2014/11/14 現代美術家、ヴィック・ムニーズさんの Hidden Story

今週は、ブラジル出身の現代美術家、ヴィック・ムニーズさんの Hidden Story。

ブラジル出身の現代美術家、ヴィック・ムニーズさん。
リオデジャネイロにある世界最大のゴミ処理場で集めたモノでアート作品を制作、そのゴミを回収する人々との交流を追ったドキュメンタリー映画『ヴィック・ムニーズごみアートの奇跡』は、アカデミー賞にノミネートされるなど、世界で話題となりました。

そんなヴィック・ムニーズさんが、その後参加したのが「Paper Cranes for Japan」。折り鶴にまつわるアート・プロジェクトです。

数年前、このプロジェクトは、ベソス・ファミリー・ファウンデーションによって始まりました。

東日本震災で大きな被害を受けた学校の復興をお手伝いしたい、ということで、世界中の子どもたちに鶴を折ってもらって、その折ってもらった鶴に対して寄付をする、ということにして集めたところ、200万羽以上の鶴が集まりました。

で、集まったのはいいんですが、その基金のほうでは、その鶴をどうやって活用すればいいか、アイディアがなかったんですね。

そこで私に連絡がきました。
「こういう鶴を折ってもらって寄附を集めたんだけど、この鶴をどうしたらいいだろう」
という相談でした。

そこで、その鶴を使ってアート作品を作り、それをポスターにしよう、ということになったんです。

世界から集まった「折り鶴」の数は、およそ200万羽。
ヴィック・ムニーズさんの元に、そのすべてが届けられました。

世界中から集められた折り鶴には、いろいろな応援のメッセージが書いてありました。それはとても美しいものでした。

その鶴を使って作品を作るわけですが、私が考えたのは、津波で大きな被害を受けた人たちに、前を向いてもらえるもの。

この折り鶴、という世界から集まったポジティヴなものから、そういう作品を作りたいと思いました。小さな折り鶴に込められた想いを集めて、大きなメッセージを表現したいと思ったのです。それで、大きな鶴を作りました。

ニューヨークのスタジオには、8万5,000羽の折り鶴が運び込まれました。
ヴィック・ムニーズさんは、地域の子どもたちとともに、小さな鶴を モザイクのように スタジオいっぱいに並べました。
大きさは、5メートル×10メートル。上から見ると、一羽の大きな鶴のように見える作品を作ったのです。

アメリカの全ての州、そして、世界の38カ国から集まった折り鶴に込められた想いはニューヨークから日本へ届きました。

先月24日、東京・八丁堀のギャラリーで、ヴィック・ムニーズさんの個展が始まりました。
タイトルは、「SMALL」。

非常に小さい物についての作品を作りたいとずっと思っていたんです。
「非常に小さい」というのは本当に微生物レベル、分子レベル、細胞レベルくらいの小さいものです。

だいぶ前から考えていまして、実は10年以上前、当時、カリフォルニアでロボットにまわつる研究をしていた技術者の方に相談して、トライしたんですが、上手くいきませんでした。

その後、5年ほど前、ボストンにいたとき、MITにマイクロスコープの部門があって、そこの協力を得ることができました。そして、ふたたびチャレンジを始めました。ソフトウェアの設計からスタートし、それを使って、3年かかって、やっと、いい画像を作り出す事ができたんです。

新作、「Sandcastles」は、その名の通り、小さな砂粒に 城を描いたもの。
それを撮影して大きくした画像が展示されています。

さらに、微生物が培養シャーレのなかで動く様子や人間の細胞などを撮影した「Colonies」というシリーズは、離れた位置から見ると、模様が描かれたタペストリーのように見えます。しかし、近づいてよく見ると、そこにあるのは小さな細胞です。こちらは、MITマサチューセツ工科大学のタオ教授の協力によって制作されました。そして、作品には、がん細胞の画像も使われています。

MITの中には、腫瘍を研究しているチームもあったので、そこを支援していきたいと
思ったというのも、この作品を手がけた理由の一つです。

そう語るヴィック・ムニーズさん。
収益の一部は、がんの研究活動に寄附されます。

「なぜ社会的なプロジェクトに関わっているんですか?
地球を救いたいと思っているからなんですか?」とよく聞かれるんですけど、そういうことではなくて、自分自身がそういう活動をすると気持ちが良い、というところからスタートしています。

私自身、本当に大事なことをやっているんだ、社会に関わっているんだ、という気持ちにもなれますし、そういう想いは、子供たちにも伝わっていくんじゃないかなと思っています。

常に、ヴィック・ムニーズさんの作品のバックボーンにあるのは、社会へのメッセージ。


ヴィック・ムニーズさんの「SMALL」というタイトルの展覧会。
八丁堀のギャラリー、「nichido contemporary art」で今月29日まで開催されています。
日曜月曜、そして祝日はお休み。
火曜から土曜、午前11時から午後7時までオープンしています。

ヴィック・ムニーズ 「SMALL」 | nichido contemporary art