に拡張されるのです。

地球上で最も速く走ることができるのは義足の選手。そんな未来が すぐそこに来ています。


目標は、義足の選手が、ウサインボルトを超えるタイムを出すこと!
だからプロジェクトの名前は、9.58を超える9.57と呼んでいる。

2020年東京パラリンピックに向け、これは楽しみです!