2014/10 aeru の Hidden Story

今週は、0歳から6歳の子どもたちに日本の伝統の技によって作られた商品を届けるブランド「aeru」のHidden Story。


株式会社和える。
代表取締役の矢島里佳さんは1988年生まれ。
そもそも、彼女がこの会社を立ち上げるきっかけとなったのは、大学在学中、19歳の頃に書いた企画書でした。

日本全国の職人さんをまわりたいと思って20代から40代の若手の職人さんを取材したいという企画書を作ったんですね。で、それをいろんなまわりの大人の方に渡して、こういうことやりたいんですとお願いしてまわったところ、偶然ですね、旅行会社さんの会報誌で連載をさせていただけることになりまして、それを3年間続けたことがいちばんのきっかけですね。実際現場に行って、自分が取材したい職人さんにお話をうかがって、写真とって、記事書いて、ということをするなかで、伝統産業の魅力的な部分がたくさん見えてくるのと同時に、問題点も一緒に見えてきたんですね。

矢島さんは、旅行会社の会報誌の仕事を得て、全国各地の職人さんを たずねました。
そこで見えてきたのは……

やはり伝統産業ってずっと衰退しているって言われて何十年。
なんで衰退しているのかというところを取材していくとよく分かるのが、職人さんたちはみなさん、後継者がいないとか、商品が売れない、何を作っていいか分からない、
今の若い人は興味がないでしょ、とか、いろんな理由が出てくるんですね、
でも衰退しているさまざまな理由をうかがったときに、私はひとつの理由だなと
それは、「知らない」から全部始まっている。
人々が知らないから興味を持たないし、興味がないから欲しいと思わないし、だから私はきょう生まれた赤ちゃんや子どもたちに知ってもらうこと。そこから日本の伝統産業がもういちどキラキラ輝く産業になるんじゃないかなと考えて、この「aeru」のほんとに小さな小さなアイディアの種が生まれました。

大学3年生となった矢島里佳さんは、ビジネスコンテストに、事業プランをエントリー。
学生起業家選手権で、優勝しました。

私自身、ここで優勝したということは、今やりなさいと背中を押された気持ちになって。というのは、当時でもう職人さんの平均年齢が60歳だったんですね。そうするとですね、ひとりの職人さんを育てるのにだいたい10年かかると言われています。10年教え続けなきゃいけないとなると60歳で弟子をとって10年、70歳なんですね。伝統産業の技術を継承するのにぎりぎりの年齢になっているんだなと思って。私が社会人経験もないし会社経営も分からないから、社会に出て勉強してから5年後起業しようということにしていたら、その間にものすごい数の伝統産業が失われていたんじゃないかなと思いますし、わからない、でもやってみる、という一歩が大事だったなとすごく思いますね。

会社を設立したのが、2011年。
そして、1年後、2012年3月30日。いよいよ ブランドが立ち上がりました。
実際、どんな商品を扱われているのかというと……

最初は、徳島県から本藍染めの出産祝いセットという商品でして、オーガニックコットンを徳島の本藍染めで染めて、産着と靴下とフェイスタオルの3点セットを角をまるくけずった桐箱に入れて贈る、というセットをいちばん初めの商品として作りました。(音)これは、この商品の名前は、愛媛県からわき水ですいた和紙のボール、愛媛県の職人さん、女性の若手の30代の職人さんが手透きの和紙で作っているんですね、愛媛の観音水というほんとにきれいなわき水があって、その観音水の水を使ってひとつずつ職人さんが手すきで、ボールごとすいていくんですよ。なので、だいたい5回から8回前後、すいてはお日様にほして、というのを繰り返してようやくひとつのボールができる、という、これがびっくりするほど赤ちゃんに人気と言いますか、ちょっとお話ができる3歳くらいのお子さんだと「気持ちいい」って言うんですよね。

最初はオンラインショップでの販売からスタートでしたが、今年7月、目黒駅から徒歩3分の場所に念願の直営店をオープンしました。

ここはもちろん商品は販売しているんですけど、私たちのなかでは、モノを売る場所というよりは、物語をお伝えする場所という感覚でいまして、aeruのオリジナル商品がなぜ生まれたのか、赤ちゃん子供たちの成長、発達にどんなお手伝いができるのか、ということをひとつひとつ語らせていただいて、それをお客様が聞いて、共感していただいた結果としてモノが売れる、というのが私たちが目指すモノの贈り方なのかなと。

直接お客さんとコミュニケーションをとれる場所ができた「aeru」。
最後に、今後のヴィジョンを教えていただきました。

21世紀の私たちの新たなライフスタイルを生み出していくことが大切なのかな、それはモノを消費するという考え方ではなく、選び抜いたモノを自分のまわりに置いて、それが数が少なくてもひとつひとつに思い入れがあって、ひとつひとつを語ることができるような丁寧なものたちに囲まれることで、暮らしが丁寧な暮らしになっていく。それが結果、最終的に文化になったら嬉しいなと思って。だから今ならまだ、置いてきた日本の文化や習慣を引き上げる最後のチャンスだと思うんですね。ここからが伝統産業の力の見せ所なんじゃないかと思って、これからも頑張っていきたいと思います。

大量消費社会のなかで 置き忘れてきた「日本の伝統文化」と「今の感覚」を、「和える」こと。

矢島里佳さんは、古くて新しいモノづくりを通して、丁寧な暮らしを 提案し続けます。


ストーリーでご紹介したほかに、子どもが両手で持ちやすい形になっていて「こぼしにくいコップ」。そして、これからの季節は、「草木染めのブランケット」も人気だということです。

それぞれにストーリーの詰まった商品ですので、ぜひ、aeru のウェブサイト、さらに、目黒の直営店をたずねてみてください。

aeru