2013/12/27 バース・セラピスト、志村季世恵さんのHidden Story

今週は、バース・セラピスト、志村季世恵さんのHidden Story。

今年9月。一冊の文庫本が、書店に並びました。
タイトルは、「さよならの先」。
» さよならの先(Facebook)


その著者が、バース・セラピスト、志村季世恵さんです。
まずは、バース・セラピストとは、どんな仕事なのか?
志村さんに教えていただきました。

バースというのは、自分で作った造語なんですね。

私の場合は、末期のがんの方のケアが多かったので、喪失というのが強く感じられるんですよね。 でも、よくお付合いしてみると「終わりじゃないんだな」というのが分かってきて、何かね、みなさん生み出すんです、必ず最後の最後まで。 そうした素敵なことを見せてもらったときに、その生み出すことを私が認めた状態で活動した方がいいと思ったんですね。 それを忘れないためにも、バースというのを上につけて、バース・セラピストとつけました。

志村さんがこれまで行ってきたのは、お別れが近づいている方のケア。
そもそも、なぜその仕事を始められたのか。
きっかけをうかがいました。

死っていうのが自分の身近にあったんですね。 身内も早く亡くなったりとか。

で、高校生になって、放射線科でアルバイトをすることになって、放射線科って末期のがんの方が多いので、亡くなるわけなんですね。 それで、ある男性とおしゃべりすることがあって、その方、一回退院したんだけれど、再発してもう最後ってときに、「あのときおしゃべりした高校生の子と会いたい」って言ってくれて。

で、会いに行ったんです。
それで、私の話が面白かったって言ってくれて。

で、そのころから少しずつ出会いがあって……自分の夫と出会って、その人が薬剤師だったんですけど、開業して、漢方とか東洋医学の薬局にしたんですね。 そこで私が受け付けをするようになって、そしたら、私の話を聞きたいっていう人が増えてきていて。 で、いつの間にか、セラピストになっていったというのが本当の経緯なんです。


志村さんは、治らないかもしれない病気をかかえる方と話すなかで、こう思うようになりました。
「治っても、治らなくても、ずっとそばにいる。 だから一緒に乗り越えよう」

志村さんの著書「さよならの先」には、そんな想いを胸に出会った人々の物語が 記されています。

この本に出てくる人たちは、みなさん、「本に書いてね」って言ってくれた人たちです。
なんかね、気づいた事とか色々あるんですって。

で、今回、この中に出ていない人ですけど、つい2カ月くらい前に亡くなった方がいて、その人はね、同じように「本にいつか書いてね」って言ってくれたんですね。 「後悔と気付きがどっちもある」って言ってました。 もっと早くに解決することがたくさん出来たはずなんだけど、でも、そういう事がなかなか出来なくって、死ぬって分かってから、慌てて解決しようとしたりとか、またはこんなに人を愛してたんだけど、ちゃんと愛してるって言ってこなかったとか、いろんなことを発見するみたいで、そんなことが「元気なうちに分かったほうがいいよ」と、「おせっかいだけど、伝えたいんだ」という人が多いんですよね。

それを聞いて、「じゃ、書くね」って約束して、細々書いているんですけど。

志村さんは、最近、会話を続けてきた女性のことを話してくれました。

この前、看取った人っていうのは、お子さんが2人いたんだけれど、自分の子どもじゃなくて旦那さんの子どもだったんですよね。

なかなか折り合いがつかなくて、上手に愛せない。
お互いがしっくりいかなくて、同じ家に暮らしていても会話が出来なかったんですって。

だけど、カウンセリングやセラピーをする事によって、変わってくるんですよね。
セラピーっていうのは、気持ちいいような瞑想状態に入ってもらって、そんな気持ちよくなったいい状態の環境の中に、「誰を招きたいですか?」って聞くと、だいたい「苦手な人を招く」って言うんですよね。 トラブルがあった人を。

その彼女も、自分の子どもふたりを真っ先に招きたいって言うんですね。
涙をこぼして「私、こんな風に愛したかったのになんで遠ざけていたんだろう」って。

そこから、じゃあどうやって実際に移していこうかって話が始まるんですけど。
で、すごい事に苦手な人が入ってきて好きな人が入ってきて、やがては地球の人みんなとか言うんですよ。

人って「人の事を本当に愛する生き物なんだな」っていうのを、本人もびっくりして知るし、私もそれを見ていて知るんですよね。

志村さんが著書につけたタイトルは、「さよならの先」。

「最後の最後まで、人のことを思いやれる力があるんだな」という事を、私は教わっているんですよね。

「人は、ちゃんと最後まで、人のことを思えるんだな」っていう事を、私が知っている事が大事なんですよね。
そうすると、それは私が誰かに伝えればいいだけの事だから。

そうすると、もっと世の中って人を信じられるんじゃないかと思って。
私は余計なおせっかいおばさんだから、世の中がもっと良くなればイイなと思うんですよ。

人は助け合っていい生き物だって思っていて。
「助けて」と言ったりとか「お願いします」って言えないんですよね、子どものころから「迷惑をかけてはいけません」って教わっているんですよね。

でも、人ってね迷惑をかける生き物なんだなって思っていて、世の中ももうちょっと優しくなれて、人っていいなっていう風になってもらうのが私の願いなんです。 もう少し、人と人が関わるってことを大切に出来たらいいなと思ってるんですけど。

さよならのそばにあるのは、届けられなかった想い。
さよならの先にあるのは、星になってしまった人の願い。

バース・セラピスト、志村季世恵さんの言葉を最後にもう一度。

「人は助け合うことができる生き物だ。だから、
人と人が関わることを もう少し 大切にできる世の中になってほしい」。